ヒロヒコの "My Treasure Box"

宅録、DAW、ギター、プログレ、ビートルズ、映画音楽など趣味の四方山話

うれしい新刊!エラリー・クイーン「境界の扉〜日本カシドリの秘密」(越前敏弥・訳/角川文庫)

2024年06月21日 | ミステリー小説
 全く予想していなかったのだが、エラリー・クイーン国名シリーズの最終巻が刊行された。これは素直にうれしい。表紙カバーのイラストも従来の流れのまま。帯には「国名シリーズ<プラス>最終巻!!」と謳われている。
   
 だが、この作品は本来は国名シリーズではない。1958年に創元推理文庫から「ニッポン樫鳥の謎」として出されたが、原題は The Door Between 。登場人物が日本と関係しており、日本に関する記述があることから強引に国名シリーズに加えたと推測できる。ただ、年代的には「スペイン岬…」が1935年、スエーデン燐寸の秘密としても良かったと前書きに触れられていた「中途の家」が36年、そして37年がこの作品なので、実は国名シリーズの流れを汲んでいたと言えるのかもしれない。今回の角川文庫版も原題に加えて「日本カシドリの秘密」としているのはなかなかではないか!これで、創元版「ニッポン樫鳥の謎」の新訳と判断もできる。

 ともかく早速読みたくて地元の書店に向かった。だがどこにも置いていない。結局札幌駅前の紀伊國屋書店に行ってみた。だが、そこにもなかった。最終的に店員さんに聞いたら調べてくれて、入荷はしていますと持ってきてくれた。店頭に並べられていなかったようだが、購入後に見たら発行日は6月25日となっていた。1週間前に入手したのはフライングゲットだったのだろうか?

 今現在「サスペンス作家が殺人を邪魔するには」を読んでいる(これはこれで面白い)ので、お楽しみはあと数日後である。

これは面白かった!(その2):「サスペンス作家が人をうまく殺すには」エル・コシマノ(辻 早苗・訳/創元推理文庫)

2024年06月07日 | ミステリー小説
 ジェット・コースターのように次々と上下左右に飛ばされる小説である。次は一体どうなるのかとなかなかやめられない、「予想外の展開で一気読み必至!」と扉の紹介文にあるとおりの面白い作品であった。

 主人公フィンレイは売れないサスペンス作家なのだが勘違いされて高額な報酬の仕事を依頼される。それがある人物を殺すというとんでもない仕事なのだが、それをきっかけに様々なことに巻き込まれていく展開である。だが、主人公自らが自分で自分を巻き込んでいくところもあって、ユーモラスな要素もある。このキャラクターは魅力的である。そしてベビーシッターが協力者として登場するあたりから物語は俄然面白くなる。最後はどうなるのだろうとハラハラドキドキな気分に浸ることができる。未読の方々はぜひお読み頂きたいとお勧めする。
  

 この一冊があまりに面白かったので、続編の「サスペンス作家が殺人を邪魔するには」も買ってしまった。前作と同じ人物が多数登場するのでこれから読むのが楽しみである。

これは面白かった!:「最上階の殺人」アントニー・バークレイ(創元推理文庫)

2024年06月01日 | ミステリー小説
 ミステリー小説は相変わらず読んでいる。最近では海外物では「8つの完璧な殺人(ピーター・スワンソン)」「窓辺の愛書家(エリー・グリフィス)」。それぞれ意外な真犯人の設定と物語が映像的に次々と展開されている面白さがあった。だが、その手の小説を読んでいると古き良き時代の本格もの、即ち探偵がじっくり考えて真相を導き出すような作品が読みたくなってくる。そのような嗜好にピッタリだったのがアントニー・バークレイ作「最上階の殺人」(訳:藤村裕美 2024年2月刊)である。これは面白かった。

  

 とある殺人事件の真相を暴こうと独自に調べ始める探偵ロジャー・シェリンガムだが、容疑者達と会いながら推理していく。本作の場合、彼の思考が物語中で適宜語られる。当然状況や新事実によってその考えが変わっていく。真相にたどり着くまでに探偵がどのように考えていくのかを読者は同時進行で知る。これが誠に面白い。そして、最後には真実はコレだと見なしたことが実は…、となるのである。なぜかシェリンガムの協力者となった被害者の姪との迷?コンビぶりもユーモアがあり楽しませてもらった。

 もともとバークレイ作は「毒入りチョコレート事件」を以前読んでいたのだが、多重解決が語られる作品である。「第二の銃声」も写真の帯にあるように多重解決もの。バークレイはそうした展開が得意なようで今回の「最上階の〜」も同様の傾向があり、その意味でも楽しむことができた。お勧めである。

