解散MAT 脱出TAC お遊びZAT 全滅MAC 「ダメだったら解散だからな」と藤田進は言った編

2023年04月30日 | オタク・サブカル

 前回に続いて、「矢倉規広世代」が中心のオタク談義。
 
 特撮にくわしくない友人ワカバヤシ君が、昭和の狂ったエピソードを聞いて、そのあまりのハイセンスな内容に、

 
 「ボクをだまして、からかってるんだろ?」
 
 
 すっかり疑心暗鬼に。
 
 そりゃまあ、
 
 
 「主人公が妹の治療費を稼ぐためにインドに修行に行き、正義のヒーローになるも、そこで第三次印パ戦争に巻き込まれるなど苦労し、そのつらい人生をエンディングで《お金もほしいさ、名もほしい》《恋もしたいさ、遊びたい》とグチりまくる」 
 
 
 なんて言われても、「え? それネタやろ?」としか思いませんわな。

 今回は「自衛隊が出れば怪獣は普通にやっつけられる」という話から、

 「でも、『ウルトラマン』の科学特捜隊はまだしも、その他の防衛組織はかなり弱い

 という流れになってからの続きで……。 


 では、まずは登場人物。
 
 
 1.ベットウ
 
 後輩。戦隊ヒーロー、アニメ、マンガ、プロレスが得意ジャンル。
 
 『帰ってきたウルトラマン』で好きな怪獣はダンガー
 
  
 2.ワカバヤシ

 元関東人。オタクではなく、映画、文学、哲学などにくわしいインテリ。
 
 『帰ってきたウルトラマン』で好きな怪獣は特になし
 
 
 3.カネダ先輩

 SF、ミステリ、映画、ゲームなどが専門。

 『帰ってきたウルトラマン』で好きな怪獣はサドラ
 
 
 
 4.。通称

 特撮、SF、ミステリ、映画あたりが専門。
 
 『帰ってきたウルトラマン』で好きな怪獣はキングマイマイ

 

 それでは、張り切ってどうぞ。

 


  
解散MAT 脱出TAC お遊びZAT 全滅MAC
 
ベットウ「あるいは、解散MAT 謹慎TAC 脱出ZAT 全滅MAC」
 
ワカバヤシ「そのマットとかタックって、自衛隊とか地球防衛軍みたいなの?」
 
ベットウ「それぞれ、『帰ってきたウルトラマン』『ウルトラマンA』『ウルトラマンタロウ』『ウルトラマンレオ』の正義の組織です」
 
ワカバヤシ「それが、解散とか謹慎とか全滅とか、大丈夫なの?」
 
ベットウ「それが、大丈夫やないんです」
 
ワカバヤシ「だよねえ。これが解散陸自、脱出空自、お遊び海自、全滅在日米軍だったら、日本も終わりだもん」
 
カネダ「まずはMATか」
 
ベットウ「MAT。【Monster Attack Team】の略ですね」
 
ワカバヤシ「【怪獣攻撃隊】。なかなかカッコイイね。で、それがなんで【解散】なの?」
 
「それは、このチームがしょっちゅう《解散、解散》言われてるからやねん」
 
ワカバヤシ「解散って、なんで?」
 
カネダ「そら、怪獣やっつけ……じゃなかった攻撃隊が、怪獣退治に失敗したら、その罰ゲームは受けなあかんわ」
 
ベットウ「だいたい、藤田進に《次ダメだったら、MATは解散だからな》って、シメられてますよね」

 

 

 

「MATは解散だからな」が持ちギャグ(?)の地球防衛庁長官。昭和特撮ではおなじみの、藤田進さん。


 


ワカバヤシ「でも、前線で戦う人達が解散したら、怪獣はどうなるのさ?」
 
「さあ……」
 
ベットウ「ねえ……」
 
ワカバヤシ「ダメじゃん!」
 
ベットウ「まあ、物語に緊迫感を出すために、解散言うてるんでしょうケド」
 
カネダ「そんな戦後処理は、怪獣倒してからやってくれって話やわな」
 
ベットウ「MATって、地球防衛庁のかなり下っ端なんでしょうね」
 
「初めて言われたんって、グドンツインテールのとこやっけ?」
 
ベットウ「最初かどうかは憶えてないですけど、第5話の『二大怪獣東京を襲撃』と、第6話の『決戦!怪獣対MAT』」
 
ワカバヤシ「なんか、おもしろそうなサブタイトル」
 
ベットウ「ここでは、ツインテールと、それを捕食する地底怪獣グドンが大暴れ」
 
カネダ「MATはMN爆弾で攻撃するけど、これでは倒せない」
 
ベットウ「頼みの綱のウルトラマンも敗れて、さあ大変」
 
ワカバヤシ「あ、ウルトラマン、負けちゃうんだ」
 
カネダ「死にはせーへんけどな。わりとボロ負け」
 
「まあ、2対1ですし」

ワカバヤシ「(スマホで検索しながら)ツインテールって、おもしろいフォルムだねえ」
 

 

 

ツインテール。特撮史上に残る、すばらしいデザイン。髪型のツインテールの元ネタも、たぶんコレ。かわいい。

 

 

「この2匹は強いし、デザインもいいし、いい戦いやなあ。大好き」
 
ベットウ「エビの味しますしね」
 
カネダ「で、この状況で《MATは解散》と」
 
ワカバヤシ「そんな無茶なって」
 
カネダ「ホンマ、今する話とちやうよな」

 



古代怪獣グドン。ツインテールとのタッグとは言え、ウルトラマンをボコボコにした実力者。シブい。

 


 
「民間人が地下道に閉じこめられて、それもなんとかせなアカンなのに、そんな内輪もめしてる場合とちゃう!」
 
ベットウ「郷隊員の恋人、アキちゃんも死にかけてるのに……」
 
カネダ「まあ、お偉いさんのリアルではあるよな」
 
ワカバヤシ「んで、本当に解散しちゃうの?」
 
カネダ「いや、そこは防衛軍もなんとかせなあかんから、ついにあれを出してくる」
 
ベットウ「出ましたね、スパイナー

ワカバヤシ「お、新兵器?」
 
「これはすごいねん。なんちゅうても、小型水爆に匹敵する威力があるという」
 
ワカバヤシ「え? え? そんなの使うの? 東京、壊滅してしまわない?」
 
カネダ「ま、するやろね」
 
ワカバヤシ「おさまってる場合じゃないよ。避難できない民間人は?」
 
「まあ、もろともということで」
 
ワカバヤシ「首都機能の施設とかも?」
 
カネダ「大阪か名古屋に遷都しますか」

ワカバヤシ「前も聞いたけど、本当に核兵器を街中で使っちゃうんだねえ」

ベットウ「正確には核やないということになってますけど、まあ核ですよね」

「エヴァに出てくるN2地雷と同じやな。核やけど、核やないと」

カネダ「キノコ雲が上がっても、劇中で核って言うてないから核にならへん」

ベットウ「シュレディンガーの核兵器!」

「ここで岸田森が、東京大空襲の話をするのがグッとくるねんな」
 
カネダ「昭和と平成以降の特撮の違いに、《戦争がリアル》な世代かどうかはあるやろね」
 
ワカバヤシ「いくら怪獣をやっつけられないとはいえ、じゃあ人間とか施設ふくめて、東京もろとも焼き払えばいいじゃんって、すごいねえ」
 
「パンがなければ、ケーキを食べれべええのよ」

ベットウ「『シン・ゴジラ』の東京壊滅シーンの元イメージって、たぶんこのスパイナーのエピソードですよね」

 

