本日からこのブログのタイトルを「飛呂彦の"My Treasure Box" としました。復活してから今まで何となく自分の好きなものやことについて書いてきたのですが、それは自分が大切にしているもの、つまり宝物なのだろうということで。しばらくはそういう内容で続けてみようと思います。
さて、今日は少し長くなります。
○思い出のプログレ・アルバム2「危機/イエス」(原題 Close To The Edge)
私と「危機」(楽曲の方)との出会いは、当時よく聴いていたNHK-FM の番組でオン・エアーされた時である。一言で表現すると、「感動」。特に私は、パート3の「盛衰」の美しさにひどく感動したのだ。「危機」は40年経った今でもよく聴く曲の一つで、その感動は未だに消えない。
2ヶ月分の小遣いを合わせてようやくアルバムを購入。印象的な緑色のジャケットを目にしながら早速針を落とす。A面。森林の水のせせらぎから始まり、即興演奏のような導入部分、スティーブのギターによる印象的なフレーズを持つパート1、言葉数の多い歌詞がロックのリズムと旋律に流れ、続くパート2ではビルの独特のハイ・チューニングによるタイトなドラム音が続き、あたかもパート1の変奏曲のような曲調は不安を感じさせる。加えてクリスのベースがズーン・ビンビンと聞き手の心臓にも響く。続くパート3「盛衰」(これは名意訳だ!)での静かで美しいメロディとハーモニー。歌詞の内容ももの悲しげで、女性的なジョンの声がやさしく包む。そして荘厳なリックのチャーチ・オルガンからシンセのフレーズで最終章パート4へ。スリリングなオルガンソロからクライマックスの多重録音による大コーラスによる大団円、そして何もなかったかのような森林のせせらぎ……。まさに起承転結、輪廻の思想をも感じさせるプログレッシブ・ロックの一大交響詩であり、名曲だ。内ジャケットのロジャー・ディーンによるイラストがさらにこの曲に対する想像力を掻き立てる。これに、歌詞の内容がわかれば、さらに彼らの作りだした小宇宙の中に浸ることができるだろう。このアルバムはこの1曲だけでも充分存在意義がある。が、B面へ針を落とすとさらに彼らの別の小宇宙が持続する。
「同志」は出だしの12弦ギターと中間の交響曲のような展開がとても美しい曲だ。私の好きなメロトロンが活躍している。この曲もパートに分かれているが、最終章の「黙示」がどの部分をいうのか、未だ不明である。(もしかすると、スティール・ギターのフレーズが終わったその後の静寂部分を示すのか?)
B面2曲目の「シベリアン・カートゥル」はタイトルの意味がこれまた未だよく分からないが、変拍子の複雑でかっこいい曲。ギターのスティーブ・ハウはあまりコード弾きをしないように思われるが、この曲もフレーズのオン・パレード。リフを弾くリックのキーボードと音的にぶつかることがないので、よほど編曲に時間をかけたのではないか。中間で一瞬静かになる部分があるが、そこのメロトロンが宇宙空間を醸し出すようで心地よい。そして、最終部分のヴォーカルの繰り返しがフェードインする楽器と同化しクライマックスを迎える展開、最後の決めのフレーズなど、プログレ大好き少年を夢中にさせる仕掛け満載の名曲である。
この曲をいつか演奏してみたいと思ってはいたが、学生時代、実際に演奏(コピー)が可能だったのは「同志」で、それもリハーサルだけで終わってしまい完成しなかった。CROSSBEAT という雑誌(2011年6月号)のプログレ特集に掲載されていた、「海洋地形学の物語」リリース当時のインタビューでジョン・アンダーソンは、それまでで一番難しい曲は「同志」だったと言っている。テンポの変化が頻繁で、全員でアンサンブルを取るのが大変な曲、とのことであった。意外である。「危機」の方がもっと複雑に感じるのだが、本人達にしてみると実際には違ったらしい。
1973年、イエスは来日することとなった。アルバム「危機」は来日記念盤という形で日本でリリースされた。当時の宣伝コピーを今でも覚えている、「… イエスの音楽はメリハリの音楽である。…」メリハリという言葉をその時初めて知った。が、こうして改めて「危機」について感想を述べてみると、アルバムの中の楽曲は確かに「減り張り」の変化を楽しむことのできるものばかりと言えよう。
しかし、結局私にとってこのアルバムを言葉で語り尽くすことは難しい。今も「謎」の部分を抱えているのだから、自分でもいろいろな思いがあったと思う。単純に言うと、プログレッシブ・ロックと言われる音楽の素晴らしさを、思春期の自分に教えてくれた一枚の傑作であったということだ。
現在手元にはアナログ盤4種(日本初回リリース盤、イギリス・エンボス・ジャケット盤、アメリカ・ファーストプレス盤、同セカンドプレス盤。アメリカ盤の方がサウンドに迫力あり。)、CD盤5種(リリース年不明の通常日本盤、ボーナストラック入りRHINO03年盤、紙ジャケの01年盤・同RHINO06年盤・同11年国内SHM-CD盤)があり、ひとつのアルバムの所有枚数としてはいつの間にか最多となっていた。あと1枚、2012年現在、前作「こわれもの」のSACD盤サラウンドがリリースされているので、次はぜひとも「危機」をサラウンドで聴きたい。やはり私はこのアルバムが大好きなのである。