  

 なお、「レイトン・コートの謎」も昨年発刊されたシェリンガムもので、こちらはワトソン役の友人を従え密室的な殺人に挑むのだが、真犯人の意外性にすぐれた作品である。


今日の一枚:「 Once Is Not Enough(いくたびか美しく燃え)」〜ヘンリー・マンシーニ生誕100周年

2024年05月04日 | ミュージック
 今年はヘンリー・マンシーニ生誕100周年ということである。調べてみたら1924年4月16日生まれとのことで先月がちょうど100年目であった。そのため4月はマンシーニを特集するラジオ番組がNHK-FMだけで3本もあった(大友良英「ジャズ・トゥナイト」、挾間美帆「ジャズ・ヴォヤージュ」、片山杜秀「クラシックの迷宮」クラシックの迷宮だけ聞き逃し配信がなくて残念ながら聞き逃した!)。

 好きな映画音楽家として私にとっての三大巨匠は、フランシス・レイ、ミシェル・ルグラン、ジョン・バリーだが、実はここ数年圧倒的に聞いているのはヘンリー・マンシーニである。そして最近のお気に入りが映画「Once Is Not Enough(いくたびか美しく燃え)」のサントラ。LP盤は入手困難の状況だったが、何とかシングル盤を見つけゲットすることができた。

  
   
 このジャケット写真は刺激的だが、テーマ曲は秀悦である。まず、メロディーが美しい。ピアノとオーケストラによる流れるような旋律が心を打つ。さらに、マンシーニ曲の定番であるコーラスが聴かれる。『マンシーニはコーラスが良い』とジャズ・トゥナイトでも大友氏が言っていたが、同感である。そもそも子どもの頃聞いた映画「テン」の「Don't Call It Love〜愛と呼ばないで」が大好きでその曲は全編男声女声コーラス。「ティファニーで朝食を」「シャレード」「ダーリン・リリ」などコーラスの入る名曲は多い。まだまだ他にも未聴の名曲がたくさんあるのだろうな。今後の楽しみとしておこう。
 ちなみに、このシングル盤のB面「ペトロフカの少女」について、ジャケット裏の解説には一切触れられていないのだが、レーベルを読むとマンシーニ作曲のようである。どことなくシベリアを感じさせる哀しくも美しい旋律の曲である。

ヘンリー・マンシーニについては2013年2月にこのブログでも紹介しています。ここです。実は今回と同じようなことを書いてました。



世界の小澤OZAWAとYESSONGS

2024年02月12日 | プログレ

 令和6年最初のブログです。年が明けてほぼ1ヶ月半が過ぎてしまった。この間いろいろあったのも事実だが、書くペースも遅くなっていることを自省します。

 さて、先日小澤征爾氏が亡くなったそうだ。私がこの世界的に有名な指揮者の名前を知ったのは、1973年に発売されたYESの3枚組ライブアルバムYESSONGSのオープニングで聞かれるストラヴィンスキーの「火の鳥」によってである。小澤征爾・指揮、ボストン交響楽団*による「火の鳥」がここで使われていると知った。プログレ大好き高校生が聞いた初めてのYESのライブでは、クラシックの音楽が流れ、その終わり部分にリック・ウェイクマンの弾くメロトロンが重なり、間髪入れずに1曲目のシベリアン・カートゥルが始まる。何てカッコいいんだ!高校生の私はそう思ったに違いない。

    

   

 ロックを聴く前はクラシックや映画音楽、イージーリスニングを好んでいたが、YESSONGSをきっかけに改めてクラシック音楽にも興味を持つようになった。EL&Pが取り上げた「展覧会の絵」は知ってはいたが、ストラヴィンスキーは全く知らなかったし、その後ラヴェルやドビュッシーなども聞くようになっていった。こうして振り返ってみると、小澤氏の演奏が私の音楽嗜好を拡げてくれたきっかけになったのかもしれない。

    

 (小澤征爾指揮、パリ管弦楽団による「火の鳥」。)

 ちなみにアルバムYESSONGSについては12年前にこのブログで紹介しているので、もしよろしければご覧ください。

 *YESSONGS 日本盤ライナー、立川直樹氏の解説による。


中森明菜のLPを2枚買う

2023年12月30日 | ミュージック

 CRIMSON(クリムゾン)。中森明菜1986年リリース10枚目のアルバムで、私はこれが大好きなのである。特に1曲目のMIND GAME の曲調、アレンジに最初に聴いた時から惹き付けられた。カッコイイ。作曲者が小林明子というのも驚きだった。「恋におちて」のイメージが強かったから。2曲目は竹内まりあ作の「駅」。作者の夫君がこちらのヴァージョンを聞いて異議を唱えた?という話があるが、私はこの明菜の囁くように歌い上げる方が断然好みだ。その他、何回も聞いたアルバムなので全曲耳に馴染んでいる。

