マイスリーが欠かせない。
眠れない。
暗闇の中。
時計の秒針音とともに大きくなる私の過去。
去年の夏。
私は上司に切れるという失態を犯した。
始末書こそ書かなかったが、サラリーマンとして許されない行為だ。
散々説教もいただいたし、ぐちゃぐちゃになった。
その後、彼への罪悪感やら己の中で沸き起こる葛藤やらで落ち込み、挙げ句、体のあちこちの歯車が微妙に狂いはじめた。
人生を総合的に回想して、一番辛かった時期だったと思う。
今、ようやく回復の兆しがあらわれているのに、どうしたことか、不眠症だけは一進一退を繰り返している。
夜、眠れないだけなら、別に構わない。
しかし、夕方にかけて朦朧としてくるのは勘弁だ。
もうすぐあの日が近付いてくる。
夏が始まりつつあるのに、私にはクローゼットに収納したままの服がある。
あの時着ていたお気に入りの水色のカットソーだ。
あの服を見ると、あの日の、そしてあの日以降の不安定な気持ちを思い出してしまう。
ドキドキして冷や汗が出る。
「どうしてあんなことをしてしまったんだろう」
その場で突っ伏して、動けなくなる。
あの服を着て出社した私を見た彼が再びあの日の出来事を走馬灯のように思い出してしまったら…。彼に限ってそんなことないだろう。しかし…。
いっそあのカットソーを捨ててしまおうか。
それはもったいない。お気に入りだし。
いや、そんなケチ臭い理由だけではない。
捨ててしまったら、あの出来事に私は負けてしまうと思う自分がいるからなんだ。きっと。
服を捨てても、してしまったことまでは消えない。
私の罪までゴミステーションは預かってくれないのだから。
未熟だった私を忘れないためにとっておこう。
いつかマイスリーの世話にならずに眠れるようになったとき。
そのときが、あの出来事に対しての勝ちなのだ。
インソムニアの果てに見る夢。
その中で、きっと私はあのカットソーを着て通勤しているのだろう。
あの出来事があったせいで、彼べったりの仕事スタンスから若干脱却もできた。
今考えれば、あの出来事は乳離れのきっかけだったのかもしれない。
悪いことばかりじゃない。
大丈夫、大丈夫。
会社帰りの喫茶店で夕暮れの空を見ながら、一人呟いた。
眠れない。
暗闇の中。
時計の秒針音とともに大きくなる私の過去。
去年の夏。
私は上司に切れるという失態を犯した。
始末書こそ書かなかったが、サラリーマンとして許されない行為だ。
散々説教もいただいたし、ぐちゃぐちゃになった。
その後、彼への罪悪感やら己の中で沸き起こる葛藤やらで落ち込み、挙げ句、体のあちこちの歯車が微妙に狂いはじめた。
人生を総合的に回想して、一番辛かった時期だったと思う。
今、ようやく回復の兆しがあらわれているのに、どうしたことか、不眠症だけは一進一退を繰り返している。
夜、眠れないだけなら、別に構わない。
しかし、夕方にかけて朦朧としてくるのは勘弁だ。
もうすぐあの日が近付いてくる。
夏が始まりつつあるのに、私にはクローゼットに収納したままの服がある。
あの時着ていたお気に入りの水色のカットソーだ。
あの服を見ると、あの日の、そしてあの日以降の不安定な気持ちを思い出してしまう。
ドキドキして冷や汗が出る。
「どうしてあんなことをしてしまったんだろう」
その場で突っ伏して、動けなくなる。
あの服を着て出社した私を見た彼が再びあの日の出来事を走馬灯のように思い出してしまったら…。彼に限ってそんなことないだろう。しかし…。
いっそあのカットソーを捨ててしまおうか。
それはもったいない。お気に入りだし。
いや、そんなケチ臭い理由だけではない。
捨ててしまったら、あの出来事に私は負けてしまうと思う自分がいるからなんだ。きっと。
服を捨てても、してしまったことまでは消えない。
私の罪までゴミステーションは預かってくれないのだから。
未熟だった私を忘れないためにとっておこう。
いつかマイスリーの世話にならずに眠れるようになったとき。
そのときが、あの出来事に対しての勝ちなのだ。
インソムニアの果てに見る夢。
その中で、きっと私はあのカットソーを着て通勤しているのだろう。
あの出来事があったせいで、彼べったりの仕事スタンスから若干脱却もできた。
今考えれば、あの出来事は乳離れのきっかけだったのかもしれない。
悪いことばかりじゃない。
大丈夫、大丈夫。
会社帰りの喫茶店で夕暮れの空を見ながら、一人呟いた。