午前中、シアターガイド編集部の皆さん来訪、<わたしの本棚>撮影とインタビュー。片づいていないので恥ずかしいが仕方ない。『現代能楽集 イプセン』についてあまり話せなかったな。午後、新国立劇場へ。『夏の夜の夢』観る。三時間二十分。その後『現代能楽集 鵺』稽古に立ち会う。田中裕子さん、村上淳さんに初めて挨拶。四人だけの出演者だが、密度は濃い。夜、予定より遅れて、梅ヶ丘で自主稽古ダンス途中経過を見る。その後、ミーティング。
新国立劇場。午前中、鵜山芸術監督と打合せ。パンフ用対談。あうるすぽっとへ。日韓フェス『ちゃんぽん』とWitty lookを観る。座 高円寺1へ。ようやく『ユーリンタウン』観る。この内容の劇で日本語版台本を流山児氏に書き下ろしたのは、相性が良かったのではないかとあらためて思う。流山児★事務所の「緩さ」のようなものが芝居に合っているところと、もう少し頑張れるところがある。52人の出演者を200人が観ているというのは、それにしても贅沢すぎる話だ。
帰国。過ぎてしまえばあっという間の一ヶ月余。演出助手イ・スヒ、通訳ソン・ミヘンのコンビともお別れ。新たに細かく指示をしたチャン・ソンイクは本番をきちんとこなしているだろうか。帰国後、その足で新国立劇場へ行き雑誌取材を受ける。ロビーで写真撮影。毎日取材が続く。ありがたいことではあるが、写真を撮られる前に髪を切りに行きたい。長い方がいいという意見もあるのだが……。『ユーリンタウン』を観に行くのは、まだお預け。
俳優・スタッフにNOTEを渡し、後はあえて放置。午後からファッション系雑誌取材二件。カメラマンと編集者の感じがよく素直に乗せられ、モデルのようなことをさせられる。大学路の裏山に散歩。ソウル芸術大学ヨー・ダクヒュン学長と夕食。筋が通って懐が広くかっこいい72歳。終演後「空間と時間について深く考えさせられた」と絶賛をいただく。長い握手。俳優陣とも話。まだ不満なシーンがあり、もうひといじり。ソウルを去るのが名残惜しい。みんないい奴らだ。おつかれさま。
朝六時起床して仕事。午後からNOTE(ダメ出し)、稽古。テクリハ中心に。夕方劇団青羽稽古場で『だるまさんがころんだ』の稽古を覗く。演出のキム・カンボが俳優陣相手に吠えている。私がいるのに気づいて大人しくなる。アルコ劇場で取材受ける。劇場制作・広報がいいかげんすぎるので指導。『屋根裏』2日目は、前半が固かったが芝居の流れは昨日よりつかめてきていて、後半は気持ちが繋がってきた。日本から来た俳優・制作陣も交えて飲みに行く。途中でおそろしく眠くなる。
昼間に一度通し、時間ある限りテクニカルの稽古。初日。超満員。なんとか開く。ソン・ジンチェク氏始め劇団美醜の面々、韓国版『ブラインドタッチ』組、日本関係者ら、賑やかな客席。俳優たちは頑張っているが、中盤から若干疲れが見える。コンディションを整え千秋楽まで乗りきってもらいたい。テクニカルは音響が経験の浅いオペレーターなので、幕が開いても稽古せねばなるまい。取材もいろいろ入っていて、宿舎と大学路を行き来するだけの日常のまま、ソウル滞在は終わりそうだ。
午前中、舞台直し。午後、場当たり続き。指導を交えつつ。夕方テレビ出演。夜ゲネプロ。俳優陣は格段に向上。やっとこの作品のひと味違う面白さを実感しはじめたかな。今までやってきたあれこれが実を結ぶことに期待。……日本では新国立劇場『現代能楽集 鵺』稽古に、多忙だった出演者がようやく全員揃ったという。キャスト四名がこれから文字通り四つに組む。半月前まで台本を書いていて、脱稿後は演出・鵜山氏とメールで細かい直し相談をしつつのソウルの日々だが、帰国も間近。
