リキデンタルオフィス 医療関係者向けブログ

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私の日常臨床 Vol.72

2024-08-06 08:22:13 | Weblog

あまりにやることが多すぎてすっかり更新を忘れていた
今回は症例を提示しよう。

症例は初診時33歳男性
主訴は崩壊した左上7の痛みと、右下6の頻繁におこる腫脹と
左下の残根部をなんとかしてほしいということであった。

全体的にハイジーンの状態もよくなく、
他の部もカリエスが散見される口腔内である。
治療計画としては、まず基本治療を行い、ハイジーンの改善と維持を確認後
保存が厳しい左上7と左下6部に関しては埋伏智歯の移植、
右下6に関しては再植を行った。
また左下4のC4も抜歯後、このスペースは小矯正で対応した。
術前術後の口腔内とX線画像を提示する。

この症例の考察は、年齢的にインプラントによる治療は早いと考えた。
そして埋伏しているが智歯を活用した移植治療の方が、欠損補綴治療の
選択肢としては優先順位が高いと考える。
また、問診により分かる患者背景(子供さんがまだ小さいので、教育資金など)も考えると
なおさら費用をかけさす歯科治療を提案するべきでない。
この症例の場合は、保険治療で移植が行えるので、
患者の経済的負担はかなり抑えることができた。

当院の臨床実感では、ハイジーンのコントロールが上手くいけば
充分にこの症例は安定すると考える。(右下6は、数年は持たせたい)

欠損部にインプラントをすぐに考える治療計画は
賛成できない私である。。。


2024年7月14・15日 顎関節症勉強会

2024-07-16 07:27:13 | Weblog

先週末は顎関節症の勉強会が行われた。
顎関節症いわゆる顎機能障害に対して、覚えるべき基本的事柄
そして病態とそれに関連する人体の構造(筋・神経)、また
顎機能障害の診察と検査、その処置についての内容。
飯塚先生からスプリント療法について、きめ細やかな解説があった。

翌日は前日の内容を実習で行い、顎機能障害への対処について
筋触診、緊急処置法、スプリントの調整法を参加者皆で確認しあった。
かなり実践的な実習であったので、
明日の臨床に役立つことは間違いないであろう。


2024年7月9日 PGI名古屋Zoom月例会

2024-07-10 07:58:38 | Weblog

昨日は当会のzoom月例会
今月の担当は浦田先生 
テーマは「訪問歯科について」。私が彼に事前にテーマの指定を行っていた。

一般的に行われている訪問診療について、その現状背景と問題点、
彼の考える訪問歯科について、症例を交えながら提示していた。
また、摂食嚥下の話もあり、なかなか構成がよくまとまった内容であり
芯のある問題提起もよかった。

今回私が彼にテーマの指定を行っていたのは理由がある。
近年、訪問歯科の需要が高まる傾向にあるため
その関心度による講演や論文が多くなっていることは周知のことと思う。
それゆえ、我々は見直さなければならないことも多い。
そのため、彼の優れた訪問診療の概念は、参加者には
非常に参考になったと思う。
ただ、彼の内容、他者の講演や論文でも同様であるが、
私個人的に思う根底的な問題というものが触れられていないことがあり
彼にその提言を行ったところ、優秀な彼はその真意を容易に理解してくれた。
この内容は臨床での評価に時間はかかるものの、
彼なら実践してくれると思うので実践して頑張ってもらいたい。


2024年6月16日 CADCAM勉強会

2024-06-17 07:47:54 | Weblog

先週末は当会でのCADCAM勉強会
私の友人である兵庫の田中宏幸先生による
CADCAM全般と接着の話。
化学的な内容とアップデートされた内容がとても素晴らしく
彼の活き活きしながら楽しそうに話す姿も目に焼き付ける中
私自身も非常に勉強になった。

非常に臨床的な化学から検証した臨床例の数々
個人的には彼の話は、他ではまず聞けない
とても良い内容と思う。

ヒロくん本当にありがとう


2024年6月11日 PGI名古屋月例会

2024-06-12 09:28:15 | Weblog

昨日は当会のzoom月例会
今月の担当は飯塚先生
テーマは近年注目されている、原因がよく分からないとされているが
不定愁訴と咬合の関連性についての話と
外科的にしか改善ができないとされる開口障害についての内容。

彼が引用してきた論文とそれにそったいくつかの臨床例を
非常に分かり易くまとめた構成であった。
彼は確実に当会で着々と実力をつけている。
クローズな勉強会での提示であったが、
学会での講演に十分ふさわしい構成であり、なにより質が非常に高い。
昨日zoomに参加した方々は非常に参考になったと思う。