 前置きが長くなったが、今年このアルバムのアナログ盤が再発された。それも今回は45回転2枚組でのリリースだ。気がついた時には少しばかり時機を逸してしまったが、何とか手に入れることができた。そして、前回紹介した新しいレコードプレーヤーにて聴いている。A面からD面までの4サイドがあるわけだが、前述の2曲を聴くことのできるA面ばかりヘビーローテーションしている。ついでにいうと、この盤は1枚目が赤、2枚目が青のカラーディスクである。また、ジャケットがモノクロ(全然クリムゾン=深紅でない!)で味わい深く、このLPサイズは部屋に飾りたくなる。

   

 個人的には当時流行のシンセサイザーの音が多用されているのが懐かしい。そして、オリジナルでは最終曲「ミック・ジャガーに微笑みを」にラジカセにカセットを入れるなどの効果音が重なっているのだが、この度のヴァージョンでは効果音なしのテイクがボーナストラックとして収録されているのも話題になっている。

 さらに、今月「中森明菜ベストアルバム Best Ⅱ」が2CD+2LP+カセットテープから成るボックス形態で発売された。シングル盤がほとんど1位を取った時期の作品(DESIRE、TOTTOOなど)10曲が収録されているのだが、45回転2枚組のLPと今回はカセットまで付いている。価格も1万ちょっととのことで、思わず予約を入れていた。そちらも先日届いたばかりだ。ちなみに今回のLPも赤色とピンク色のカラーヴァージョンである。

   

 このように中森明菜については「中森明菜デビュー40周年記念ワーナーイヤーズ・全アルバム復刻シリーズ」として過去の作品が次々リイシューされているのだが、解説を読むと今回の音源は「ラッカーマスターサウンド」と呼ぶ手法で制作された。曰く、「アナログレコードの原盤であるラッカー盤にカッティングし、カートリッジ(レコード針)で再生した音を、デジタル化した音源。原音に限りなく近く、アナログレコードの持っているふくよかなサウンドを再現!」。ということはレコード音源をデジタル化してレコードにしたのを今聴いている?(これに関してはいつも疑問に思うのだが、アナログをデジタル化した音源はアナログ的な音色なのだろうか?)

 さて、中森明菜は林哲司氏トリビュート・アルバムのため「北ウイング」を再録音(これが大人の雰囲気でオリジナルとは全く別物だが素晴らしい!)するなど、徐々に活動再開に向けた動きが感じられる(という世論の読み)。長らく活動を休止していた状況から、ファンの皆さんは再登場を心待ちにしているのだろうが、音源的にはすでに再登場を果たしてくれた。私としてはこれらのレコードを聴くだけでひとまず満足だが、はたして年末の復活はあるのだろうか。

 そんなことも気にかけながら2023年が終わる。来年こそ世界に紛争のない良い年であることを願い、今年最後のブログとします。


ダイレクトドライブのレコードプレーヤ−

2023年12月23日 | 音響製品

 今まで手元にあったレコードプレーヤーは安価なベルトドライブ型である。レコードを聴くことが充分にできるのだが、若干ピッチが合わず不満もあった。昔のようにダイレクトドライブのレコードプレーヤーが欲しいなと思ってもいたが高価で手が出ない。ところが先日、アマゾンのブラックフライデーで目をつけていた製品が2割引になっていた(それでも自分にとっては高価ではあったけれど)ので思い切って購入してしまった。

   

 その製品はオーディオテクニカのAT-LP120XBTという機種である。見た目はとても重厚で、カートリッジを接続しスケールバランスを取るなど、昔所有していたプレーヤーと手順は同じ。レコードを乗せて回すとストロボ点滅により正確なピッチであることがわかる。これには思わず興奮してしまった。パソコンとのUSB接続でレコード音源をデジタル化できるなどの機能もあるがまずはレコード再生である。絶対にいい音で聴けるはず。