続く


 

 

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怪獣レインボー作戦 先崎学vs小倉久史 1990年 C級2組順位戦 その2

2023年04月27日 | 将棋・名局
 前回の続き。
 
 1990年C級2組順位戦
 
 先崎学五段小倉久史四段の一戦は、三間飛車穴熊の大激戦となった。
 
 この将棋は特に、小倉の独特な指しまわしが印象的で、振り飛車党特有の
 
 「なんやかやで崩れない」
 
 という不思議な腕力が見どころのひとつだ。
 
 
 
 
 
 
 ▲32銀飛車を責めたところに、△22金の受けが力強い。
 
 ▲21銀成には△33金で、▲21の成銀が遊ぶのが不本意だが、ここで▲44角成と捨てるのが先崎のひねり出した好手
 
 ▲44角成△32金▲53馬
 
 △44同銀▲21銀成△同金▲44角とさばいて先手優勢だから、小倉は▲44角成△同銀▲21銀成に銀を取らずに△33金とこっちのを支えて踏んばる。
 
 固さを頼りに食いつこうとする先手に対し、後手も自陣飛車を打って頑強に抵抗する。
 
 
 
 
 
 このあたりの攻防も、めったやたらにおもしろいのだが、やはり玉形の差で、少しずつ振り飛車が押され気味のように見える。
 
 むかえた、この局面。
 
 
 
 
 先手の攻めは、かなりうるさい感じ。こうなると、を詰められている形も痛い。
 
 穴熊ペースの終盤戦かと思いきや、ここでの3手1組の好手順でまだまだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 △77竜▲同銀△35角が、小倉の腕力を見せた手順。
 
 接近戦では働きにくいを捨ててからの、攻防の打ち。
 
 ▲68歩△53銀と取って、まだまだ戦える。穴熊のを一枚上ずらせたのも大きい。
 
 序盤定跡書や今ならAIで、終盤力詰将棋などできたえられるが、こういう手はなかなか机上の知識では身につけにくく、やはり強い人の実戦を参考にするのがいいのだろう。
 
 さらにもみあって、再度の自陣飛車
 
 
 
 
 
 このねばり強さには感嘆するしかない。負けてたまるかという執念を感じる。
 
 ▲33馬と逃げたところに△79金と置いておくのも、実戦的好手。
 
 とにかく王手をかかる、いわゆる「見える」形にしておくのが穴熊攻略のコツである。いやあ、熱いですわ。
 
 若手同士が、才能と勝利への執着をむき出しにした、順位戦らしいねじり合いだが、最後に抜け出したのは先崎だった。
 
 
 
 
 
 後手が△61銀打と埋めたところだが、この局面で決め手がある。
 
 ここで取るべき駒は、「あれ」ではなく……。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 ▲69飛とこちらのを取るのが好手。
 
 タダでを取れるのに、飛車銀交換に甘んじるなど損しかないところだが、△同金と攻め駒を遠ざける方が急務なのだ。
 
 現に▲43飛成を取ると、△78角と強引にへばりつく筋で、先手玉は受けがむずかしい。
 
 
 
 
 
 
 △79金と「見える」形にする効果が、ここであらわれており、振り飛車の常套手段である△84も光り輝いている。
 
 こういう喰いつかれ方をすると、せまくて逃げ道がなく、を埋めるスペースも失って、穴熊の負けパターンだ。
 
 後手は最悪、千日手に逃げられそうで、まったく油断ならない。
 
 ところが、一回△79をずらされると、先手玉に王手も来ないどころか、たとえば次に△79角と打って、△88角成などしても、▲同銀の形が、やはりトン死筋どころか王手もかからない。
 
 穴熊の深さを存分に活かした戦いぶりで、とうとう先手勝ちがハッキリしてきた。
 
 △69同金以下、▲52歩△同金寄▲53歩△同金左▲65桂と自然に寄せて試合終了。
 
 ……といいたいところだが、敗勢になってからの小倉の根性もまたすさまじく、先崎は「いいかげんにしろ!」とばかりに自陣に金銀をはり付け穴熊をリフォームするが、それでも投げずに徹底抗戦
 
 
 
 
 
 この△22銀というのも、なにやらすごい手で、ただの侵入を防いだだけだが、投げきれない小倉の無念が伝わってきて胸をつかれる。
 
 それにしても先手の穴熊玉の、なんと遠いことよ。
 
 
 すでに大勢は決していたが、
 
 
 「若手棋士はこうでなくっちゃな!」
 
 
 そう思わせる迫力は十二分に感じられる一手。
 
 原田康夫九段なら、
 
 
 「すばらしい戦いを見せた両者に拍手、拍手」
 
 
 賛辞を送ったことだろう。
 
 若手同士のライバル心、中終盤のねじり合い、切れ味鋭い決め手と、私の好物がすべて詰まったこの一局は、『先ちゃんの順位戦泣き笑い熱局集』という本に棋譜とくわしい解説が載っています。
 
 敗れたとはいえ、小倉久史のしぶとい指しまわし。振り飛車党には一見の価値アリです。
 
 
 
 (先崎のうますぎる穴熊の戦い方はこちら
 
 (三間飛車といえばこの人、中田功の神業的さばきはこちら
 
 (その他の将棋記事はこちらから)
 
 
 
 
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下町流三間飛車 先崎学vs小倉久史 1990年 C級2組順位戦

2023年04月26日 | 将棋・名局
 三間飛車が、いつの間にか復権している。
 
 もともと、軽いさばきを得意とする振り飛車党には人気の戦法だが、平成のころというのは居飛車穴熊に組まれやすいということで、いわゆる「勝ちにくい」戦い方を余儀なくされるイメージがあった。
 
 そのため「スペシャリスト」である中田功八段の「コーヤン流」が孤軍奮闘しているような時代が長かったが、その後
 
 
 
 「三間飛車藤井システム」
 
 「トマホーク」
 
 「阪田流三間飛車」
 
 
 などなど様々な試行錯誤や新アイデアがあり、今ではメジャー戦法に見事昇格。
 
 ということで、今回はそんな三間飛車の熱局をお届けしたい。
 
 
 舞台は1990年C級2組順位戦、2回戦。
 
 先崎学五段小倉久史四段の一戦。
 
 小倉と言えばコーヤンと並ぶ三間飛車のスペシャリストで、こちらは「下町流」の愛称で人気である。
 
 当然のごとく三間飛車に振ると、先崎はこちらも得意の居飛車穴熊
 
 序盤でちょっかいを出した先崎だが、小倉の対応が巧みでゆさぶりに失敗する。
 
 むかえたこの局面。
 
 
 
 
 
 
 飛車がさばけそうなうえに、△58にいると金も大きく、振り飛車が指しやすそうに見える。
 
 実際、先崎も苦戦を意識していたようだが、ここですごい勝負手をくり出す。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 ▲96歩と突くのが、ちょっと思いつかない反撃の筋。
 
