昼休み、目の前に座っている若君が面白いものを見せてくれた。
プランクトンである。
しかも海の深層部分に生息するやつ。
表層部分に生息するものより大きいらしい。
海洋学部を卒業した彼は意気揚々と、そんなことをレクチャーしながら見せてくれた。
海老っぽいやつ。青味がかかったやつ。
10種類ぐらい見せてくれた。
一つ一つ小瓶に入れられ、ホルマリン漬けにされているプランクトンたちは、どこか神秘的だった。
暑い社内に海の風が一筋、流れていくのを感じた。
私は尋ねた。
「〇〇さん(若君)はこの中でどれが一番好き?」
「みんな好きっスけど…う~ん、やっぱこれっスね。顔が可愛いんですよ。」
彼が選んだのは、Mr.HOSAKAというプランクトン。
この業界では新たなプランクトンを発見するともれなく命名権もゲットできるらしい。
Mr.HOSAKAという札を入れられた小瓶を覗く。
他のものとは比べ物にならないぐらい小さい。
体は透明。
二つの大きく黒い瞳だけが目立つ。
Mr.HOSAKAと目が合う。
はきゅ~ん!
かわいい。
「まあ、この子ったら可愛いでちゅね~。こっち見ているんでちゅか~。お~よちよち。私がママよ~。」
思わず狂った母性が開花してしまった。
もしくは、狂ったムツゴロウさん…?
Mr.HOSAKAは私を見つめる。
勿論、ホルマリンに浸っているので死んでいるのだが、やけにイキイキした瞳をしている。
私もMr.HOSAKAを見つめる。
この視線の絡み合いは、きっと奇跡だ。
私が毎日せわしなく生活している間も、
世界のどこかでは、こんな生き物が呼吸している。
改めて考えると、やはり世界は広い。
世界を狭めることは簡単。
自ずと小さくしている世界で、毎日セコセコ生きる自分が、プランクトンよりも小さく思えた。
会社帰りの一服中。
出されたアイスティー。
私は、海の底を静かに想った。
その底辺をストローでなぞる。
グラスを海に見立ててみる。
この辺ね。
この辺にMr.HOSAKAはいるのね。
ストローを回す度に、氷とグラスがカラカラと透明な音を奏でた。
私には、それがMr.HOSAKAの笑い声に聞こえた。
プランクトンである。
しかも海の深層部分に生息するやつ。
表層部分に生息するものより大きいらしい。
海洋学部を卒業した彼は意気揚々と、そんなことをレクチャーしながら見せてくれた。
海老っぽいやつ。青味がかかったやつ。
10種類ぐらい見せてくれた。
一つ一つ小瓶に入れられ、ホルマリン漬けにされているプランクトンたちは、どこか神秘的だった。
暑い社内に海の風が一筋、流れていくのを感じた。
私は尋ねた。
「〇〇さん(若君)はこの中でどれが一番好き?」
「みんな好きっスけど…う~ん、やっぱこれっスね。顔が可愛いんですよ。」
彼が選んだのは、Mr.HOSAKAというプランクトン。
この業界では新たなプランクトンを発見するともれなく命名権もゲットできるらしい。
Mr.HOSAKAという札を入れられた小瓶を覗く。
他のものとは比べ物にならないぐらい小さい。
体は透明。
二つの大きく黒い瞳だけが目立つ。
Mr.HOSAKAと目が合う。
はきゅ~ん!
かわいい。
「まあ、この子ったら可愛いでちゅね~。こっち見ているんでちゅか~。お~よちよち。私がママよ~。」
思わず狂った母性が開花してしまった。
もしくは、狂ったムツゴロウさん…?
Mr.HOSAKAは私を見つめる。
勿論、ホルマリンに浸っているので死んでいるのだが、やけにイキイキした瞳をしている。
私もMr.HOSAKAを見つめる。
この視線の絡み合いは、きっと奇跡だ。
私が毎日せわしなく生活している間も、
世界のどこかでは、こんな生き物が呼吸している。
改めて考えると、やはり世界は広い。
世界を狭めることは簡単。
自ずと小さくしている世界で、毎日セコセコ生きる自分が、プランクトンよりも小さく思えた。
会社帰りの一服中。
出されたアイスティー。
私は、海の底を静かに想った。
その底辺をストローでなぞる。
グラスを海に見立ててみる。
この辺ね。
この辺にMr.HOSAKAはいるのね。
ストローを回す度に、氷とグラスがカラカラと透明な音を奏でた。
私には、それがMr.HOSAKAの笑い声に聞こえた。