 こういう場合に最初に聴きたい盤は何だろうか、ということで以下はその時聴いたレコードを簡単に紹介する。ちなみにオーディオ・セットは、これも数ヶ月前に購入したパナソニックのCDプレーヤーSA-PMX90とその付属スピーカー。それまで使っていたONKYOのMD/CDプレーヤーのCD部分が壊れてしまい、修理に挑戦するも失敗したため購入した製品である。Hi-Rez対応でUSBメモリ等を接続することでFlacファイルなどが再生できることも大きな魅力なのだが、何と言ってもスピーカーの音質がもの凄く良い。特に低音の出が素晴らしくて、この品質の良さは驚きであった。

 さて、この時聴いたのは当然、自分の好きなアルバムということになる。順に上げてみる。

1 最初にターンテーブルに載せたのはYESのClose To The Edge「危機」アメリカ盤両面マトリックスAである。大迫力の重厚な音が鳴り、最初のこの一枚で大満足。

   

2 だが、それで終わるわけはない。続いては、KING CRMSON の LIZARD。初期のアルバムで一番好きな作品。こちらは中学生の時に買った国内盤ではなく数年前に購入したアメリカ盤。AT/GPありの両面マトAA。一応AAはファースト・プレスと思われるが充分迫力ある音と繊細な演奏に耳が離せなくなる。

   

3 3枚目は大好きなミシェル・ルグランSUMMER OF '42「おもいでの夏」サウンドトラック。一番好きな映画音楽。そして久しぶりに全面を視聴。実はサントラの音源ではないのと、アルバムとしては「ピカソ組曲」という別の作品が収録されている。

   

4 ここで邦楽の代表として松田聖子のTouch Me, Seiko。シングルのB面を集めたアルバムだが、名曲がたくさん収録されている。聖子ソングで私が一番に好きな「蒼いフォトグラフ」(テレビドラマ「青が散る」のテーマ曲として有名)、SWEET MEMORIES、隠れた名曲「制服」、そして松任谷由実作の「ボン・ボヤージュ」など好きな曲が多いアルバムだ。

   

5 次に目が行ったのは、アントニオ・カルロス・ジョビン。タイトルはJOMBIN。このアルバムで有名なのは「三月の水」で、ポルトガル語と英語の2ヴァージョンが収録されている。が、加えてクラウス・オガーマンのアレンジによる重厚な夢弦サウンドと共に美しい小品が並ぶ。

   

6 5のストリングス・サウンドに触発され聴きたくなったのは、パーシーフェイス楽団のBOUQUET「愛の花束」。特に1曲目のアルバム・タイトル曲は重厚なストリングス・サウンドでこのシステムでも充分美しく聴くことができた。

   

7 次に聴きたいのはジャズとなる。ビル・エヴァンスMOON BEAMS。ジャケットを飾るだけでも持っている価値のあるアルバムだと思うが、そのサウンドも美しい。ピアノの音がきれいに、心地よく鳴る。こちらの盤はかなり後の再プレス。

   

8 さて、ここまで来てTHE BEATLESのアルバムを聴いていないことに気がついた。次はビートルズだ、と思ったがどのアルバムにしよう?中々決められなかったが、結局LET IT BEにした。持っている3枚はすべて国内盤だが、70年6月にリリースされたボックスセット用のシングル・ジャケットをセレクト(AP-9009)。両面ともチリノイズが多く、何故か後のプレス版よりおとなしめの音がする。だが、音量を上げると迫力が出てとてもイイ感じに鳴る一枚だ。新しいプレーヤーでもチリチリ音は変わらず。

   

 

 このプレーヤーが到着したのは休日だったけれど、聴くのはこの辺が限界。だが、音を確かめたいアナログ盤は他にもまだある。徐々に乗せてみよう。

 そんな時に新たに購入したレコードが届いた。(次に続く)


NOW AND THEN / THE BEATLES 最後の新曲

2023年11月18日 | ザ・ビートルズ

 Tower Recordsに注文していたザ・ビートルズの最後の新曲 NOW AND THEN が届いた。  

   
 配信となった今月上旬から数週間遅れてのリリース。私が購入したのはシングル盤の透明ディスク・ヴァージョン。
 もともとデモ的な音源だったそうだが、結果としてかなり作り込まれた印象。解説を読んで知ったのが、ABBEY ROAD 収録のBECAUSE でのコーラスを流用していること。たしかにそんなコーラスワークが聞こえる。
 何度も聴くと、それなりに曲が馴染んできた。ビートルズの4人が関わった新曲?としての価値はあるかもしれない。
 ちなみに、裏面はLOVE ME DO。最初のシングルとラスト・シングルのコントラストを味わうということか。
 それにしても、これで三千円は高い気がする。ファンだから買ってしまうけれど、、、。
   
 