さて、今日は少し長くなります。
○思い出のプログレ・アルバム2「危機/イエス」(原題 Close To The Edge)
私と「危機」(楽曲の方)との出会いは、当時よく聴いていたNHK-FM の番組でオン・エアーされた時である。一言で表現すると、「感動」。特に私は、パート3の「盛衰」の美しさにひどく感動したのだ。「危機」は40年経った今でもよく聴く曲の一つで、その感動は未だに消えない。
2ヶ月分の小遣いを合わせてようやくアルバムを購入。印象的な緑色のジャケットを目にしながら早速針を落とす。A面。森林の水のせせらぎから始まり、即興演奏のような導入部分、スティーブのギターによる印象的なフレーズを持つパート1、言葉数の多い歌詞がロックのリズムと旋律に流れ、続くパート2ではビルの独特のハイ・チューニングによるタイトなドラム音が続き、あたかもパート1の変奏曲のような曲調は不安を感じさせる。加えてクリスのベースがズーン・ビンビンと聞き手の心臓にも響く。続くパート3「盛衰」(これは名意訳だ!)での静かで美しいメロディとハーモニー。歌詞の内容ももの悲しげで、女性的なジョンの声がやさしく包む。そして荘厳なリックのチャーチ・オルガンからシンセのフレーズで最終章パート4へ。スリリングなオルガンソロからクライマックスの多重録音による大コーラスによる大団円、そして何もなかったかのような森林のせせらぎ……。まさに起承転結、輪廻の思想をも感じさせるプログレッシブ・ロックの一大交響詩であり、名曲だ。内ジャケットのロジャー・ディーンによるイラストがさらにこの曲に対する想像力を掻き立てる。これに、歌詞の内容がわかれば、さらに彼らの作りだした小宇宙の中に浸ることができるだろう。このアルバムはこの1曲だけでも充分存在意義がある。が、B面へ針を落とすとさらに彼らの別の小宇宙が持続する。
「同志」は出だしの12弦ギターと中間の交響曲のような展開がとても美しい曲だ。私の好きなメロトロンが活躍している。この曲もパートに分かれているが、最終章の「黙示」がどの部分をいうのか、未だ不明である。(もしかすると、スティール・ギターのフレーズが終わったその後の静寂部分を示すのか?)
B面2曲目の「シベリアン・カートゥル」はタイトルの意味がこれまた未だよく分からないが、変拍子の複雑でかっこいい曲。ギターのスティーブ・ハウはあまりコード弾きをしないように思われるが、この曲もフレーズのオン・パレード。リフを弾くリックのキーボードと音的にぶつかることがないので、よほど編曲に時間をかけたのではないか。中間で一瞬静かになる部分があるが、そこのメロトロンが宇宙空間を醸し出すようで心地よい。そして、最終部分のヴォーカルの繰り返しがフェードインする楽器と同化しクライマックスを迎える展開、最後の決めのフレーズなど、プログレ大好き少年を夢中にさせる仕掛け満載の名曲である。
この曲をいつか演奏してみたいと思ってはいたが、学生時代、実際に演奏(コピー)が可能だったのは「同志」で、それもリハーサルだけで終わってしまい完成しなかった。CROSSBEAT という雑誌(2011年6月号)のプログレ特集に掲載されていた、「海洋地形学の物語」リリース当時のインタビューでジョン・アンダーソンは、それまでで一番難しい曲は「同志」だったと言っている。テンポの変化が頻繁で、全員でアンサンブルを取るのが大変な曲、とのことであった。意外である。「危機」の方がもっと複雑に感じるのだが、本人達にしてみると実際には違ったらしい。
1973年、イエスは来日することとなった。アルバム「危機」は来日記念盤という形で日本でリリースされた。当時の宣伝コピーを今でも覚えている、「… イエスの音楽はメリハリの音楽である。…」メリハリという言葉をその時初めて知った。が、こうして改めて「危機」について感想を述べてみると、アルバムの中の楽曲は確かに「減り張り」の変化を楽しむことのできるものばかりと言えよう。
しかし、結局私にとってこのアルバムを言葉で語り尽くすことは難しい。今も「謎」の部分を抱えているのだから、自分でもいろいろな思いがあったと思う。単純に言うと、プログレッシブ・ロックと言われる音楽の素晴らしさを、思春期の自分に教えてくれた一枚の傑作であったということだ。
現在手元にはアナログ盤4種(日本初回リリース盤、イギリス・エンボス・ジャケット盤、アメリカ・ファーストプレス盤、同セカンドプレス盤。アメリカ盤の方がサウンドに迫力あり。)、CD盤5種(リリース年不明の通常日本盤、ボーナストラック入りRHINO03年盤、紙ジャケの01年盤・同RHINO06年盤・同11年国内SHM-CD盤)があり、ひとつのアルバムの所有枚数としてはいつの間にか最多となっていた。あと1枚、2012年現在、前作「こわれもの」のSACD盤サラウンドがリリースされているので、次はぜひとも「危機」をサラウンドで聴きたい。やはり私はこのアルバムが大好きなのである。