2024年6月9日 日本顎咬合学会学術大会

2024-06-10 07:45:46 | Weblog

先週末は学会参加のため東京へ
今回は普段お世話になっている石川忠先生や
上田秀郎先生、伊藤雄策先生の講演を拝聴できた。

今回、当院のDH高木が認定歯科衛生士講習の講師を務めていた。
200人近い聴講者がおられたためか、普段緊張しない高木がめずらしくテンぱった様子であった。
緊張の糸がほぐれきれていない中、的確な質問を受けて、質問と違う内容を答えていたため
思わず代弁で私が答えることになったが、
すべて高木に応対さすべきだったと私は反省する…
でもそれなりに立派に講演していたので、ほめてやりたい。
また、平生に非常にお世話になっている難波練久先生からも
高い評価をいただけたことも嬉しい。


幸運な日

2024-06-06 08:23:38 | Weblog


ここのところすっかり更新忘れていた。

さて 昨日は
とある事情で歯科界の重鎮のお一人である川村邦雄先生に会いに
滋賀県まで行ってきた。
川村邦雄先生といえば、川村泰雄先生・川村貞行先生の親戚筋であり
かの有名なDawsonやPankeyとも非常に深い親交があった方である。
今回の訪問は、以前から色々電話やメールで色々お話をきくことが
多かったが、正式に対面でご挨拶する目的であった。
非常に穏やかな先生で、貴重なお話や資料を拝見できただけでなく
まさかの貴重な資料をいただき、貴重な書籍もお貸しくださり
私にとっては幸運な時間を過ごすことができた。
ただ、川村貞行先生にもお会いしたかったが、ご高齢のため電話でしか
お話ができないのがとても残念である。

最近は、歯科界の重鎮である他の諸先生方とお話する機会が多く、
諸先輩方の深い思慮に触れることでとても刺激を頂いている。


2024年5月14日 月例会

2024-05-16 07:14:23 | Weblog

先だっての火曜日は当会のzoom月例会
今月は渡辺健人先生による症例検討。
日常臨床でよく遭遇しそうな、どうアプローチしたらよいか悩んでしまう
咬合の問題を抱えた症例である。
提示した症例は、見方と判断を間違えると
治療が迷走してしまうものであるため、よい事例を提示してくれたと思う。
色々な意見がでていたが、このことからも見方と判断が
いかにキーとなるかがポイントであることが分かる。
今回も内容の濃い勉強会であった。


手土産

2024-05-12 08:12:27 | Weblog

ここの所、診療以外のことで調べものや
やらないといけないことが多くあり、ブログ更新をすっかり忘れていた。

さて、先だって当会のメンバーである歯科医が
どうしても診てあげてほしいという患者さんを私の医院に連れてきた。
不定愁訴と現状の口腔内の問題を何年も抱え解決できないということであった。
診察の結果、それほど大きな問題ではないと私は判断して
現主治医(連れて来た歯科医)が今後の治療の手順と、処置を行い易いようにする環境までを
当院で即日に対応しておいた。
この症例の詳細は今度紹介するとして、この歯科医が私に「手土産です!」って
大きな箱を持ってきていた。「治療の時に役立ててもらえればうれしいです」といっていたが
彼と患者が帰ったあとに中身を見て、「ん?…」
クッションであったが、デザイン、クッションの大きさなどから用途を考えると
患者の口腔内で前医が行った治療の思考と同じくらい、
これが一体どう治療に役立つのか、どう考えても分からない、、
この先生が私に与えた、創意工夫せよという課題なのであろうか
未だに分からない。。。


2024年4月21日 PGI名古屋 春季例会

2024-04-22 08:02:12 | Weblog

先週末は当会の春季例会が行われた。
午前中は近藤陽介先生、木村慶宏先生、小野仁資先生、飯塚慎也先生の会員発表。
どの症例も非常に内容がしっかりしており、とても質と中身が濃く
そして何よりレベルの高い内容であった。

午後の基調講演は私の友人でもある東京の藤田大樹先生にご登壇いただき
演者の考える臨床治療におけるセブンメゾットについて解説をいただいた。
内容は結論からいうと、臨床医にとっては大いに参考になる話で
参加された先生にとっては実になることが多々あったと思う。