アルバム「狂気」と「太陽と戦慄」50周年

2023年11月08日 | プログレ

 50年前の1973年は高校に入学した年だった。その年、ピンク・フロイドの「狂気」とキング・クリムゾンの「太陽と戦慄」という2枚のアルバムが発売された(英国発売はどちらも3月)。プログレ大好き少年の私としては当然のことながら注目をしていた。だが、どちらのアルバムを購入するかということは大問題であった。高校生の小遣い程度では両方を手に入れることは難しいからである。

 結局私はクリムゾンの新作の方を買った。デビューアルバム「宮殿」に衝撃を受けロックに目覚め、「リザード」に夢中になった私にとってクリムゾンは変わらず神秘的で別格の存在だったのだ。そして、フロイドの「狂気」はNHK-FMの番組で全曲を放送しタイミング良くカセットテープに録音することができたという状況もあった。(当時はそのようなラジオ番組があった。イエスの「海洋地形学の物語」やEL&Pの「恐怖の頭脳改革」も全編オンエアされた記憶がある。)

 しかし、そのクリムゾンの新作を聴いた時、何か違うなという感覚を持ってしまった。1曲目の「太陽と戦慄パート1」の攻撃的な音は私が期待したサウンドではなかった。確かに「放浪者」のようにフリップのアコギが入り、フルートやピアノの音が重なる叙情的な曲もあったのだが全体的には激しいロック・サウンドという印象だった。結果としてお気に入りのアルバムとはならなかった。

 それに比べて、「狂気」の方は一部激しいサウンドや前衛的な部分もあるが、全体的には叙情性が豊かな印象だった。トータル・アルバムとしての存在感もあった。結局、「狂気」の方が好きになった。だが、カセットテープでいつでも手軽に聴ける「狂気」をレコードで入手することはなかった。レコード盤で購入したのは2011年のことである。

 思い起こせば、1972年のイエスの「危機」に始まり、私にとって73年はプログレッシブ・ロック全盛の時であった。ジェネシスのFoxtrot(72年リリース)を高1の時の同級生から借りて初めて聴いたのはこの年であった。また、イギリス以外のヨーロッパのバンドが盛り上がった年でもあった。72年に発表されたオランダのバンドFocusの「Ⅲ」が73年に日本でリリースされ、その後ライブアルバムを発売。その彼らの2作目Moving Wavesは素晴らしい出来だった。またイタリアのP.F.M.が「幻の映像」を秋に発売。このアルバムはプログレのほしいところを全て網羅した傑作だったと思う。とにかくこの年は夢中になるバンドがありすぎて、翌年には高校でプログレバンドを作るまでになってしまったのである。

 50年前、1973年はそんな思い出深い年であった。

   

   

  (左下は50周年記念盤CD "LIVE AT WEMBLEY 1974"。右下はDOLBY ATMOS MIXなどが収録されたブルーレイ盤)

 

(本ブログにて以前「狂気」について記したことがあります。→ 思い出のプログレアルバム#11「狂気」


森高千里 17インチ・シングル再発「ストレス c/w 渡良瀬橋」

2023年08月06日 | 森高千里

    

ちょっと前に来ました。元森高ファンクラブ会員(妻が)。

今も応援しています。

45回転シングルだから音が良い!


バート・バカラックの音楽

2023年05月07日 | ミュージック

 バート・バカラックがこの2月に亡くなった。94歳だったというから大往生と言って良かったのではと思う。が、大好きだったフランシス・レイ、ミシェル・ルグランら往年の映画音楽作曲家がここ数年で次々亡くなってしまったのはとても残念である。レイの時もルグランの時も特にこのブログでは取り上げなかったのだが、今回はバカラックにちなんだ思い出を記したい。

 私にとってバカラックは前述の二人の作曲家と違う存在だった。好きだったバカラック・ソングを当初は彼の作曲だとは知らずにいたからである。中学生の時にFM放送で聴いて録音していたあるお気に入りの曲が、その筋に詳しい友人が「恋よ、さよなら」というタイトルだと教えてくれた。作曲家のことは知らないまま愛聴した。ヒット・チャートにランクインした「雨に濡れても」はB. J. トーマスという人の曲だと思いながらレコードを買った。もう1曲、やはりヒット・チャートで聴いた「サン・ホセへの道」も大好きでこちらもレコードを購入。私にとってこれはボサ・リオというグループの曲だった。

