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A Momentary Lapse of Reason / Pink Floyd : ピンク・フロイド「鬱」リミックス&アップデート・ヴァージョン

2021年11月07日 | プログレ

 ピンク・フロイドが87年に発表したA Momentary Lapse of Reason(邦題「鬱」)のリミックス&アップデート・ヴァージョンが単体でリリースされた。19年に発売されたThe Later Years のボックスセットに含まれていた音源の単独発売である。

  

 このオリジナル版が発売された当時はまだレコードが主流で、私も輸入盤を購入していた。ロジャー・ウォーターズとの別離を経て残り3名がクレジットされた(厳密にはリック・ライトはゲスト参加)新生ピンク・フロイドのアルバムということで大変期待していたと思う。針を落として1曲目のSIGNS OF LIFEからフロイドらしいオープニングで、また全体的にギルモアの独特のギターサウンドが聴かれ充分に満足したことを覚えている。LEARNING TO FLYのような地味だと思われた曲も、後のライブ映像を見て改めて好きになったりしたものだ。

 今回のヴァージョンではニック・メイソンの新たなドラミングが加味され、またリック・ライトの使われていなかったキーボード・サウンドを復元したのが「アップデート・ヴァージョン」の意味らしい。実際どこがどのように変わったのか?これを判断するのはなかなか難しいと思ったのだが、試しにアルバム最終の曲で、私の大好きなSORROWを新旧で比較してみた。

 まず気がついたのはドラムのスネア音である。旧ヴァージョンでは深くリバーブがかけられており、これは80年代のロックサウンドでは必須な音処理であった。が、アップデート版ではそれが無くなり、生音のようなサウンドである。また、曲の終盤のキーボードが旧ヴァージョンではデジタルシンセがメインに聞こえるが、アップデートではオルガンがメインになっており、これは間違いなくリック・ライトの奏法である。ここだけで判断すると、80年代の打ち込み+デジタルサウンドが本来のバンドサウンドに変わった(戻った)処理をしていると思われる。実際、ニック・メイソンのインタビューを読むと、「リックの仕事の一部を改めて取り入れる機会を得たのも良かったね。(中略)バンド感を圧倒的なものにしてくれた気がする。このリミックスのメリットの1つがそうであるといいね!」と語っている。(SONY MUSIC https://www.pinkfloyd.jp/artist/PinkFloyd/info/532843

 アルバム・ジャケットの写真も変更されている。今ならこの砂浜に置かれている無数のベッドはCGだろうと思うかもしれないが、本物を使ったヒプノシスの作である。旧バージョンでは右奥に数匹の犬がいるが、新バージョンでは海水が流れ込んでいる別ショットが使われている。これもリアルな場面なのだそうだ。そして飛行機が大きく写し出されているのだが、旧作のジャケットをよく見ると奥の方に小さく飛んでいる。だが、今回使用されたのはそれではなく新たに撮影された機体とのことだ。オリジナルのアートワークを大胆に変えたことで、まさにアップデートの意味合いが深まっていると思う。

 なお、私が今回購入したのは輸入盤の1CDと2枚組のLPである。LPの方は180g重量盤でハーフスピード・カッティングの45回転仕様。当然のことながら音は抜群に良い。そして付属のブックレットも大きく見応えのあるものとなっている。



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