 を取られたはずのから逆襲していくのを、俗に「地獄突き」なんていうけど、穴熊からのそれなど見たこともない形。
 
 △同歩なら、▲93歩と打って、△同香▲66角とのぞく筋で反撃。
 
 
 
 
 
 本人も成算はなかったというか、なかばヤケクソのような心境だったようだが、
 
 
 「△96同歩とは取りにくいはず」
 
 
 という目論見もあった。
 
 なんといっても相手は穴熊だ。いくら無理攻めといっても、固さにまかせてどんな乱暴をしてくるかわからない。
 
 そこまでしなくても指せそうだし、ましてや負けられない順位戦では、ますます取りにくいだろう。
 
 小倉は放置して△46角とするが、先崎もあれこれ手をつくして端を取りこみ、以下▲94歩△92歩とあやまらせることに成功。
 
 
 
 
 
 これで優勢になったわけではないが、将棋はよく、
 
 
 「たとえ不利でも、どこかで主張点を作っておくことが大事」
 
 
 なんて解説されるもので、この端歩を詰めた形などがその例だろう。
 
 9筋のかけ引きが一段落したところで、まずはオードブルが終了。
 
 ここからはお待たせ、メインディッシュのねじり合いに突入するのだ。
 
 
 (続く
 
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ウルトラマン 科学特捜隊の倒した怪獣を数えてみよう その2

2023年04月23日 | オタク・サブカル

 前回に続いて『ウルトラマン』についての身内オタクトーク。

 

 「実は自衛隊が出れば、怪獣はふつうに倒せる」

 

 という特撮世界の《常識》から話は

 

 「初代『ウルトラマン』の科学特捜隊は優秀で、歴代トップの怪獣撃破率を誇る

 

 という内容に。

 そこでカウントしてみると、たしかに多いようで……。

 

「アントラーにマグラーに」
 
カネダ「スパイダーショットでミイラ人間
 
ベットウ「マルス133でバルタン星人(2代目)を屠ってます」

「マッドバズーカでケムラーを撃破」
 
カネダギガスを強力乾燥ミサイルで一撃」

 

 

冷凍怪獣ギガス。この風貌だが、大して強くない。レッドキングの「かわいがり」に耐えかねて逃げ出す、かわいそうな人。かわいい。

 

 
ベットウゴルドンも倒してましたよね」
 
カネダ「地底魚雷やったっけ?」
 
「いや、コロナ弾ちゃいましたかねえ」
 
カネダ再生ドラコ再生テレスドン

 
ベットウ「スパーク8をおみまいするぜ!」

 

ハヤタのマルス133で右肩から流血するダメージを受け、ブチ切れて岩山を破壊する再生ドラコ。かわいい。

 

カネダ「3人がかりとはいえ、フジ隊員に撃墜マークがついたのがええよな」
 
「フジ隊員は第1話でビートルを操縦してるのが、カッコエェェェって思たんよなあ」
 
カネダ「ただの通信係やない」
 
ベットウ特殊潜航艇S25号も操縦してますしね」 
 
「ジェット戦闘機と小型潜水艦動かせて、地上戦もできる」
 
ベットウ「陸海空オールマイティ。なにげに、めちゃくちゃスペック高い」

 

 

第一話「ウルトラ作戦第一号」でジェットビートルを操縦するフジ隊員。とても素敵。

 

「なんかオレ、ウルトラシリーズのヒロインといえば、アンヌ隊員が人気やけど、断然フジ隊員とか由利子ちゃんの方が魅力ある気がするなあ」

カネダ「まあ、アンヌ隊員は【恋人感】あるのがええんやろ。俺はパティ隊員派やけど」

ベットウ「パリ本部のアンヌ隊員もいましたねえ。まあ、ボクはMATの丘隊員派ですけどね」
 
カネダ「話を戻して、ザラガスは入れてもええか」
 
ベットウ「じゃあ、ジェロニモンもそうッスね」
 
カネダ「あとはサイゴとか」

 

 

砂地獄怪獣サイゴ。おそらく『ウルトラマン』全39話中で、もっともマニアックな怪獣。次点はザンボラー。どっちもかわいい。

 

「最後の怪獣やからサイゴという、センス抜群のネーミング」
 
ベットウニードルS80で撃破」
 
「いや、あれはSNKミサイル
 
ベットウ「あれ、そうでしたっけ?」
 
「これは【あるある】やな。たしかなんかの本に、間違ってニードルS80って書いてるはず」
 
カネダ大伴昌司やろ、たぶん。知らんけど」
 
ベットウ「あとはゼットンは有名ですよね。ペンシル爆弾。今は無重力弾がメジャー?」
 
「おいおい、ベムラーもあったやろ」
 
ベットウ「え? ベムラーは第1話で、スペシウム光線を喰らってましたやん」
 
「ちゃうちゃう、オレの言うてるのは『長編怪獣映画ウルトラマン』の話」
 
ベットウ「あー、再編集の映画版ですか。そんなん、だれが知ってますのん」
 
カネダ「思い出した。あそこは特殊潜航艇S16号の魚雷で大破」
 
「そう、それそれ。たぶん劇場版ウルトラマンで、一番マイナーな作品。オレでなきゃ見逃しちゃうね」
 
ベットウ「もう見逃して、真人間になりましょうよ」
 
カネダ「劇場版と言えば、シャロン君の好きな『ジャイアント作戦』も入れとくか」
 
「超強力乾燥光線でモルゴ撃破」
 
ベットウ「マルサイトセブンで、ナポレオンを破壊」

「あとはゴルドキングビルガメラーと……」

カネダ「そんなん、おったっけ?」

ベットウ「パソコンゲームの『空想特撮シリーズ ウルトラ作戦 科特隊出撃せよ!』ですね。ようおぼえてるなあ」

カネダ「テレビシリーズで13、4匹くらい? 全39話でそれだけやっつけてたら、なかなかのもんやな」

「番外編入れたら20匹くらいか。特に、スペシウム光線が効かんアントラーとか、ケムラーを倒してるのは大金星」
 
ワカバヤシ「へー、ちょっとイメージ変わるなあ。じゃあ、地球防衛組織って、ボクが思ってたみたいな弱いもんでもないんだ」
 
「いや、これは科特隊ががんばってるだけで、弱いところは弱い」
 
ワカバヤシ「あらま」
 
ベットウ「そんなワカバヤシさんには、いい言葉があるんですよ」
 
カネダ「あー、あれな。なんやったっけ? 解散からやったな」
 
解散MAT 脱出TAC お遊びZAT 全滅MAC
 
ベットウ「あ、そっちっスか。僕は解散MAT 謹慎TAC 脱出ZAT 全滅MACのイメージですわ」
 
ワカバヤシ「よくはわかんないんだけど、悪口を言ってることだけは伝わってくるよ」
 
カネダ「正義の組織やのに、どっちも【脱出】ってワードが入ってるところがミソやな」

「ここ掘ると笑えるけど、同時に哀しい気分にもなるんスよね」

ベットウ「完全にやられキャラあつかいですもんねえ」

ワカバヤシ「ホントは勝てるのにね」

 

  (続く

 

 
 

