中国迷爺爺の日記

中国好き独居老人の折々の思い

はんなり

2009-07-18 08:28:51 | 身辺雑記
 近くの私鉄のターミナルにあるデパートの食品売り場で、茄子の佃煮を売っていた。売り子の女性に勧められてつまんでみるとなかなか旨い。加茂茄子という京都特産の茄子で、これをいったん塩漬にしてから炊き上げたものだ。それでその女性と商品について少しことばを交わした。その30代と思われる愛嬌の良い女性のことば遣いを聞くと、関西風のアクセントなのだが、このあたりのなまりと違って柔らかくて心地よかったので「あなたは京都の方ですか」と尋ねてみた。当てずっぽうではなく、この店が京都にあるからでもあった。大学を出て10年以上ずっと京都にいますと女性は答えたが、ことばの端々の京都風のアクセントは柔らかく、とても良い感じだった。

 こういう感じを京ことばで「はんなり」と言うのかと思う。「はんなり」は、あるブログに「京都らしさを表すのに、これほどピッタリの言葉はないと、誰しも思うだろう。京都弁の中でも、そこはかとない美しさやたおやかさを感じられる独特の意味を持つ単語だからだ」とあったが、その通りではないか。このことばは華やかで明るい様を表すが、「花なり(花のよう)」に由来すると言う。何よりもその語感が佳い。

 京都を舞台にしたテレビのドラマやCMに出て来る京都弁は、俳優達が京都人ばかりではないからだろうが、京都人ではない私が聴いても、何か違和感を覚えることがある。典型的な京ことばの「・・・どす」、「・・・どすなあ」、「おへん」でも、もう少し柔らかく言ったほうがいいのではないかと思うことがよくある。この女性のことば遣いは、聞いているとこちらまでゆったりと落ち着いたような気分になったので、こういう感じは、これも京ことばだが、「ほっこり」と言うのかなと思った。「ほっこり」は元来「(心地よい)疲れ」の意味だが、「ほっとする、暖かい」の意味でも使われるようだ。

 この女性の物言いはとても柔らかくて愛嬌があり、何か人柄を映しているようにさえ思われてほのぼのとした気持ちになり、「ああ、いい人だなあ」(ほんにええおなごはんやなあ)と思ったことだった。それで、加茂茄子の佃煮を買ったことは言うまでもない。