 だが、それらは全てバート・バカラックの音楽である。ついでに言うと、映画音楽の好きな私は映画「幸せはパリで」のテーマ曲「エイプリル・フール」(パーシーフェイス楽団)を当時のラジオで知り、特にカトリーヌ・ドヌーヴのセリフの入るサントラ音源が大好きでエアチェックした音源を何度も聴いたものだ。バカラックの作曲ということは随分後で知った。「遙かなる影(Close To You)」もカーペンターズのオリジナルだと思っていた。そして徐々にバート・バカラックの存在を知り、その偉大さを知ったのである。

 バカラック・ソングはお洒落な曲調が多いと思う。April Fools、This Guy's In Love With You、Alfie(これはシンガーRumerが2010年にリリースしたヴァージョンが絶品!)など好きな曲はたくさんあるが、中でも一番のお気に入りは A House Is Not A Homeである。本当に良い曲だと思う。最近はTHE SONGS OF BACHARACH & COSTELLOのCD2枚組ヴァージョンと「カジノ・ロワイアル」サントラ完全版を購入。後者にはThe Look of Loveが含まれているが、これも名曲中の名曲である。

 では、追悼の意味も込めて久しぶりにシングル盤に針を落としてみよう。

   

    

 ↑ 両シングルジャケット解説には作曲者バカラックのことはあまり触れられていない。

   

  ↑ 札幌の映画専門店で見つけた「幸せはパリで」アナログ盤サントラ。

   

  ↑ 意外と手元のバカラックCDは少なかった。


「ヨルガオ殺人事件」/アンソニー・ホロヴィッツ

2023年04月30日 | ミステリー小説

「ヨルガオ殺人事件/アンソニー・ホロヴィッツ」(山田 蘭・訳)創元推理文庫

 21年9月に文庫版で出版された本作品をようやく読んだ。一粒で3度おいしい、探偵小説としては極上の作品であった。

    

 ホロヴィッツの「カササギ殺人事件」は出版と同時に購入し、すぐに読み始めたものだが本作品については遅れを取ってしまった。スーザン・ライランドが主役の本シリーズは本格推理小説として読み応えがあると思っているが、もう一つ創元社から出版されている元刑事ホーソーンとアンソニー・ホロヴィッツが登場するシリーズ(「メインテーマは殺人」など)の方は自分の感性に合わず好き嫌いがはっきりしてしまった。そんな経緯で「ヨルガオ〜」も手にするのが遅くなってしまったのだが、もっと早くに読むべきであった。それほど面白い作品だった。

 冒頭でも言ったように、ひとつの作品だが3回の謎解きが楽しめる。前作同様、本編(現実世界)のストーリーの中に名探偵アティカス・ピントが登場する作中劇が盛り込まれ、それは本編と大きく関連性がある。しかし、独立した作品として読むこともでき、私はその作中劇の意外な犯人には衝撃を覚えた。

 また、この作中劇には冒頭のアティカス・ピント登場のシーンにおいて、宝石盗難事件のエピソードが語られるのだが、ちゃんとした長編小説にしても良いほどの不可能犯罪とそのトリック解明であった。

 ということで、本編と合わせて3つの謎解きが用意されている(帯には「謎解きが2度も味わえる」とあるが)。それが「一粒で3度おいしい」の意味である。ただひとつ難点を上げるなら、2つの作品がミックスされているため登場人物が多すぎて名前を覚えられないことである。(ただ、この名前にもトリックが隠されているのだが、、、。)

 ところで、前作「カササギ殺人事件」は6話のドラマ形式で映像化された。脚本にはアンソニー・ホロヴィッツ自身が関わっているという。WOWOWで見ることができ、私も視聴した。原作では劇中作が独立して語られていたが、この映像作品では本編と劇中作が交互に、時にはオーバーラップして進行する。その意味では原作を知っていてもストーリーに引き込まれた。そして、イギリスの風景や登場人物達のイメージがより明確になり、大変見応えのある作品だった。

    


札幌雪まつり開催!そしてエラリイ・クイーンのシリーズ物と言えば、…さらに一冊

2023年02月04日 | ミステリー小説

 まずは今日から「さっぽろ雪まつり」が開催。会場を設けての実施は3年ぶりとのことで札幌市中央区の大通公園とすすきのの2カ所で始まった。写真は大通り会場昨日の準備の模様。札幌駅から大通公園まで歩いてみたが、とてもたくさんの人が。今年は賑わいを見せてくれるだろう。

   

 さて、本日のお題。エラリイ・クイーンのシリーズ物と言えば、「国名シリーズ」と「ドルリー・レーン4部作」となるだろう。だが、実際にはもう一つのシリーズ物が存在する。それは架空の町ライツヴィルを舞台とした「ライツヴィル4部作」である。