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ウルトラマン 科学特捜隊の倒した怪獣を数えてみよう

2023年04月22日 | オタク・サブカル

 前回に続いて、「安用寺孝功世代」が中心のオタク談義。
 
 ウルトラマンにくわしくない友人ワカバヤシ君が、昭和の狂った特撮エピソードを聞いて、そのあまりのハイセンスな内容に、

 
 「ボクをだまして、からかってるんだろ?」
 
 
 すっかり疑心暗鬼に。
 
 そりゃまあ、
 
 
 「水ばっかりガブガブ飲んでる主人公が、弱っちい正義のロボットを差し置いて、ムチでバシバシ巨大怪獣を倒す話」 
 
 
 なんて言われても、「え? それネタやろ?」としか思いませんわな。
 
 では、まずは登場人物。


 
 
 1.ベットウ
 
 後輩。戦隊ヒーロー、アニメ、マンガ、プロレスが得意ジャンル。

 好きな『ウルトラQ』の怪獣はぺギラ

 

 
 2.ワカバヤシ

 元関東人。オタクではなく、映画、文学、哲学などにくわしいインテリ。
 
 好きな『ウルトラQ』の怪獣は特になし。


 
 
 3.カネダ先輩

 SF、ミステリ、映画、ゲームなどが専門。

 好きな『ウルトラQ』の怪獣はパゴス

 
 
 
 4.

 特撮、SF、ミステリ、映画あたりが専門。
 
 好きな『ウルトラQ』の怪獣はマンモスフラワー
 
 
 
ワカバヤシ「なんか、日本の特撮って、すごいんだね」
 
「すごいやろ。なんかねー、頭狂ってるよな」

ベットウファミコン黎明期みたいな、闇鍋カオスな勢いはありましたよね」

カネダ「今やったら、一時期のなろう系みたいな感じかもな。ちょっと前のニコ生とか」

「どんなジャンルも、出始めのときは無茶できるねん。それが楽しい。昭慶爆発とか」

ベットウ「『日本沈没』とか最高やけど、絶対にケガ人出てますよね」

カネダ「見ただけで、【あ、これヤバイやつや】ってわかるもんな。でもこの時代の怖いところは、別にこの人が特別でもないという」

「ふつうのアクションシーンでも、俳優さんの周りでバンバン爆発させるし」

ベットウ「こないだ亡くなった団時朗さんも、外ロケでそこらじゅうに火薬の仕込んであるところを走るのとか、メチャ怖かったって言うてはりましたね」

「どこに埋めてあるかとか、本番中にイチイチ気にしてられへんから」

カネダ「芝居しながら、めくらめっぽうで走るしかない」

ベットウ「マジで、地雷原で運動会とか、してるようなもんですもんね」

『空手バカ一代』の特訓シーンみたいや」

ベットウ「アハハハハハ! まあ、あれは創作ですけど」

「なに言うてるねん。あれは全部、ホンマのことやん」

ベットウ「んなわけあるかい! カネダ先輩、この人アホですわ」

カネダ「(真顔で)あのマンガには事実しか描いてないぞ」

ベットウ「出た、大槻ケンヂの【ウソしか描いてないのに、信者はあれを全部本当のことと信じている】という意味で『空バカ』=聖書説」

ワカバヤシ「あのさー、盛り上がってるところ悪いけど、ひとつ質問していい?」
 
ベットウ「どうぞ、どうぞ」
 
ワカバヤシ「その『シン・ウルトラマン』ってさあ、劇中に正義の組織みたいなの出てくるの? 【地球防衛隊】みたいな」
 
ベットウ「あー、それは出ますよ」
 
カネダ「【気特対】やったけ」
 
ベットウ「それは山本弘の『MM9』ですわ」

「【気象庁特異生物対策部】やね」

ベットウ「『シン・マン』は禍威獣特設対策室で【禍特対】。ちなみに、どっちも科学特捜隊の略称である科特隊が元ネタっすね」
  
カネダ「で、それがどした?」
 
ワカバヤシ「うーん、こういうこというと言うと、怒られるかもしれないけど、そういう組織があるなら、ウルトラマンっていらないんじゃないかって」
 
カネダ「ほう」
 
ワカバヤシ「だってその、科特隊だか禍特対って、怪獣退治のスペシャリストなわけでしょ? それなりの戦力は持ってるわけで」
 
「スーパーガンにスパイダーショット、マルス133だって、立派に怪獣を倒してるよな」
 
ワカバヤシ「なんか、ふつうに戦って、勝てる気がするんだけど。怪獣って、要はデカい動物みたいなもんだし」
 
ベットウ「あー、それは全然勝てますねえ」
 
ワカバヤシ「あ、そうなの?」
 
カネダ「それはねえ、特撮ファンの間では、まあ常識というか」
 
「全然、怪獣に人間は勝てるねん」
 
カネダ「科特隊とか出んでも、自衛隊で充分」
 
「戦車とか出したら、【撃て】【どどどーん】でオシマイ」
 
ベットウ「熊退治のノリっすね」

ワカバヤシ「へーえ」
 
カネダ「だから、それこそ『MM9』は怪獣を倒す方法よりも、【いかに倒せない状況を作るか】を考えるのがキモやったって、作者も言うてた」
 
「本気出したら勝つから【怪獣の血液が劇薬で、飛び散ると大惨事になるから攻撃できない】みたいな縛り作ってね」
 
ベットウ「有川浩『海の底』も、自衛隊出たら一発でしたもんね」
 
「だから、あの小説は自衛隊を《出せない》葛藤がドラマになってる」
 
カネダ「まあ、レガリスは数メートルくらいで、ちっこいからホンマに害獣退治と変わらん」
 
ワカバヤシ「じゃあ、自衛隊とか地球防衛軍が攻撃するミサイルを次々はね返されて《ウルトラマン、助けて!》みたいなシーンは、基本フィクションなんだね」
 
「ドラマを盛り上げるために、あえて噛ませ犬をやってくれてる」
 
ベットウ「けど、初代マンの方の科特隊は結構がんばってますよ」
 
ワカバヤシ「そうなんだ」
 
カネダ「結構、怪獣は倒してるのよな。えーと、なにあったけ。まず、アントラー

ベットウ「ウルトラマンが大苦戦するのを、キャップのナイススローでね」

 

 

 

スペシウム光線にノーダメのアントラー。カッケー。

 

 

カネダ「スゴイ遠投とコントロールで、青い球を命中させるねんな。あの回はバラージのセットもすばらしい」

別の映画のセットに、勝手に入って撮ったんですよね」

ベットウ「そういや『奇巌城の冒険』って観たことある人に、会ったことないなあ」

カネダ「たしかに。そもそも、ソフト化されてるんやろか」

「アントラー出るんかな」

ベットウ「出るわけないでしょ」

「オレ、世界中のすべての映像作品に、怪獣出てほしい人やから」

ベットウ「ただの気ちがいですやん」

カネダ「『ローマの休日』とかでも?」

「あーいいッスねえ。全然ありです」

ベットウ「なに出すんです?」

ビルガモとか」

ベットウ「どういうセンスなんスか。やっぱそこはアボラスバニラやないんですか?」

カネダ「スタジアムあるからな。今度、『名作映画に怪獣が出るなら、どれが合う?』って企画やろうか」

「それ、いいですね!」

 

 

 

 

ローマが似合う男(?)。ロボット怪獣ビルガモ。「バルタニック・ウェーブ」がイカす。かわいい。

 

