リキデンタルオフィス 医療関係者向けブログ

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私の日常臨床 31

2017-11-22 08:30:52 | Weblog
久しぶりに臨床例を提示しよう。

私を知る歯科関係者は、私がインプラントを多くやっているイメージが強いと思う。
しかし、以前にもブログで記したように私はインプラントロジストでもなければ
インプラントをあまり積極的にやらない派である。
普段、欠損補綴にかかわる臨床では、インプラントを考える前に、再植、移植をまず優先的に考える。
移植する候補の歯がない場合、欠損部に対して義歯補綴かインプラント補綴を考える。
しかしこれは、歯の温存を考える歯科医師としての使命では、当たり前のことである。
けっして自慢することでもなければ、売り文句にすることでもない。

歯の移植に関しては、予後がどうこうなどいろいろ言われ、敬遠されることが多い治療だが、
果たして本当にそれを鵜呑みにしてよいものだろうか。
再植や移植は手間を考えると割にあわないというのが、敬遠される本当の理由だと思う。
確かに時間や手間からの報酬を考えると、この点は私も同調する。
しかし、この処置は臨床歯科医療の真髄の一つと考える。
歯根膜を介して食感を楽しむ喜びを、欠損を有してしまった患者に再び与えてあげることは
非常に価値あることと信じてやまない。

いつも言っていることだが、医療行為は自分たちの経済性(増収)を優先してはならない。
それゆえ、欠損をみればインプラント、欠損部を作ってインプラント という考え方は
支持できないし、私の身近にいる先生方にはこの考え方をもってほしくない。

提示する症例は、多数の残根放置による咀嚼障害が起こっている症例に対して、
智歯を移植することによって咀嚼機能回復を図った症例である。
患者の希望云々より、私が最初の治療計画の説明の時に、口腔内とレントゲンを見て
すぐに治療計画と治療ゴールが見えた事例である。
患者さんは、義歯かインプラントかの選択に覚悟と悩みをもっていたそうだが
移植の選択肢はまったくなかったらしく、この治療計画に即断されていた。

そしてこの症例、他の部位にもちょっとした手技を加えて治療している箇所がある。
それは何か写真をみて想像してもらいたい。

ちなみにこのちょっとした手技は、特に患者が気にしていることでも苦に思っている
ことでもなく、私が『こうした方がいいだろう』と思うことでやっていることなので
保険請求もなければ、自費診療でもない。私の考えることに患者がつきあってくれて
いることなので、報酬は請求することでもない。