午前も午後もいつも以上の活発なディスカッションがあり
今回もとても充実じた例会であった。


私の日常臨床 Vol,71

2024-04-12 08:07:28 | Weblog

ここの所やたら忙しく、更新するのを忘れていた。
今回は症例を提示しよう。

症例は40代の女性。詰め物がとれたことと、かみ合わせの違和感が主訴。
所見は左下7のインレー脱離で、同歯は2次カリエスがみられた。問診により
4年ほど前にこの歯に修復処置を行ったが、しばらくして左側顎関節部に
捻髪音が起こるようになり、また前歯部も上下間にスペースができ、
麺類や薄いものを噛み切れなくなったとのこと。

診査・診察においては、咬合が安定していない感じが見受けられ、
開閉口運動も動作しずらい様相であった。
そこで当院が考える診断をもとに、
本症例ではスプリント療法は行う必要はないと判断し(矯正も必要ない)
修復物が脱離してしまう原因も含めた
当院で通法に行っている咬合調整手技を同日にすべきと判断して行った。
調整後、顎の運動は直後からスムーズになり、主訴の一つであった
咬合違和感もほぼほぼなくなったとのことであった。
この状態から経過観察を行い、症状の緩解と安定していることを確認後、
顎生理機能が安定する咬合を得るため、他の修復物の2次カリエスの処置を
行いながらの咬合治療により2つの主訴の改善も行った。
全ての内容が、保険診療処置で対応できた(対応するべき)事例である。
術前術後の写真を提示する

この様な事例、主訴のかみ合わせの違和感に関して治療をする場合
スプリント治療はまず時間の浪費に過ぎず、ましてや理想の咬合と称し
前歯部のスペースに対して矯正治療を考えるとするなら、その思考と診断に問題がある。
初診時の口腔内所見からブラキシズムやクレンチングが
誘発される状態の所見であることは容易に分かる。
これが理解できていると一番初めに行うことことが何であり、
それをどう行うかで症状は即時改善されることが多い。
審美的にいかにきれいに見せるか、といった2次的なことより
歯科医療の本質にこだわるこの様な処置は、精緻な洞察が要求される。


チェルシー販売終了 そして転売屋がこれにも…

2024-03-25 07:50:14 | Weblog

私の数少ない幼児期の思い出の一つに、母親がチェルシーをおやつとしてくれていた。
なぜこのような小さな出来事が、忘れることなく覚えていたのかわからないが、
たぶん切ない幼児期の思い出として残っているのだろう。
というのも当時、チェルシー1箱をくれたわけでなく、一日1粒がおやつで、
ガムならまだ間を持たせることができるが、飴なぶんレロレロなめていると
あっという間になくなってしまい、おやつを食べた気分になれなかった。
でもって、そのチェルシーは母親が好きな飴でもあり、母親はコーヒー味が
好きだったので、おすそ分けみたいにもらっていたおやつが1粒だけのコーヒー味は
幼い私にとっては、味も量も苦いものであったというセコい記憶である。

そんなほろ苦い思い出の明治製菓のチェルシーが2月末で製造終了、3月で販売終了という。
製造終了の告知があったのは以前から知っていたが、
忙しさのあまりまだ大丈夫とタカをくくっていた。
しかし、今月になってそろそろ記念に買っておこうと思ったら
どこいっても売り切れでない…
友人にきいてみたら、価格が高騰してるという話をきいた。
買い占められてネット上で、転売屋にとって価格が異常高騰していた。
1箱160円くらい、100円ショップでは100円で買える商品が
現在、1箱1900円~になっている。
タチが悪いとしかいいようがない。。
税務所もちゃんと確定申告している人達に、重箱の隅つつくようなことをするより
このような輩に重点をおけば、よっぽど税の徴収が多くなると思う。
ニュースでもとりあげられてたように、転売屋の収入は未申告で月数百万円単位であるらしい。

本当にこの手の転売屋、なんとか取り締まりできないものだろうか…
無理なら、転売屋が金儲けできなくなるように
我々皆が協力しあって非買運動をしなければ、このような輩を淘汰できないであろう。

ちなみにスタッフや数人の患者さんにまで探してみてと頼んでいたが
本当にどこの店でも入手できないみたいであった。
箱を私のコレクションにしたかったので、結局、ネットで2個3980円で購入してしまった。。。
転売屋からの非買運動をするべきといいながら、そこから買ってしまう私…
これだから転売屋がなくならないんだ、とブツブツひとり言をいっても虚しい 
というか、もう二度と転売屋から物を買わん、と心に誓う今日この頃


2024年3月12日 PGI名古屋月例会

2024-03-13 07:50:54 | Weblog

昨日は当会のzoom月例会。今月の担当は浦田先生
提示されたテーマは薬剤性歯肉増殖症。
高血圧症を患っている人の割合は、日本人だけでなく世界的にも非常に多く
その治療薬として降圧剤を服用されている人が多いことを挙げ、
その中でもカルシウム拮抗剤による歯肉の線維性腫脹による
歯周環境の悪化について、彼の私見と臨床への対処についての解説があった。

内容的には、よく調べられた内容で、自身の臨床にて
考察された処置と経過を提示されていたこともあり
参加者と活発な議論が行われた。

因みに薬剤性歯肉増殖症といえば、2017年に当院のDH高木が
日顎学会誌に論文を投稿している。
今回の浦田先生の内容は、DH高木の視点と考察点こそ違うが
彼の考えた視点も医科的面から考えると、
参考にするべき点は多くあり、よくできた報告であったと考える。


歯科評論3月号

2024-02-21 08:03:40 | Weblog

去年秋にヒョーロンパブリッシャーズに寄稿した論考が、
順番待ちでようやく今月20日に発刊された歯科評論3月号に掲載された。
(この号には私と懇意にある須崎明先生の論文も掲載されている)

スピーについて掘り下げた内容の論文は、おそらく国内ではなかったと考える。
それゆえスピーカーブについてのレビューを行った。

元々、古ドイツ語で書かれた原著は、国内で保有している人は私を含め数人しかおらず、ネットでもまず入手できない。
そして、この原著を1980年に英語で忠実にリプリントしたヒッチコックらの論文も、国内で入手することはできない。
この英語版のスピーの原著を、日本語に全文が翻訳されたものは、
とある歯科医師がされたものだけであり、これは歯科界に出ていない。
そして、この原著の内容は、我々の知るスピーカーブとは大きく違っていた。つまり、
学会等で講演者が、スピーについて引用するときに「G,Spee.1890」と記していることが散見されるが、
そもそもの我々の知るスピーの概念で、「G,Spee.1890」を引用しているため、これは大きな間違いである。
付け加えて、内容を知らないで引用していることが容易に分かる。
「引用」という言葉を使用する場合、その内容に目を通して理解してから使用するものである。

2年ほど前に私は、自分自身でもこのスピー英語訳論文の全文和訳と私見をまとめていた。その結果、
日本で最初にこの論文を翻訳されたある歯科医師の方と、須崎明先生から歯科界に提示すべき論考であると推され、
スピーの論文に対して私の考察も記述した論考が今回の掲載内容である。

よって参考までに、今後もスピーの原著に関して参考文献として引用している場合
「G,Spee.1890 や G,Spee(Hitchcock)1980」というような表記をしている者がいれば
原著や英訳文は手に入らないはずなので、内容を閲覧してないで引用していることになる。
つまりスピーに関する概念を参考文献として引用する場合、私のこの論考を引用することになる。

近年の私は、歯学史を見つめ直すことに多くの時間を費やし、多くの事柄において、自分の知識の整理を行っている。
それゆえ例えば今回のように、一般的に周知されていたスピー彎曲の概念を学生時代から素直に学んでいたが
G,Speeの本来述べたかった内容が我々の知るものとは違っていたことに気づかされた。
他の事柄でも同様のことが多い。

因みに私は学術の世界に煩悶としている事柄も多い。
公に提言することが好ましくないため、あえて多くは語らないでおくが…
ただ、今回の内容にからめて一つ例を挙げるのであれば
論文や講演において、引用する文献が何のための引用であるか、という本質を我々は考えなければならないであろう。
我説を補強するためだけの都合に合わせた引用でよいものか。
引用文献の本質とはどうあるべきか、私の見解はここでは述べないが、
今回掲載されたレビューを通して、皆も慎重に考えてもらいたい。

追伸:このブログを閲覧されてる方で、Speeの日本語訳全文を閲覧希望がある場合はメールください。
   匿名などでの連絡はご遠慮ください
(本来、全文は学術誌に載せるつもりだったが、紙幅の関係上できなかった)


2024年2月13日 PGI名古屋zoom月例会

2024-02-14 08:14:03 | Weblog

昨日の夜は当会の月例会
今月は鳥居先生からの症例検討会として、外科関連の症例が提示された。
前半は、インプラント外科での麻痺について症例が提示され
麻痺に関する知見と考察が提示された。
後半は、癌への放射線治療が及ぼす顎骨への影響について
症例を交えて、その考察が提示された。
前半も後半も注目すべきことは、彼の卓越した外科手技であるが
それにあわせて原因の考察のすばらしい着目点であろう。
インプラント治療ありきの治療計画に、警鐘を与えるよい症例提示であった。
内容が実際の臨床で遭遇したときに悩みそうなものであるため
ディスカッションも非常に盛りあがった。