カネダ「話を戻して、アントラーの次はマグラーか」

ベットウ「マグラかマグラーかで、一晩悩むやつですね」

ナパーム手榴弾でノックダウンってのが、シブいんよなあ」

 

続く

 


 
 

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『シン・ウルトラマン』から、オタクが昭和の「嘘松にしか聞こえない特撮」について語る

2023年04月19日 | オタク・サブカル

 前回の続き。

 『シン・ウルトラマン』の話から、

 

 「子供むけヒーロー映画だから、子役の活躍もあったのか」

 「なら当然、その子供が原子力兵器で怪獣と戦うはず」

 

 という特撮オタクの意見にあきれている、怪獣オンチの友人ワカバヤシ君。

 なんて阿呆なと思われるでしょうが、これがなかなか……。

 

ワカバヤシ「もともとの初代ウルトラマンって、そんな破天荒な内容なの?」

カネダ「そうそう。ホンマやで」
 
「マジやから」
 
ワカバヤシ「本当に子供が、動力源が小型原子炉の兵器で戦うの?」
 
スパイダーショット、ガンガン撃つから」

 

 

 

勝手に持ち出した(!)スパイダーショットでネロンガを撃つホシノ少年。
寿司屋なんて問題じゃないくらいの大炎上は必至。
「この少年の罪は?」とかいう題材でマイケル・サンデル教授に語ってもらうと楽しそう。

 

 

ベットウ「『パシフィック・リム』の芦田愛菜ちゃんにも、ぜひスパイダーを手に戦ってほしかったッスね」

「そんな映画、絶対観るわ。バリアーマシンも貸そか?」

カネダ「【ゴキゲンな新兵器だよ!】とか言うてくれるんやな」

ベットウ「三角ビートルくらいなら、全然ひとりで操縦できそうですもんね」

「ホシノ君でもできるんやから、そんなん楽勝やろ」

 

 

 

透明怪獣ネロンガ。背中のヒレのイエローがキュート。かわいい。

 

 

ワカバヤシ「でもさ、そんな武器使って、被爆しない?」
 
カネダ「まあ、するやろね」
 
「そのへんのことは、あんま気にしてへんねん」
 
ワカバヤシ「いや、気にしてよ!」

「だって、東京のど真ん中で【はげたか】いう核ミサイルぶっぱなしてるし、その辺はまあ、ね」
 
ワカバヤシ「ね、じゃないって。え? え? てかそれ、嘘ですよね?」
 
カネダ「ホンマよ、ホンマ」
 
ワカバヤシ「いやいや、被爆国日本が、街中で核ミサイルはないっしょ」
 
「あるある」
 
ベットウ「全然ありますよね」

 

 

バルタン星人を攻撃する核ミサイル「はげたか」。一応言っておきますが、ここ東京です。


 


ワカバヤシ「どういう世界観? ウルトラマンって、そういうノリなの」
 
「まあ、ねえ」
 
カネダ「昔はこんなもんよ」
 
「全体的にアバウトというか、雑やねん」
 
カネダ「そこを楽しめると、昭和の番組って、急におもしろくなるねんけどな」
 
ベットウ「そうそう、そうなんですよね」
 
「あとなんやろ、ウルトラマンが悪の宇宙人に捕らわれるねんけど、どうやっても外れない拘束具を壊せるのが【少年の涙】とか」
 
カネダ「宇宙恐竜を一撃で倒せるほどの兵器を、作った博士が【ウッカリ渡し忘れて】、そのせいでウルトラマンが死ぬとか」
 
ベットウ「そのウルトラマンを助ける宇宙警備隊の隊長が、命を2つ持ってきたのに、人間の方を助ける気がサラサラないから、結構出し惜しみしてたとか」
 
ワカバヤシ「ちょっと待って、ちょっと待って、それってどれが本当の話で、どれがオタクのオモシロ妄想なの?」
 
「そんなん、全部ホンマの話に決まってるやん」
 
ベットウ「ねえ」
 
ワカバヤシ「いや、絶対ウソだ。知らないからって、ボクをからかって遊んでるんだ」
 
カネダ「そうとも言い切れんところが、この時代の特撮の因果なとこやけどな」
 
ベットウ「ありえなくも、ないんスよねえというか、ウルトラシリーズなんかマシな方で、もっとヒドイ話、なんぼでもありますよね」
 
「あるある。子供2人を人質に取られたから、全人類、悪の宇宙人に降伏とか」
 
ベットウ「地球侵略を防ぐために来たヒーローが、1万年早く来すぎてどうにもヒマやから、現代までずーっと寝て待ってたとか」

「ヒーローが脳をシンナー中毒者のものと取り替えられて、キチガイになって街で暴れまわるとか」
 
カネダ「宇宙から来た謎の怪星と地球との衝突を避けるために、南極に【地球移動用のジェット噴射口】を建設して、間一髪でよけるとか」
 
ワカバヤシ「嗚呼、気が狂いすぎて、本当なのか、からかわれてるのか全然わからない……」
 
「だから、全部ホンマや言うてるのに」
 
ベットウ「人が人を信じられないって、悲しいですよね」
 
カネダ「地球を救うスーパーヒーローが、第1話でいきなり赤土で転んで頭打って、野垂れ死にしかけてるとか」
 
ベットウ「敵の怪人の名前が【カブト虫ルパン】に【ヒトデヒットラー】とか」
 
「【ムサシが急に番組に出られなくなった】とか」
 
ワカバヤシ「すごいね。どれが嘘松かホント松か見分けるのが、世界で一番難しいジャンルかもしれないねえ」

「だから『君の名は。』とか観ても、【はよ、南極にジェットパイプ基地作れよ】としか思わん、おかしな大人に育つねん」

カネダ「別にウソ発見器つけて、質疑応答やっててみてもええで」

ベットウ「針、ピクリとも動かないッスよね、マジで」

「事実っちゅうのは、なによりも強固なんやな」

 

  (続く

 

 

 


 

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『シン・ウルトラマン』にホシノ少年が出てスパイダーショットを打つ世界線

2023年04月18日 | オタク・サブカル

 前回の続き。

 『シン・ウルトラマン』の話から、内容的にはやや不満の残るわれわれ一同。

 ではまず登場人物から。

 

 

 1.ベットウ君
 
 後輩。戦隊ヒーロー、アニメ、マンガ、プロレスが得意ジャンル。

 好きな『ウルトラマン』の怪獣はテレスドン

 

 2.ワカバヤシ

 元関東人。オタクではなく、映画、文学、哲学などにくわしいインテリ。
 
 好きな『ウルトラマン』の怪獣は特になし。
 
 
 3.カネダ先輩

 SF、ミステリ、映画、ゲームなどが専門。

 好きな『ウルトラマン』の怪獣はネロンガ

 
 
 4.

