コロナ日記 タイのハヌマーンと『ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団』

2020年06月10日 | おもしろ映像

 いろいろ大変なときは「バカ映像」にかぎる。

 昨今のコロナ危機で、不便な思いを強いられているが、こういうときはマヌケ動画を観て笑うのが一番リラックスできる。

 前回はプロレスラーが家をバンバン破壊しまくる狂った映像や、伝説のカルトゲーム『アイドル八犬伝』をおススメしたが(→こちら)、今回は『ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団』(→こちら)。

 タイで制作されたという、ちょっと変わり種のウルトラマン映画だが、これが昭和の特撮ファンにはおなじみの怪作

 私も子供のころ見たが、いわくいいがたいインパクトを残す、ヘンな作品であった。

 オープニング、宇宙の異変で、太陽が接近しはじめ、地球は干ばつにみまわれている、という説明からはじまる。

 このままでは、地球は滅亡してしまうかもしれない。

 続いて、場面はロケット基地に。

 ここでは水不足に悩む人類のため、降雨ロケットで、人工的に雨を降らせる実験をやっているのだ。

 白衣を着た博士が、科学の力で世界を救うのだと力説したところ、助手の女性から、こんなアドバイスを受ける。

 

 「仏様の力を忘れてしまっては、いけないと思うわ」

 

 日本の感覚だと、怪しい新興宗教のセリフみたいだが、タイは敬虔な仏教国なので、実は全然おかしなものではない。

 実際、博士も「仏ってなんやねん!」みたいなツッコミを入れず、「そうだな」と素直に納得している。

 このあたり、宗教アバウト国家である、日本の感覚ではピンとこないところだ。
 
 そう、この映画のなんかヘンなところは、映画自体の出来もさることながら、この

 

 「日本とタイのカルチャーギャップ」

 

 からくることが多いのだ。

 その最たるが、猿神ハヌマーンが、仏像泥棒を成敗するところ。

 そもそも、このハヌマーンというヒーローも、ビジュアルからしてアレなうえに、元がおさん。

 なもんだから、ピョンピョン飛び跳ねたり、クネクネとタイ舞踊を舞ったりして、ちっとも落ち着きがない。

 

 

 

 

 ハヌマーン先生の飛行シーン。もちろん笑うところではありません。

 

 

 そんな妙にポップなヤツが、いざ殺人犯の仏像泥棒を巨大化して追いかけた日には、

 

 「逃げてもムダだ」

 「生かしてはおけぬ」

 

 なにやら不穏なセリフが。

 しかも、捕まえて罰をあたえるとか、警察に突き出すとかという順も踏まず、いきなり足でプチッと踏みつぶす。

 おいおい、いきなり処刑すなよ、それも勝手な自分の判断で、とつっこみたくなるが、ハヌマーン先生はますます絶好調で、

 

 「ほーら悪党め、どうした」

 「逃げてもムダだあ」

 「観念するんだホラァ!」

 「おまえたちを殺してやるゥ!」

 

 殺してやるゥ

 なんだか、正義の味方というより、ただの快楽殺人犯のようでステキであり、一時期流行った言葉でいえば、に出して読みたい日本語というやつだ。

 アジアの灼熱プラス気候変動で、汗みずくになり必死で逃げる泥棒に、

 

 「逃げられると思っているのか?」

 「ほーら逃げろ逃げろ」

 「仏様を大切にしろ!」

 「しないヤツは死ぬべきなんだ!」

 

 

 

 

「殺してやるゥ!」

 

 たしかに歴代ウルトラマンも、愛や友情や布団を干すことの大切さを語ってきたけど、別にそれをしなかったとて「死ぬべき」とまでは言わなかったはず。

 ほーら逃げろ逃げろとか、もはや釈明の余地なく弱者をいたぶることを楽しんでます。

 まあ、根が子供やからなあ……。

 なんだか、一時期流行った、ドナルドの「ランランルー」を彷彿させるコワさである。

 このあたり、やはり日本とタイの文化の違いで、殺人もさることながらタイでは仏像を盗むというのは、とんでもない大罪

 なんで、「それくらいされても、文句は言えん」くらいのもんだそうなのだ。

 子供のころ読んだ、江戸川乱歩大先生の『怪人二十面相』シリーズで、賊はよく仏像を盗んでいるけど、タイであれをやると巨大猿に足の裏でプチッ

 まさに、ところ変われば品変わる。

 ただの泥棒でも「万死に値する」行為なんですな。アンドレマルローは反省するように。

 きわめつけが、これは特撮ファンには有名な「ゴモラ虐殺事件」。

 ハヌマーンとウルトラ6兄弟が協力して、首尾よく怪獣を撃破した後、最後に残ったゴモラをボッコボコにするシーンだ。

 7人1匹を囲んで、殴る蹴るのやりたい放題。

 みじめに転がるゴモラを、で踏む、バット(実際は剣だが鈍器に見える)を振り下ろす、尻尾を持って引きずり回す。

 しまいにゃエースタロウが肩を押さえて、背後からバットで何度も強打。どう見ても、ヒーローの所業には見えません。

 

 

 

エースとタロウに押さえさせ、楽しそうにゴモラを金属バットで殴り続けるハヌマーン先生

 

 

 今なら「イジメ行為につながる」と炎上しそうというか、当時からすでに

 

 「ウルトラマンたち、ヒドイ!」

 「またハヌマーンが楽しそうに暴力をふるうんや」

 

 などと爆笑……大いに心を痛めたものであった。

 バットをくるんと返すところが、またイジメっぽさを助長させる。

 他にも、子役のまわりで容赦なく火薬を爆発させまくるわ(子供のにも仕掛けてないか?)。

 ロケット基地のエリートパイロットが死ぬほど馬鹿面だわ(だからZATの制服が似合う)、なんで『ミラーマン』の怪獣やねんとか、とにかく全編つっこみどころだらけ。

 まさに、「歴史のほとんどの時期が黒歴史」といわれる円谷プロの、まごうことなく本物の黒歴史

 のちのタイとのもめごとなども鑑みると、まさに「ガチ中のガチ」ともいえる存在。

 みんなで観て笑って、この難局を乗り切る一助となれば幸いである。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする