最高裁判所裁判官の暴走を許さない

最高裁判所裁判官の国民審査は、衆議院選挙の時の「ついでに」ならないようにしましょう。辞めさせるのは国民の権利です。

同意をとらずにリモートで抜き取ったデータは証拠になる

2021-03-14 11:48:48 | 日記
平成30(あ)1381  わいせつ電磁的記録記録媒体陳列,公然わいせつ被告事件
令和3年2月1日  最高裁判所第二小法廷  決定  棄却  大阪高等裁判所

 1 電磁的記録を保管した記録媒体がサイバー犯罪に関する条約の締約国に所在し同記録
を開示する正当な権限を有する者の合法的かつ任意の同意がある場合に国際捜査共助に
よることなく同記録媒体へのリモートアクセス及び同記録の複写を行うことの許否
2 警察官が日本国外に所在する蓋然性がある記録媒体にリモートアクセスをして電磁的記録の複写をするなどして収集した証拠について証拠能力が肯定された事例
3 リモートアクセスによる電磁的記録の複写の処分を許可した捜索差押許可状の執行に当たり個々の電磁的記録について個別に内容を確認することなく複写の処分を行うことが許されるとされた事例
4 インターネット上の動画の投稿サイト及び配信サイトを管理・運営していた被告人両名に上記各サイト上におけるわいせつ電磁的記録記録媒体陳列罪及び公然わいせつ罪の各共同正犯が成立するとされた事例



これって裁判を二つに分ける必要があるレベルだと思います。
まず、警察が押収した証拠能力に関する裁判とそれに基づいたわいせつ画像の販売の裁判でしょうね。ということで、私はこのブログでは2つにぶった切ります。

1 警察官がリモートアクセス(コンピュータを用いてこれと電気通信回線で接続している記録媒体にアクセスすることをいう。刑訴法99条2項,218条2項に規定されたものか否かを問わない。以下同じ。)をして記録媒体から電磁的記録を複写するなどして収集した証拠の証拠能力について

通常、押収は令状を持って家宅捜索で証拠物件を押収しますが、web上とは全く違います。正式な手続きとして認められるかどうかを判断するところから始めます。

ア 警察官は,平成26年9月30日,インターネットサイト「X」の運営管理会社である株式会社Yの業務全般を共同で統括管理するZ及び被告人甲並びにYの代表取締役である被告人乙らが共謀の上,同サイトにおいて公然わいせつ幇助,風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律違反の各犯行に及んだことを被疑事実とする捜索差押許可状に基づき,Y事務所及び付属設備において,捜索差押えの執行を開始した。

通常の手続きに準ずる形で令状が出たようです。

「差し押さえるべき物」として,「パーソナルコンピュータ」等が記載されているほか,「差し押さえるべき電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体であって,その電磁的記録を複写すべきものの範囲」として,「差し押さえるべきパーソナルコンピュータ(中略)からの接続可能なファイル保管用のサーバの記録媒体の記録領域であって,当該パーソナルコンピュータ等の使用者に使用されているもの」

記録媒体、つまりUSBメモリとHDDなどでしょうね。ただこの書き方でいいのかなという気がします。というのはクラウドもこれに該当することになりますよね。

「差し押さえるべきパーソナルコンピュータ(中略)からの接続可能なメールサーバの記録媒体の記録領域であって,当該パーソナルコンピュータ等の使用者のメールアドレスに係る送受信メール,その他の電磁的記録を保管するために使用されているもの」

知りたかったことはここですよね。メールサーバも抑えておいた方が良くないかなと思います。

イ 警察官は,上記捜索差押えの実施に先立ち,Yではアメリカ合衆国に本社があるA社の提供するメールサービス等が使用されている疑いがあり,

外国サーバだと厄介ですよね。でも、過去の判例で外国サーバに載せたエロ画像も、わいせつ物陳列で有罪判決でした。このブログでも紹介しました。

ウ 警察官は,上記イの方針に基づき,被告人両名を含むYの役員や従業員らに対し,メールサーバ等にリモートアクセスをしてメール等をダウンロードすること等について承諾するよう求め,アカウント及びパスワードの開示を受けるなどしてリモートアクセスを行い,メール等の電磁的記録の複写を行ったパソコンについては,被告人乙から任意提出を受ける手続をとった

任意提出といっても実際は強制に近いものでしょう。

警察官は,Y関係者に対し,上記リモートアクセス等は任意の承諾を得て行う捜査である旨の明確な説明をしたことはなく,原判決は,手続㋐について,Y関係者は上記捜索差押許可状等の執行による強制処分と誤信して応じた疑いがあるから任意の承諾があったとは認められない旨判断しており

ここね。説明に瑕疵があったわけです。

エ 上記捜索等が開始された同日以降,Y事務所において,メール等を使用者のパソコンに複写する作業等が続いたが,なお相当の時間を要すると見込まれ,終了のめどが立っていない状況において,Yは,警察官に対し,よりYの業務に支障が少ない方法として,警察のパソコンでメールサーバ等にアクセスできるアカウントを付与するなどしてY事務所以外の場所でダウンロード等ができるようにする旨の提案を行った。

いや、これ説明がなかったとはいえ追認してますよね。

オ 手続㋐,㋑の各リモートアクセスの対象である記録媒体は,日本国外にあるか,その蓋然性が否定できないものである。なお,上記各リモートアクセス等について,外国から反対の意思が表明されていたような事情はうかがわれない。

そりゃ裁判所も追認したでしょってことになりますよ。

所論は,日本国外に所在するサーバへのリモートアクセスによる電磁的記録の取得行為は,現行刑訴法によっては行うことができず,あくまで国際捜査共助によるべきものであるところ,警察官が,これらの点を認識した上,国際捜査共助を回避し,令状による統制を潜脱する意図の下に手続㋐,㋑を実施した行為は,サーバ存置国の主権を侵害するものであり,重大な違法があるから,各手続によって収集された証拠は違法収集証拠として排除すべきである旨主張する。

弁護士の苦肉の抗弁でしょうね。

裁判所は
電磁的記録を保管した記録媒体が同条約の締約国に所在し,同記録を開示する正当な権限を有する者の合法的かつ任意の同意がある場合に,国際捜査共助によることなく同記録媒体へのリモートアクセス及び同記録の複写を行うことは許されると解すべきである。

ネットでつながっている以上、サーバがどこの国にあるかなんてもはや関係ないですよ。となれば、この判断は妥当だと思います。これを制限すると、規制が全く無意味になりますから。

前記の事実関係に照らすと,前記捜索差押許可状による複写の処分の対象となる電磁的記録には前記被疑事実と関連する情報が記録されている蓋然性が認められるところ,原判決が指摘するような差押えの現場における電磁的記録の内容確認の困難性や確認作業を行う間に情報の毀損等が生ずるおそれ等に照らすと,本件において,同許可状の執行に当たり,個々の電磁的記録について個別に内容を確認することなく複写の処分を行うことは許されると解される。

当然こうなりますわな。
しかし、あくまでも当事者が同意しているのでこれは証拠になるのであって、追認なしであれば不可になるべきでしょう。

第二小法廷決定
裁判長裁判官 草野耕一
裁判官 菅野博之
裁判官 三浦 守
裁判官 岡村和美

当然ですね