午前中ジム・ヨンナム劇場照明チーフと明かり作り。種々の事情で場当たり開始が遅れ全体の三分の二しか消化できず。美術・音響はそもそもじょん万次郎の名で自分がプランナーをしているので淡々とやるのみ。しかし照明は、データをもらっているとはいえ、燐光群レギュラープランナー・オペレーター竹林功匠の繊細さに迫れるものではない。やれる限りはやる。場当たりでは一から始める気持ちに切り替え、七年ぶんの既視感もある中、劇場特性に合わせもろもろ調整してゆく。
韓国のシステムはかなり日本と違い戸惑うこと多々あり。言葉の壁も勘違いもある。それでもスタッフは皆協力的、とにかく進めてゆく。舞台・照明・音響の全ジャンルを見ないといけないので個人的にはヘビー。舞台は指定と違うものがあって、まだ直しがある。朝からぶっ通し十一時近くまで。照明フォーカスまで何とか当たって終わる。「素浪人」用に韓国の武士の感じの衣装が来る。頭に何か載せれば「チャングム」の人物みたいだが、面白いのでそれを基本にいじってみようと思う。
俳優最長老にして怪優ソン・ジョンナムが最近親しげ。年長者どうしのシンパシーか? 若い方の二十代トリオもおもろい奴ら。デパート主任役を初めて女優にやってもらうことになったイ・ジニ。時々女子高生のようになる肉体派イ・ソヒ。ソン・ミョンギは中学生少年役だが、じっさいの中学時代はワルだったとか。……深夜、キム・ガンボから日韓演劇フェス『ブラインドタッチ』初日が満席でとてもいい反応だったと喜びの報告。関係者の皆さま、ありがとうございます。
十時台まで稽古の日々。日本に送るべき原稿類もろもろ。目前に新たな締切。帰国後のスケジュール調整も。連日飲まずに帰る私を俳優たちが誘ってくれるが、すまぬすまぬと帰路に。彼らも午前中からあれこれやっているからたいへんなはずなのだが。宿舎の傍はなぜかフライドチキン店が四軒並ぶ謎のチキン密集地帯でいずれも繁盛している。最寄りの一軒で初めて買ってみる。ほしい部分を指定できる。……明日は日韓演劇フェス・韓国版『ブラインドタッチ』池袋あうるすぽっと初日。
原稿修正版を昨日よりさらに大慌てで出かける間際に送る。稽古時間が足りない感じは否めぬが、じたばたしても仕方ない。できることを確実にやっていく。当たり前だが、俳優自身が面白さを実感し始めた部分は確実に向上していく。各場面ごとで競いあうような楽しさが生まれたら、一山越えたことになる。みんないい顔になってきている。あと一歩だろう。劇場指定中華食堂で中華丼もどき。わりといける。宿舎のテレビはNHK国際放送が映る。日本で見ない国営放送を海外で見ている。
原稿修正版を相当に大急ぎで送る。午後から稽古。厳しくならざるをえない。照明打合せ。衣装打合せ。劇場システムが日本と違うのと、もともとの劇場との約束と現状が違う部分もあって面倒だが、少しずつ問題を解決する。もう一週間しかない。焦りもあるが、俳優たちも自覚はしている。劇場指定中華食堂で麻婆豆腐飯。わりといける。宿舎にはシャワーしかない。湯船に入ってゆっくりしたいものだと思うのだが、以前一度行ったことのあるこちらの銭湯のようなもの(チムチルパン)に行く暇もなく。
午後、日本に原稿手直し部分を送り、『屋根裏』稽古場へ。今日は俳優たちに課題を与え、自主的に回数を回したり、私にはわからぬ訛りチェック等、相互確認が中心。劇団青羽稽古場、韓国版『だるまさんがころんだ』組に挨拶。韓国版『ブラインド・タッチ』組と夕食。プルコギ。池袋公演へ出発前最後の稽古を見る。俳優二人はいい感じ。昨年よりナチュラルになっている。なんだか楽しく皆で笑い転げる時も。日本版初演から七年。岸田今日子さんも亡くなった。いろいろな思いが去来。