 クイーン・ミステリが大好きな私も、このことを認識したのは最近のことである。それはハヤカワ文庫から越前敏弥氏による新訳版の作品が次々と刊行されているおかげだ。2014年の暮れに「災厄の町」が出て本ブログでも触れた(ここ)。その後「九尾の猫」(2015年、この作品はライツヴィルとは関係なし)、「フォックス家の殺人」(2020年)、「十日間の不思議」(2021年)、そして昨年2022年「ダブル・ダブル」と新訳が刊行され「災厄」「フォックス家」「十日間」「ダブル」の4作がライツヴィル作品となる。

    

 殺人事件を論理的に解決する「国名シリーズ」のパズル性と違って、「災厄の町」は人間ドラマが重視され、より「文学」的要素が加味されたとエラリイ・クイーン研究家飯城勇三氏はその解説で述べている。私は現在「ダブル・ダブル」のみ未読なのだが、確かに3作とも密室、首なし殺人、アリバイ・トリックなど本格推理ものでは定番の「謎」は登場せず、人物達の動きや言葉、環境などの描写に重きがなされている。その中でもスリルやサスペンスはあるし、最後に大逆転的構成も整えられているから、パズル的要素も皆無ではない。だが、明らかに国名シリーズとは趣が違う。そして、「十日間」は、いわゆる「後期クイーン的問題」が話題となった作品である。この言葉は聞いたことがあったが、どのような意味なのかはこの本の解説を読んでわかった次第である。これを詳しく論ずるのはネタバレ的になるので控えておくが、このような視点が生じることも後期のクイーン作品が従来とは違うことの証なのであろう。

 ということで、4部作最後の「ダブル・ダブル」を読むのが楽しみだ。その中、昨年12月にさらにハヤカワ文庫から「靴に住む老婆」(新訳版)が刊行された。これは、あかね書房少年少女世界推理文学全集No.8「エジプト十字架の秘密」の中で「十四のピストルのなぞ」という題名で併載された作品だ。はっきり言って内容はすっかり忘れている。従ってこちらも早く読みたい。飯城氏によると、この作品は「災厄の町」に続いての発表だったが、「ファンが期待する内容」、つまりパズル的作品に戻っているとのこと。たしかマザーグースが引き合いに出されていたはず。

   

 ちなみに、「災厄の町」は「配達されない三通の手紙」として79年に野村芳太郎監督により、舞台を日本に置き換えた設定で映画化されている。(松竹映画)

 

<追記>

 「ダブル・ダブル」読了。飯城勇三氏による解説を読んで知ったのだが、架空の町「ライツヴィル」はこの後刊行された「帝王死す」「最後の女」そしていくつかの短編作品にも登場するそうだ。従って「ライツヴィル4部作」という表現は間違いなのかも。未読なので断定できないが、ネットでの検索ではこれら6作をライツヴィル作品とされている向きもある。自ら確かめるためにも今後の新訳刊行に期待したい。


この期に及んでSONY WalkmanのNW-A55HNを購入:その2〜使い勝手はどうか?

2023年01月26日 | 音響製品

 さて、A55の使い勝手はどうか。55HNはノイズキャンセル機能付きハイレゾ対応専用ヘッドホン(イヤホン)が付属するタイプである。

 まずは良い点。

・タッチパネル。私のWalkmanとしては初めてだが反応は良い。今までは「戻す(back)」ボタンを繰り返し押す必要があったがタッチ式は手順が効率的で便利だ。(ただし、A16のようなボタン式は暗闇の中でも操作しやすいというメリットはあった。)

・音質処理。A16同様ノイズ除去性能を高めたフルデジタルアンプS-Master HXを載せ、「mp3やCD音源もハイレゾ相当にアップスケールする」DSEE HX機能も搭載。これはA16にも全く同じ機能があったのだが、音の良さはここにあるとも言えるほど大変重宝した。この機種では新たにAI技術を搭載しているそうだ。曲のタイプをAIが自動で判別し高音域の補完性能を向上させているとのこと。そして低域をアナログアンプのような特性に近づけるというDCフェーズリニアライザー機能、アナログレコードによる豊かな再生音を再現するバイナルプロセッサーなどが加わったが、これらについては今後検証していきたいが、多機能を使うほどバッテリーの消耗も大きいのではと懸念もする。

・AIFFファイルの再生。A16では再生できなかったが可能になっている。これも大変便利。

・microSDカードの使用。これもA16と同じだが、本器は内蔵16GBなのでカードの増設は特にハイレゾ・ファイル再生には必須だろう。今回はトランセンド製の128Gを別途購入したが問題なく使用できている。

・ノイズキャンセル機能。進化しているらしい。専用イヤホン付きを購入したので、早速JR列車で試してみた。列車の音がほとんど意識されず音楽に集中して聞くことができたのには驚いた。以前のウォークマンではここまでではなかった気がする。(このことを息子に伝えたら、知るの遅いね、と言われてしまった。今はこの程度は当たり前?)

