世界の中心で吉熊が叫ぶ

体長15センチの「吉熊くん」と同居する独身OLの日常生活

インソムニアの果てに

2006年06月27日 | Weblog
マイスリーが欠かせない。

眠れない。
暗闇の中。
時計の秒針音とともに大きくなる私の過去。

去年の夏。
私は上司に切れるという失態を犯した。
始末書こそ書かなかったが、サラリーマンとして許されない行為だ。
散々説教もいただいたし、ぐちゃぐちゃになった。

その後、彼への罪悪感やら己の中で沸き起こる葛藤やらで落ち込み、挙げ句、体のあちこちの歯車が微妙に狂いはじめた。
人生を総合的に回想して、一番辛かった時期だったと思う。

今、ようやく回復の兆しがあらわれているのに、どうしたことか、不眠症だけは一進一退を繰り返している。

夜、眠れないだけなら、別に構わない。
しかし、夕方にかけて朦朧としてくるのは勘弁だ。

もうすぐあの日が近付いてくる。

夏が始まりつつあるのに、私にはクローゼットに収納したままの服がある。
あの時着ていたお気に入りの水色のカットソーだ。
あの服を見ると、あの日の、そしてあの日以降の不安定な気持ちを思い出してしまう。
ドキドキして冷や汗が出る。
「どうしてあんなことをしてしまったんだろう」
その場で突っ伏して、動けなくなる。

あの服を着て出社した私を見た彼が再びあの日の出来事を走馬灯のように思い出してしまったら…。彼に限ってそんなことないだろう。しかし…。

いっそあのカットソーを捨ててしまおうか。

それはもったいない。お気に入りだし。

いや、そんなケチ臭い理由だけではない。
捨ててしまったら、あの出来事に私は負けてしまうと思う自分がいるからなんだ。きっと。

服を捨てても、してしまったことまでは消えない。
私の罪までゴミステーションは預かってくれないのだから。

未熟だった私を忘れないためにとっておこう。
いつかマイスリーの世話にならずに眠れるようになったとき。
そのときが、あの出来事に対しての勝ちなのだ。

インソムニアの果てに見る夢。
その中で、きっと私はあのカットソーを着て通勤しているのだろう。


あの出来事があったせいで、彼べったりの仕事スタンスから若干脱却もできた。
今考えれば、あの出来事は乳離れのきっかけだったのかもしれない。
悪いことばかりじゃない。
大丈夫、大丈夫。

会社帰りの喫茶店で夕暮れの空を見ながら、一人呟いた。

宇多田ヒカル 「ULTRA BLUE」

2006年06月27日 | Weblog
宇多田ヒカルって…すごいんだ…。
今更ながら、溜め息を吐いてしまう。

今日の帰り道。
街角で流れていた曲を聴いてそう思った。
最近CMでも流れていたから宇多田ヒカルの曲だとピンときた。
しかし、イントロからサビにかかるのをきちんと聴くと、その流れが綺麗で急に気に入ってしまった。
乗りやすいリズムと音程の相互作用もなんだか素敵。
帰ってから必死になって調べた。
新しいアルバム「ULTRA BLUE」の1曲目「This Is Love」だと判明した。
今まで彼女の曲に対してはあまり興味がなく、買ったのはファーストアルバムぐらいだ。それもここ3年ぐらい聴いていない。

宇多田ヒカルといったら、私にとっては歌よりも彼女が患った病気が印象的だ。

2002年ワールドカップ。
その少し前に彼女は「チョコレートのう腫」という病気にかかった。
子宮内膜症の一種で命に別状はなかったが、けっこう衝撃的だった。

その日は夜からワールドカップの試合が埼玉某所で行われる予定だった。
私の通う会社は、試合会場からわりと近いところに立地している。
「フーリガン、怖いですよね」そんなことを話ながら隣の部署の上司と話ながら最寄り駅まで歩いた。
あんまり親しくない彼とどうして帰路を共にしたのかは思い出せない。
話が途切れ途切れになる度にフーリガンへの恐怖が共通の話題としてあがった。

当時、私はひどい腰痛に悩まされていた。
今よりも高い9センチのピンヒールを履いていたからだ。
歩きながら腰を摩るのが癖になっていた。

「腰、痛いんですか」
彼は言った。

続けて
「宇多田ヒカルもあの病気になる前に腰が痛いって言ってたみたいですよ。気を付けてくださいね。」


あれから4年が経った。
彼とはあれ以来、帰り道を一緒に歩いていない。

ワールドカップ、宇多田ヒカル
…その二つは、あの夕日がかった商店街での会話を思い出させる。

なぜだろうか。

・彼が「宇多田ヒカル」という予期せぬ単語を発したこと。
・彼が宇多田ヒカルの病気を知っていた意外性。
・ワールドカップという祭りがすぐ近くで開催されることの高揚。
・殿方に、体調を気遣ってもらって、ただ単に嬉しかった。

以上のことが考察される。

4年後、32歳を迎えた私は28歳の私をどんなふうに回想するのだろうか。
「This Is Love」を着うたにダウンロードし、再生して吉熊に踊らせている私を…。


今週、ちゃんと乗り切ったら、このアルバム買おう♪
自分にご褒美♪
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