中国迷爺爺の日記

中国好き独居老人の折々の思い

バカ

2009-07-24 09:17:00 | 中国のこと
 アホもバカも、相手をからかったり、貶めたり罵ったりする言葉だが、アホは主に関西圏で、バカは関東圏で使われている。関西人はバカと言われると非常に強く、それこそ馬鹿にされたように感じるし、関東人はアホと言われると、その語感の軽さで不愉快になると言われている。

 中国語でバカは、混蛋(フンタン)とか王八蛋(ワンパアタン)、糊涂(フトゥ)などと言う。それぞれニュアンスは違うようだが、中国の友人は使わないほうがいいよと言うが、もちろんそのような言葉が使えるほど中国語は話せない。西安の李真は学生時代に、日本人の日本語教師が授業中の何かのときに「ワンパタン」と言ったので、なぜそんな言葉を知っているのだろうと学生たちは顔を見合わせたと言っていた。実は教師はone paternと言ったのだと後で分かったらしい。

 もうひとつ儍瓜(シャアグア)と言う言葉があるのを、一海知義・筧久美子・筧文生共著『漢語いろいろ』(岩波書店)で知った。筆者の一人は上海在住時代に書店を歩き回って書物を買い漁ったので「書呆子(シュウダイズ)」と呼ばれたらしいが、呆子は間抜け、のろま、アホウの意味だ。その筆者の家にいた上海娘が口癖のように儍瓜と言っていたので、その後に家にいた天津娘との会話で使ったら、いやな顔をされたようだ。それで「アホ・バカに地域差があるように、中国にもそれがあるらしく、使い方がむつかしいのだ」と書いている。

 それで東京にいる上海人の施路敏(敏敏)にチャットで聞いてみたら「馬鹿という意味です。よくない言葉でしょう。あまり使わないほうがいいです」と言った。次に西安の謝俊麗に尋ねたら、やはり「馬鹿って言う意味だよ」と言った。さらに、混蛋や王八蛋などより強い意味かと尋ねたら、混蛋や王八蛋は人を叱る(罵る?)意味、軽蔑の意味で、儍瓜は「例えば恋人同士では使うし、親子でも使う」と言った。どうやら「バカだなあ」「オバカさん」という軽いニュアンスもあるのだろうと思った。

 そこでさらに、地域によって違った意味にとられるのかと尋ねたら、地域と言うより使う人の気持ちやその時の雰囲気とかで違うと思うと言った。愛情がある場合にも使うようだ。劉君(夫)や麦豆(息子)にも使うかと聞いたら、「大笑い」の絵文字が返ってきて、麦豆には使ったことがないと言った。と言うことは夫には使うのだろう。俊麗とは時どきチャットで罵り合いをするが、私が「壊老婆 フアイラオポ(悪妻)」と言うと「偏心爺爺 ピエンシンイエイエ(えこひいき爺さん)」と返してくる。これからはそう言われたら「儍瓜」と言えばいいのだなと言ったら、また「大笑い」の絵文字が来た。ちなみに麦豆には「小壊蛋 シャオファイタン」と言うそうだ。壊蛋は悪者、ろくでなしという意味だが、「小」は「ちゃん」という愛称のようなものだから、「いたずら坊や」「腕白ちゃん」くらいの意味だろう。

 中国語には相手を罵る語彙が豊富だと言うが、バカ一つとってもいろいろある。微妙なニュアンスなどは到底分からないから、やはり中途半端には使わないほうが無難だろう。それにしても「馬鹿の一つ覚え」のようだが、ほんのちょっぴり物知りになったような気もした。