 特撮、SF、ミステリ、映画あたりが専門。
 
 好きな『ウルトラマン』の怪獣はドラコ

 

 そんな中、ベットウ君がちょっと違う角度から切りこんできます。

 

ベットウ「ギレルモは少年の心うんぬんで思い出しましたけど、今回は子供が出るかどうかが、個人的には気になってて」

「えー、オレ特撮にガキが出てくるの大嫌い」

カネダ「そこを【あえて】出すという手もあったっていうことやろ? あの電話のオウム返しも昔のウルトラマンと同じセリフをあえて出してるんやから」

ベットウ「『シン・ゴジラ』がハードな内容やったから、逆にここは子供向きにシフトするのも、ありかなとか思ったんですよ」

ワカバヤシ「怪獣モノって、基本はそうだよね。大きいお友達が、どう思ってるかは知らないけど」

「なるほどなあ。やとしたら、まずは小学生が怪獣と戦うシーンとかあるんやろな」

ワカバヤシ「いや、ないでしょ、そんなの」

「ウルトラマンと言えば、子供のヒーローやで。で、子供番組と言えば、子役が大活躍するのがふつうやろ」
 
ワカバヤシ「ボク、ヒーローものってあんま知らないんだけど、そういうもんかな」

カネダ「それこそ、『ガメラ』シリーズ(旧作)なんかもそうやし」
 
「キミの好きなNHK教育番組と、似たようなもんやな(ワカバヤシ君はNHKマニアなのです)」
 
ワカバヤシ「ふーん。でも、子供が怪獣と戦うのはムリがあるよ、さすがに」
 
「そら、素手で戦えとは言うてない。武器はいるな。原子力兵器や」
 
ワカバヤシ「原子力! それはダメでしょ」
 
「そら、子供が怪獣と戦うなら、そんじょそこらの武器では無理や。だから、小型原子炉搭載の光線兵器を使う!」 
 
ワカバヤシ「どんな映画だよ! このご時世、絶対GOサイン出ないと思うけど。そもそも、そんな危険なもの、どこから手に入れるんだか」
 
カネダ「今やったら、ネットで何でも売ってるし、自作という手もあるけど」
 
ワカバヤシ「『太陽を盗んだ男』じゃないんだから」
 
「いやいや、ジュディ・ダットン『理系の子』によると、家の倉庫で原子炉を作ろうとした子供もおるらしいから」
 
ベットウ「カッケーっすね。理系はともかく、こういうヒーロー番組に出てくる子供は、行動力だけはある迷惑なガキなんですよ。それを出すかどうかが、結構、映画のスタンスを決めるでしょ」

「『タロウ』がアリかどうかの哲学問題やな」

カネダ「まあ武器に関しては自衛隊か、地球防衛軍からガメて来ればええとして……」
 
ワカバヤシ「ムチャクチャ言うなあ。大人に止められるよ」
 
「いやいや、子供番組の子供は、どんな施設でも入り放題やから。江戸川コナンも、殺人現場で大暴れしてるやろ」

ワカバヤシ「リアリティラインの引き方が、狂ってるよね」

カネダ「それか、巻きこまれ型か。少年少女キャンプ場にウラン怪獣が出現!」

ベットウ「大ピンチっスね!」

カネダ「うかつに攻撃すると、子供たちも被弾するかもしれへん。そこで、怪獣をキャンプ場から遠ざけるために、ヘリコプターを使った、決死の誘導作戦を開始する!」
 
ワカバヤシ「そういうのは、ありそうだね」

 

 

 

ウラン怪獣ガボラ。バラゴン、パゴス、ネロンガ、マグラ-と長い旅の末に到達。かわいい。


 
カネダ「そこでおとりに使うのは、当然ウラン235の入ったカプセル」
 
ワカバヤシ「え? そんな危険なもん使うんですか?」

カネダ「だってガボラは、ウランが大好物やから」

「当然の選択やね」

ワカバヤシ「それだと、怪獣にくわえてウランの放射線でも、被害が出るんじゃないですか?」

カネダ「しゃあない。世界を守るには、多少の犠牲はつきものなんや」
 
「この世界のたいがいのことは、核で解決できるねん」
 
ワカバヤシ「それ、アメリカ人の発想だよ」 
 
カネダ「当然、その誘導用のヘリにも子供が乗ってる」
 
ワカバヤシ「また子供か。迷惑だなあ。てか、原子力兵器とかウランとか、そんなヒドイ妄想、よく思いつくもんだね。マジメにやってよ」
 
ベットウ「いや、ワカバヤシさん、これ元の『ウルトラマン』が、そんな話なんです」
 
ワカバヤシ「え? そうなの?」


 

  (続く
 

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この一撃で「オワ」 中座真vs大石直嗣 2011年 第69期C級2組順位戦

2023年04月15日 | 将棋・ポカ ウッカリ トン死

 「オワ」というのは、升田幸三九段がよく使った言葉である。

 序中盤であざやかな構想妙手を見せ、早々と勝敗の行方を決定してしまったときや、逆に信じられない大トン死を食らってしまったときなどに、

 

 「この将棋は、これにてオワ」

 

 私は世代的に升田幸三九段の現役時代は知らないが、多く書かれている升田論や、やはり升田将棋をリスペクトする先崎学九段のエッセイなどでも、よく見かける表現。

 すごい手を食らって「おわあ!」とおどろいた状態かと思っていたが、なにかで「終わり」の略だと聞いたこともあり、くわしいことはよくわからない。

 まあ「ビックリするような急転直下でおしまい」

 くらいの感覚でいいと思うが、不思議なことに語源を検索してもなにも出てこないので、今では死語になっているのかもしれない。

 

 1958年、第17期名人戦第7局。
 升田の指した△44銀が、本人も生涯ベストと自賛した名人防衛を決定づける好着想。
 意味は超難解だが、▲45歩と突かせてから△33銀と戻っておけば、先手の角、銀、桂がまったく使えない形となり後手が必勝(らしい)。
 まさに「この銀上りでオワ」。

 


 とはいえ、羽生善治九段をはじめ多くの棋士が

 

 「一度は指して見たかった」

 

 あこがれる升田幸三のパワーワードをこのまま埋もれさすのは惜しいので、今回はそんな「オワ」な一手を紹介したい。

 

  2011年、第69期C級2組順位戦

 中座真七段大石直嗣四段との一戦。

 ここまで中座が3勝、大石は2勝と、双方星が伸びない中の対戦で、いわゆる「の大一番」という対決。

 後手の大石が、当時流行していた一手損角換わりを選択。

 局面は序盤、中座が飛車先の歩を交換し、大石が△45歩と突いて、▲46にいたをバックさせたところ。

 

 まだ。なんということもない場面で、これからの将棋に見える。

 初心者の方は△33角と打つ手が気になるかもしれないが、▲28飛▲88ヒモがつくからなんでもない。

 ところが、この将棋はすでに後手が必勝。ここで必殺手があるのだ。

 

 

 

 

 △46歩▲同銀△48歩で「オワ」。

 なんとこのわずか3手で、先手はすでに指す手がない。

▲同金▲同玉が逃げるのも、そこで△33角と打てば、▲48にある駒がになって▲28飛としても△88角成と取られてしまう。

 

 



