リキデンタルオフィス 医療関係者向けブログ

オリジナルHP: http://rikidental.client.jp/

私の日常臨床 Vol,45

2020-10-07 07:51:27 | Weblog
症例は、整体師から紹介されたという名古屋市近郊から通院されていた66歳の女性。
右の顎が食事のときに痛くなり、口も大きくあけれないという主訴であった。
所見では最大開口量も33mmで開口時強い痛みがあるとのこと。
某総合病院口腔外科に顎関節治療で数か月前から通院中だが、
症状が一向に改善しないとのことであった。

初診時の診査において
レントゲン所見では、TMDのⅣ型の所見がみられるが
この原因は口腔内所見で考えると、Ⅳ型となった経緯の
ある問題の時間軸が読み取れる。
顎関節部の他の診査所見より、顎関節部の診断としてはTMDのⅠ,Ⅲ-b,Ⅳであった。

一般的な方法の治療で全く改善されなかった、ということであるが
初診時、私は当院で行っている通法(西川洋二流)で
まず機能障害が歯科で対応できるか鑑別診断を行い
対応できる事例と判断したので、はじめに運動痛障害を軽減さすことを
優先した処置を行い、初診時には半分以上取り除くことができた。
その後、基本治療と並行して、機能障害の治療を順次行った。
すべての内容は保険診療の範囲で行った。

治療後、食事は快適にできるようになって食事が楽しいとのことであったが
初期治療の後半に40mmはあった開口量が、結局治療中期以降は
機能運動時は疼痛は伴わないものの開口量が35~37mmという状態であったため、
私的には納得ができていない状態である。
しかし、この開口量が治療後も十分に改善されないことには、明確な理由があり
患者にも説明をしたが、患者は食事が快適になっただけで充分で
それ以上はあまり望んでいないため、結果コンプロマイズ的な治療であった。

さて、この明確な理由とは何か、
提示している初診時と治療終了時の写真で考えてみてください。
(この資料だけでも分かる先生にはわかります。)

この症例で私が述べたいことは、
理想的な治療を行うことにこだわることよりも、
治療を行う上での制約がある場合は、病態を十分に把握し
その状況を患者に理解してもらった上で、
その進行を抑止する的確な処置を行うことは、患者にとって有益なものである。