最高裁判所裁判官の暴走を許さない

最高裁判所裁判官の国民審査は、衆議院選挙の時の「ついでに」ならないようにしましょう。辞めさせるのは国民の権利です。

税務署にタックスヘイブン利用だと吹っ掛けらた。逆転判決

2018-01-11 07:49:53 | 日記
平成28(行ヒ)224  法人税更正処分取消等請求事件
平成29年10月24日  最高裁判所第三小法廷  判決  破棄自判  名古屋高等裁判所
1 内国法人に係る特定外国子会社等が行っていた地域統括業務は,それが地域企画,調達,財務,材料技術,人事,情報システム及び物流改善という多岐にわたる業務から成り,集中生産・相互補完体制を強化し,各拠点の事業運営の効率化やコスト低減を図ることを目的とするものであるなど判示の事実関係の下においては,租税特別措置法(平成21年法律第13号による改正前のもの)66条の6第3項にいう株式の保有に係る事業に含まれるとはいえない。
2 内国法人に係る特定外国子会社等につき,①対象地域内のグループ会社に対して行う地域企画,調達,財務,材料技術,人事,情報システム及び物流改善に係る地域統括業務の中の物流改善業務に関する売上高が収入金額の多くを占めていたこと,②所得金額(税引前当期利益)は保有株式の受取配当の占める割合が高かったものの,その配当収入の中には上記地域統括業務によって上記グループ会社全体に原価率が低減した結果生じた利益が相当程度反映されていたこと,③上記特定外国子会社等の現地事務所で勤務する従業員の多くが上記業務に従事し,その保有する有形固定資産の大半が上記業務に供されていたことなど判示の事情の下においては,上記地域統括業務が,租税特別措置法(平成21年法律第13号による改正前のもの)66条の6第3項及び4項にいう上記特定外国子会社等の主たる事業である。


どうやらこれのようです。

1 法人税の各確定申告をしたところ、改正前の租税特別措置法66条の6第1項により,シンガポール共和国の子会社であるAの課税対象留保金額に相当する金額が上告人の本件各事業年度の所得金額の計算上益金の額に算入されるなどとして,平成20年3月期の法人税の再更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分並びに平成21年3月期の法人税の再更正処分を受けた。
これを不服として取り消しを求めた。


いわゆるタックスヘイブンに子会社を作って、利益を留保して課税逃れをしたとみなされたようです。

(1) 措置法66条の6第1項は,同項各号に掲げる内国法人に係る外国関係会社(外国法人で,その発行済株式又は出資の総数又は総額のうちに内国法人等が有する直接及び間接保有の株式等の数の合計数又は合計額の占める割合が100分の50を超えるものをいう。

実質的な完全子会社状態にある企業が対象のようです。

本店又は主たる事務所の所在する国又は地域(以下「本店所在地国」という。)におけるその所得に対して課される税の負担が本邦における法人の所得に対して課される税の負担に比して著しく低いものとして政令で定める外国関係会社(法人の所得に対して課される税が存在しない国若しくは地域に本店若しくは主たる事務所を有する外国関係会社,又はその各事業年度の所得に対して課される租税の額が当該所得の金額の100分の25以下である外国関係会社をいう。

25%以下の出資した子会社が対象となります。この会社で出た利益は、日本国内の法人税に組み入れるという法律です。

(2) もっとも,措置法66条の6第4項は,
①同条3項に規定する特定外国子会社等(同条1項に規定する特定外国子会社等から株式等又は債券の保有,工業所有権その他の技術に関する権利等の提供等を主たる事業とするものを除いたもの。
②本店所在地国において,主たる事業を行うに
必要と認められる事務所,店舗,工場その他の固定施設を有し(実体基準),
③その事業の管理,支配及び運営を自ら行っているものである場合であって(管理支配基準),
④各事業年度においてその行う主たる事業が,卸売業,銀行業,信託業,
金融商品取引業,保険業,水運業又は航空運送業のいずれかに該当する場合には,その事業を主として当該特定外国子会社等に係る所定の関連者以外の者との間で行
っている場合に該当するとき


特許権の使用料で稼いでいるだけでなく、きちんと生産している会社が対象です。

これについての事実認定は、
1 ASEAN・台湾地域のグループ会社の保有株式を現物出資してAを設立した。
2 Aは,上告人の100%子会社であり,同18年4月1日から同19年3月31日まで及び同年4月1日から同20年3月31日までの各事業年度(以下,それぞれ「2007事業年度」,「2008事業年度」といい,併せて「A各事業年度」という。)において,ASEAN諸国等に存する子会社13社及び関連会社3社の株式を保有してい
た。
3 Aのシンガポールにおける所得に対する租税の負担割合は,2007事業年度では22.89%,2008事業年度では12.78%であった。
4 A各事業年度当時,地域企画,調達,財務,材料技術,人事,情報システム及び物流改善に係る地域統括に関する業務(以下,この業務を「地域統括業務」という。)のほか,持株(株主総会,配当処理等)に関する業務,プログラム設計業務及びBのための各種業務の代行業務を行っていた。
5 現地に在住する日本人の代表取締役と現地勤務の従業員三十数人で業務を遂行していたところ,従業員のうち20人以上は地域統括業務に,その余はプログラム設計業務及びBのための各種業務の代行業務に従事しており,持株に関する業務のみに従事している者はいなかった。


5が重要ですね。ちゃんと従業員がいてプログラム作成業務が過半数いたという事。

6 Aの収入金額のうち地域統括業務の中の物流改善業務に関する売上額は,2007事業年度において約4.9億シンガポールドル,2008事業年度において約6.1億シンガポールドルに上り,いずれも収入金額の約85%を占めていた。

最高裁は、実質的に売上も業務改善業務で稼いでいたと認めました。

7 Aは,A各事業年度当時,シンガポールにおいて株主総会及び取締役会を開催し,役員は同国において職務執行をしていた。また,Aは,本件現地事務所において会計帳簿を作成し,保管していた。

法的手続きとしても実態がありました。原審では税務署の判断を丸ごとそのまま認めていたようです。ちゃんと調査したのでしょうか???全く信じられません。

これについて最高裁は、
Aの行っていた地域統括業務は,相当の規模と実体を有するものであり,受取配当の所得金額に占める割合が高いことを踏まえても,事業活動として大きな比重を占めていたということができ,A各事業年度においては,地域統括業務が措置法66条の6第3項及び4項にいうAの主たる事業であったと認めるのが相当である。


当然すぎる判決ですね。ただ気に入らないのは、「訴訟の総費用は,これを400分し,その1を上告人の負担とし,その余を被上告人の負担とする。」です。全額税務署に払わせるべきです。

第三小法廷判決
裁判長裁判官 山崎敏充
裁判官 岡部喜代子
裁判官 木内道祥
裁判官 戸倉三郎
裁判官 林 景一


税金にかかわる裁判で、納税者側が勝つ例はほとんどありません。裁判費用がかかるのと、それにかかわる時間を考えれば税務署の言いなりになって裁判を諦めるのがほとんどです。
一方、税務署側は何のリスクも負わないのです。調査にかかわる費用もこれも税金、個人の自腹を切ることはありません。
となれば、裁判費用の一部は徴税対象と決定した個人に払わせるか何かしないとダメでしょう。