 この歩打ち自体は部分的には手筋だが、一回△46歩とワンクッション入るところが盲点になったか、中座はこの手が見えなかった。

 これで先手は、どうもがいてもをなんの代償もなくボロっと取られてしまう。

 序盤の駒組も終わってない段階で、これはヒドイ。

 私だったら、バカバカしくなって投げる。いや実際、中座だって他の棋戦なら投了しただろう。

 しかし、これは順位戦である。

 しかも、中座はここまでまだ3勝

 この期は順位がよく、また最終戦もあるため、すぐに降級点を食らうわけではない。

 それでも万にひとつ、こんな負けを食ったことが最悪の結果を生んでしまったら、泣くに泣けないではないか。

 以下、中座は▲48同金△33角に、歯を食いしばって▲27飛と引く。

 当然の△88角成▲77角と打って、△同馬▲同桂△88角と打たれて銀香損が確定。

 ▲78金に、△99角成

 

 

 

 すでに将棋は終わっているが、中座はその後、まったく勝ち味のない局面を99手まで指し続けた。

 自らのふがいなさへの憤りや、脱力感をグッと飲みこんで、最後まで折れずに戦った執念もすごい。

 ここから投了までの手順は、きびしいことを言えば棋譜としての意味価値はほとんどないが、だからこそ、その無念さが伝わってくる。

 この中座の悲壮なねばりこそ、まさに「順位戦の手」だが、そういえばこれも「オワ」と同様、最近ではあまり聞かなくなった言葉かもしれない。

 

 

 

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『シン・ウルトラマン』の実相寺アングルはもうエエとかいう話

2023年04月12日 | オタク・サブカル

 「ちょっとおまえら、オレに特撮の話をさせてくれよ!」


 
 先日、近所の焼き鳥屋で、竹原ピストルさんのような声をあげたのは、不肖この私でした。
 
 ことの発端は、特撮映画『シン・ウルトラマン』についてのこと。
 
 『シン仮面ライダー』も公開されて、大いに盛り上がっている庵野秀明監督の『シン』シリーズですが、なにかと「うるさ型」な特ヲタな方はいろいろと言いたいことがあるよう。 
 
 
 ということで、今回は以前のレディ・プレイヤー1』妄想編に続く、ゆかいなオタク話第2弾
 
 主に40代で、将棋界で言えば「安用寺孝功世代」が中心のメンツなので、いつものごとく、
 
 「若者は置いてけぼり」
 
 といったシロモノになっている、そっとじ物件。
  
 まずは登場人物。
 
 
 1.ベットウ君
 
 後輩。戦隊ヒーロー、アニメ、マンガ、プロレスが得意ジャンル。

 
 2.ワカバヤシ君

 元関東人。オタクではなく、映画、文学、哲学などにくわしいインテリ。
 
 
 3.カネダ先輩

 SF、ミステリ、映画、ゲームなどが専門。
 
 
 4.

 特撮、SF、ミステリ、映画あたりが専門。

 

 それでは、張り切ってどうぞ。
 
  
 
ワカバヤシ「なんか今日はシャロン君が、特撮の話をしたいって?」
 
ベットウ「はいはい、こないだようやっと『シン・ウルトラマン』観たそうで。それでしょ?」

「うん、評価が微妙やったから映画館はスルーしてたけど、アマゾンプライムに入ったから観たんよ」

カネダ「こん中で観た人、オレと他だれ?」

ベットウ「(手を上げながら)はい、一応、映画館で」

ワカバヤシ「ボクは観てません。怪獣とか、そんなに興味ないし」

カネダ「で、どうやった?」

「これが、結構楽しめましたよ」 
 
カネダ「そうなんや。オレも割と、な」 
 
ベットウ「へー意外。僕はもっと、ボロクソに言うかと思ってました」

「そりゃ、多少は言いたいことはあるよ。説明セリフ多すぎとか」

ベットウ「あるのは、あるんスね」

「《あえてやってる》言うたら、なんでもゆるされるわけちゃうぞとか、ウルトラマンが人間を好きになる理由って別にないやんとか」

カネダ「わかるわかる。科特隊が何してるんかよくわからんとか、相変わらず庵野は女の趣味が悪いなとか」

「この手の作品で実相寺アングルはもう禁止にしろとか」

カネダ「思わせぶりやのに、中身ないのはいつものことやとか」

「基本、オタクへの目配せも多すぎてウンザリやねん」

ワカバヤシ「どんどん出てくるじゃん」

「ダイジェスト版を継ぎはぎしたみたいで、ホンマにシナリオちゃんと練ってるのとか」

カネダ「ラストがご都合主義すぎとか」

「バディとか強調してたけど、特に機能してないやんとか、言いたいことはあるけど、そこそこ楽しめたんよ」

ワカバヤシ「そこまでまくしたてて、よくポジティブな結論にいきつけたね」

ベットウ「特撮ファンって、めんどくさい人種なんですよ」

「ツンデレやねん」

ベットウ「いや、どっちかいうたら、1日に100回くらい電話かけてくるメンヘラ彼女ですわ」

ワカバヤシ「基本的に、上からなんだね」

カネダ「この世界、全員が海原雄山やから」

「これはまあ、《イマイチやで》って、最初にハードルをうんと下げられてたってのは大きい」

ベットウ「あ、それ、いい観方っスね」

「これが、《なに? 令和に初代ウルトラマンが映画でよみがえる? しかも庵野秀明と樋口真嗣の『シン・ゴジラ』コンビ? 絶対に観に行かな!》」

カネダ「《今日この日から、あたらしい特撮の歴史がはじまる(ピシッ)》みたいなテンションで観てたら、全然ちがってと思うぞ」

ベットウてらさわホークさんとか、そんな感じやったらしいですけどね」

カネダ「それは災難や。あれはハズレって聞いといて、ヒマつぶしで気軽に観に行って、《言われてるほどはヒドくないやん》くらいがベストな鑑賞法」

「あとは、これ映画としての評価は60点くらいやねんけど、やっぱ怪獣がたくさん見れたのが、単純にうれしかったね」

カネダ「ゴメスとかも出てたしな」

最初の3分は、ホンマにゴキゲンでしたよ」

ベットウ「『パシフィック・リム』みたいな、冒頭から大サービス」

カネダ「あんな怪獣出てたら、もう日本なんか住まれへんけどな」

「だから、そこはええねんけど、ストーリーとか追うといろいろと言いたいことが出てきて……」

ベットウ「でも、それ言うたら『パシフィック・リム』かてスカスカやないですか」

カネダ「まあ、あれも偏差値でいうたら35くらい」

「オレが小4の時に書いた怪獣ドラマのシナリオみたいな。でも、あれはええのよ」

ベットウ「なんでですのん」

カネダ「うん、言いたいことはわかるよ」

「『パシフィック・リム』はアホでええのよ。ギレルモ、全然ゆるせる」

ワカバヤシ「でも、『シン・ウルトラマン』はダメなんだ」

「アカンねえ、なんでやろ。ギレルモはマジの【少年の心】で創ってるから、かわいいのかも」

カネダ「『シン・ウルトラマン』はオールドファン向けっぽいもんな。もう大人の俺らやから、そう思うだけかもわからんけど」

「その閉じた感じがイヤなんかなー。マンガ版の『20世紀少年』とかもそうやったけど」

ワカバヤシ「『20世紀少年』は好きだけど、言いたいことはわからなくも……」

「こっちはイマイチ共感しきれてないのに、なんかその人の思想とか美意識を語られてるときの気まずさというか……」

ベットウ「ちょっと帰りたいなーってなってる状態の、先輩の飲み会みたいな。でも、頭空っぽにして、怪獣だけ見たら楽しいですよ」

カネダ「【巨大長澤まさみ】も観れるしな」

「ねー、そういう個別のあれこれはいいんやけど……」

ベットウ「そもそも、シャロン先輩は庵野演出が合ってないという問題が」

「エヴァもテレビシリーズしか見てないしねえ」

カネダ「『パシフィック・リム』の底抜けはいいけど、『シン・ウルトラマン』のそれはアカン」

「アカン! でも、理由はよくわからん」

ベットウ「でも、悪口は言うと」

「悪口ちゃうねん。これは【愛】やから!」

カネダ「愛っていうたらなんでもゆるされると思うのは、『サイキック青年団』と桂南光のお家芸や」

ワカバヤシ「今なら、鬼越トマホーク」

ベットウ「やっぱ、悪口ですやん!」

 

