大林宣彦監督の映画「ふたり」
今日はその主人公・北尾実加(石田ひかり)の姉・北尾千津子(中嶋朋子)の命日だ。
「10月27日 姉は死にました」
という実加の言葉で繰り広げられる千津子の事故シーン。
あの事故現場のロケ地・・・尾道の吉田邸には今でも本作品ファンが千津子の死を悼み、花を供えにやってくるらしい。
フィクションであるのに、現実の延長線上にあると思わせるのは、きっと大林監督の深い世界観と尾道という土地が持つノスタルジーがなせる業だと思う。
あの映画は、先に縮小版に編集してNHKのドラマで放送された。私が中学1年生のときだ。作中に出てくる入り組んだ坂道、千津子の美しさ、大きなリボンの制服、雑然とした実加の部屋、シューマンの「ノヴェレッテ」は思春期の私の心を鷲掴みした。
その後、2年生の5月に映画になったそれを妹と観た。ドラマ編では見られなかったシーンもあり、骨太になったという印章を受けた。
その後もその世界観を忘れられなかったというか引きずっていた私は、2002年の夏、出張のついでに尾道まで出向いた。
尾道に到着したのは深夜。暗闇の中で漂う潮の匂いが鼻腔に響いた。山側の出口に出てしまった私は駅前にタクシーがなくて呆然と立ち尽くしていた。ホテルまで行けないじゃん!と。偶然、軽自動車で通りがかったオバチャンとその息子が声を掛けてくれ、ホテルまで送って行ってくれた。
翌朝、カーテンを開くと尾道水道がキラキラと光っていてまるで私を歓迎してくれているかのようだった。
ホテルの朝食(網の上で干物を焼く)を食べ、尾道を徘徊。
大林監督作品のロケ地マップを頼りにうろうろと歩き回った。冒頭の事故現場は詳細が記載されておらず、勘に頼っての到着。持ってきた花を手向け、念願だった千津子への祈りをしたのだった。
以後、2009年まで、ほぼ毎年夏休みは尾道に行っていた。
「ふたり」のDVDは大好きな作品なので持っている。もう何度見たか分からない。忙しくてそう何度も見返すことはできなくなったが、毎年この日「10月27日」前後だけは、作品を分けてでも見るようにしている。
尾道を思うとき、必然的に北尾千津子が思い浮かぶ。
そして彼女が今でも尾道で妹・実加を見守っている、そんな情景が目に浮かぶ。
大林宣彦と久石譲が歌うエンディングの「
草の想い」も作品にマッチしていて良い。
この歌を口ずさみながら、またいつか尾道を徘徊したい。
映画「ふたり」特報・劇場予告予告
聖地巡礼
・電信柱
・和製ガウディハウス
・事故現場
・こもんのワッフル
おまけ
・ホテルの朝食
・尾道の猫にゃん
・名香「尾道のにおい 海」
・在りし日のガイド犬ドビンさん
・古い自動販売機(今もあるのかは謎)
・渡船で向島まで
・ひばり毛糸店
・千光寺からの眺め
やばい。尾道中毒が発症してしまった・・・!!