ここ近年、紹介患者でくる患者は
医療人として口腔内を診ていて悲しくなる症例が多々ある。
今まで歯科治療に大枚を使い、その結果が有効でなく
すぐに問題が起ってしまったとき、口腔内の状態によっては
再度、大きな介入が必要になる場合が多い。
しかし、同じようなマテリアルで再補綴治療を計画すれば、
必然的に保険外診療になってしまう。
患者がよく口にする言葉
“またお金がかかるのか…”
病態のことより費用がどれくらいかかるか不安と不満が先行している。
“もういっぱいお金を使ってきたから
保険診療でなんとか治してください”
この言葉の裏には医療不信も含まれているだろう。
歯科以外に必要な医療費や老後の資金のことを考えると、
患者達の口にはしない悲痛な思いははかり知れない。
このようなことを考える中
今回提示する症例は、、、
2年くらい前に総額200万円近くかけて治療が終わったということ。
6ヶ月おきに主治医のところにメインテナンスで ずっと通っていたとのこと。
5日前に、ずっと以前から右下奥の歯が欠けていたが、
様子をみましょうといわれ続けた歯がさらに欠けて舌にあたり
痛いことを主訴に主治医にいったが、また様子を見ましょうと
いわれ、さらに翌日右下の差し歯がとれてしまい、ついに
転院を決意して、知人にここを紹介されたとのこと。
口腔内をみても一目分かるように左下のRPD以外は全て自費診療。
顎関節症も患っている。
出来る限り現状の補綴物は残せるようにアプローチを考えてみたが
それはかなり困難である。
“もう歯科治療にかける費用はないため、保険診療で”という言葉…。
、、、私ができるすべてを注いであげなければならない
そんな悲しい症例の一つである。