 ついでにイヤホンについて言うと、本体と同色のこの専用イヤホンは低音から高音までしっかりカバーしている優れものと感じた。A16には自分好みのいろいろなものを探して使用していたが、ノイキャンのことも考えるとこれで決まりかなと思う。また、最近はBluetoothのコードレスイヤホンを使用している人をよく見かけるが、ラジオを聞くためにはイヤホンのコードがアンテナになる。従って有線のイヤホンは必須。何より、耳元にバッテリーがあるのはちょっと怖い気がするので私はもっぱら有線イヤホンを使っている。

 次にマイナス面。

・筐体。NW-505はスティックタイプ、NW-A16は薄型軽量で持ち運び易かったが、本器はさすがに大きめで重さも99g。それでもスマホよりははるかに小さいので許容範囲か。

・起動時間。A16はiPodと違って長いのが欠点だったがこの機種も電源OFF状態から再生画面表示まで28秒かかった。あまり改善されていない。ついでに言うと、電源オンには電源ボタンを4秒、オフのためには2秒長押しする。これは極めて不便。新しい機種では改善されているのだろうか。

 以上、思いつくだけの観点だが圧倒的にメリットの方が多い。元々私はAppleのiPod Classicを長年愛用してきた。80GBの容量があったので車のロングドライブには重宝していた。だが、今はmicroSDのおかげで128GBを有し容量的には問題はないし、総じてWalkmanの方が断然音が良いと思う。ハイレゾのサウンドは細かいところまでよく聞こえて、「違いのわからない男」である私でも実感できている。

 ということで、Walkman NW-A55HNの使い勝手は良し!と結論。今後も3台のWalkmanを使い分けながら活用していこう。

    


この期に及んでSONY WalkmanのNW-A55HNを購入:その1〜今なぜ旧型を選んだか?

2023年01月25日 | 音響製品

 本日は全国的に10年に一度の大寒波の日となっているが私の地元(札幌市近郊)も風が強くかなり寒く感じる。列車運休や高速道路の閉鎖が生じているが、朝起きたら雪はそれほど積もっていなかった。だが、だんだんと吹雪模様になってきている。明日は朝一番に出勤予定だがどうなることか、、、

 さて。本日のお題。昨年の年明け第1回目の本ブログは、「この期に及んでM1 MacBook Airを購入」という記事だった。新型発売後に旧型を整備品で購入したのだが、その後の円安影響によるApple製品の値上げのことを考えると、あの時に買ったのは良いタイミングだったと思う。そして、2023年の年明けも「この期に及んでSONY WalkmanのNW-A55HNを購入」というタイトルである。この製品は2018年10月発売であり、その後新機種が出ているにもかかわらずあえてこれを購入した。今回はその理由を記しておこうと思う。

   

 学生の時に購入したカセットテープ式の初代ウオークマンと90年代のMDウオークマンは別にして、ファイル形式携帯音楽プレーヤーとしてのWalkmanは4台目である。本ブログでも最初のNW-E063はこちらに、次のNW-505はこちらに記載している。3台目のNW-A16が2015年の購入以来日常的に今も使っているがこれまでに紹介の機会を逸していた。ハイレゾ音源対応かつコンパクト・軽量で大変重宝している。だが、徐々にバッテリーの減り方が早くなってきており今後に対する不安が増大した。調べるとメーカーでは電池交換(修理)はすでに対象外。スマホ修理を扱う店で対応できる所はあるようだがあまり安心感は持てない。そこで新機種への買い換えが頭をよぎっていたのだが、今ひとつ決断に至らないでいた。

 実はNW-A16の特色としてFMラジオが受信できること、そして語学学習用に再生スピードをスローにできる機能がある。これらがなかなか捨てがたいのである。そして、2019年以降発売のWalkmanはAndroidが搭載されたせいなのか、そうした機能がなくなってしまった。今年になってさらに新機種Walkmanが発売されたから、今後NW-55を新品で購入することが難しくなるかもしれない!これが旧機種NW-55を買いたいと思った大きな理由である。かろうじて16GBヴァージョンが現行品として発売中なので不安に駆られて購入に至ってしまった。だが、1年前だったらもっと安く購入できたかもしれない。それが残念、、、(その2へつづく。次回は使い勝手について)