社会空間研究所 建築・まちづくり通信

社会空間研究所の所員が建築・まちづくりに関する情報等を気ままに綴ったブログです。
2007年6月からスタートしました。

欠陥住宅の賠償責任を巡る新たな見解

2007-07-14 22:51:39 | 制度・しくみ
7月6日に欠陥住宅の賠償責任の範囲を巡って争われていた最高裁判決が出た。
内容は「設計者や施工業者は、契約関係にない居住者に対しても、建物の安全性を配慮する義務がある」として、欠陥の程度を再審理するため高裁に差し戻されたというもの。
これまでは直接契約関係にある売主と買主の間に賠償責任が発生すると考えられてきたため、買主と直接契約関係にない施工業者にまで賠償責任を負う者の範囲が広がったことは、住宅の購入者(居住者)を守るための新たな見解が最高裁によって示されたという点で非常に大きな意味を持つ。

また、平成11年に制定された新築住宅の10年間の瑕疵担保責任を売主に義務づけた住宅品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)では、瑕疵担保責任の範囲は、基礎や柱、梁などの構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分に限られてきた。
しかし、この判決では、「バルコニーの手すりがぐらついて居住者が転落する危険があるような場合」も欠陥に含まれるという見解が示され、これは住宅の施工業者が負う賠償責任の範囲が広がったということになり、建設業界にはかなり大きな影響を与えるはず。

どちらの判決も、居住者が安全安心な住生活を確保する上では当然の内容であり、施工業者に襟を正してもらうためにも大きな意味を持つと思う。

いわゆる構造計算書偽装事件が発覚し、確認検査時のピアチェック導入や建築士制度の見直し、住宅の売主に対する瑕疵担保責任の履行のための資力確保措置の義務づけなど、急ピッチで法整備が進められている。
●一定規模の住宅に対する中間検査やピアチェック導入を盛り込んだ改正建築基準法が6月20日に施行
●建築士の受験資格や講習実施などについて具体的見直し内容を検討中
●住宅供給業者に瑕疵担保責任の履行のための資力確保措置を義務づけるとともに、住宅供給業者が倒産した場合でも住宅の修補を担保する特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律が5月30日に制定(2年6ヶ月後に本格施行)

構造計算書偽装事件のその後が報道されることも少なくなってきたが、安心して暮らせる住宅がフツーに供給されるような社会になってほしい。
本来は法でがんじがらめにされなければ実現されないということ自体間違っていると思われるが・・・。

(oba)
コメント
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