続く

 
 

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幼年期の終り 里見香奈vs清水市代 2007年 倉敷藤花戦 挑戦者決定戦

2023年04月09日 | 女流棋士

 アベマの「女流ABEMAトーナメント2023」は大変おもしろかった。

 ということで、先日から伊藤沙恵女流三段中村真梨花女流三段など女流棋士の将棋を特集しているが、今回は里見香奈女流五冠

 それも、めずらしい大ポカについて見ていただきたい。

 

 2007年倉敷藤花戦挑戦者決定戦

 清水市代女流王将と、里見香奈女流初段の一戦。

 このときの里見はまだ10代で、前年のレディースオープントーナメントでは、まだ中学生ながら快進撃を見せ、決勝三番勝負に進出。

 矢内理絵子女流名人相手に初戦を勝利したときには、その強さと、セーラー服で戦う初々しさ、また「史上最年少優勝」の記録がかかっていたこともあいまって、

 

 「新スター誕生」

 

 との空気一色だったが、残る2戦では先輩に意地を見せられて準優勝に終わった。

 だが里見の強さは本物であって、翌年には女流王将戦挑戦者決定戦に進出。

 このときは清水市代女流王位に敗れてタイトル戦登場を逃すが、すぐさま倉敷藤花戦でも挑決に。

 相手が、またしても清水市代女流王将とくれば、里見からすれば願ってもない舞台であり、大いに気合も入ったろうが、なんとここではそれが大空回りを演じてしまう。

 戦型は里見のトレードマークともいえる中飛車に対して、清水はをくり出して押さえこみを図る。

 

 

 まだ序盤のなんてことない局面で、まあ△14歩とか△53銀とかで待って、▲25金なら△74飛で揺さぶっていけば、くらいが私レベルでも思い浮かぶところ。

 いや「出雲のイナズマ」はいきなり△56歩なんて考えるのかな? 角交換すれば△39角があるから意外と……。

 なんてアレコレ考えるところだが、次の手が目を疑う一着だった。

 

 

 

 

 

 △44角が、まさかという大ポカ。

 こんなん見たら、思わず「?」と身を乗り出しますわな。

 言うまでもなく、▲25金飛車がお亡くなりになっている。

 将棋の世界では相手から「ここに指せ」と命令されて指したような大悪手のことを「ココセ」というが、自ら飛車の退路を封鎖してしまい、まさにその典型ではないか。

 ▲25金には△同飛と切り飛ばして、▲同飛△48金と打てばを取れそうだが、そこで▲45歩と突くのがピッタリの切り返し。

 

 

 

 どこまでいっても、△44ヒドイ位置になっている。

 △33角と逃げたところで、▲46銀とかわして、このまで空振りさせられては大差になった。

 初の檜舞台を目前にしながら、こんな内容の将棋で敗れた里見は泣いた

 『千駄ヶ谷市場』でこの将棋をレポートした先崎学九段は、

 


 投了するや、里見は泣いた。さすがに涙がこぼれるまえに席を立ったものの、戻ってきた時の目は真っ赤だった。


 

 と書いているが、当時の写真だと里見がタオルのようなもので顔を覆っているシーンもあり、ウィキペディアにも感想戦ができないほど泣き崩れていたとあるから、そこは先崎流の「武士の情け」なのかもしれない。

 そんな里見は翌年、またも倉敷藤花戦で勝ち上がり、甲斐智美女流二段を破ってついに挑戦権を獲得。

 三番勝負でも、清水市代倉敷藤花を今度こそ倒し、見事初タイトルを獲得。

 輝かしい「里見時代」の第一歩を踏み出すことになるのだ。 

 

 (その他の将棋記事はこちらからどうぞ)

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「家賃督促の詩を詠います、ジョークだけどな!」とChatGPTは言った

2023年04月06日 | 時事ネタ

 ChatGPTの話題で、世間は持ちきりである。

 AIと会話するだけで、仕事生活趣味のサポートやアドバイスをいただけるというスーパーアイテム。

 私はここまで将棋関係のことをあれこれ調べて、その間違い……闇の組織に隠蔽された「真の将棋界」の情報を得たりしたが、やはり今の段階では使い方をあれこれ模索している人も多いよう。

 前回のようにプログラミングや、ゲームデザインなど専門職的な方向に使う人もいれば、私のようにふざけ……人生を彩り豊かにするなど様々な活用法がある。

 単純に会話を楽しむ人も多いようで、

 

 「明日、部活の大事な試合があるので、元気の出る言葉をください」

 「英語の勉強がしたいので、英会話のチャットをお願いします」

 

 などといったポジティブなものから、

 

 「萌え口調でお願いします」

 「語尾に『ぴょん!』をつけて」

 

 なんて遊んでいる人もいるが、これもまたなかなか楽しいだけでなく、ときには実用的でもある。

 たとえば先日、家賃の振り込みをし忘れて、管理人さんから催促の手紙が届いたことがあった。

 すぐに謝って入金したのだが、たいそう恥ずかしい思いをしてしまい、そのバツの悪さをなぐさめてもらおうとナンシーに、

 

 「この書面を詩的に書き直してください」

 

 そう依頼してみたところ、

 

 


 家賃督促の詩

 月々の音符がいつも陽に沈み あなたの家賃だけが今や響かない

 不協和音が部屋中に広がり 独りきりの寂しさを残している

 今、その調べを取り戻す時が来た

 払われぬ家賃の響きを今こそ奏でよ

 さもなければ、あなたの旋律はここで終わりを告げることとなる

 敬具


  

 「家賃、ちゃんと払ってもらわな困りまっせ」という文言も、こうして見ると感動的ですらある。

 この気持ちを味わうため、来月もぜひ滞納を……て、もちろんそんなことはしません。ウッカリです、ごめんネ。

 ばかばかしいミスを犯し最初はヘコんでいたが、これを読むとなんだか愉快な気分になって気がまぎれた。

 そこで友人たちに、「これはいいよ」とすすめてみたところ、彼ら彼女らも、様々なしんどい文章をポップに書き直すという試みをしてみたらしい。

 そこには遅刻してしかられたとか、忘れ物を怒られたとか、体調が悪いといったネガティブなことを、

 

 「サムライ口調で」

 「江戸落語調で」

 「プレイボーイ風に」

 

 などなどに書き直して楽しんでくれた。

 


 おお、〇〇よ。

 先日のプロジェクトにおいて、忘れ物を致し方あらずじゃな。

 今後は、しっかりと物事を確認し、重要なものは必ず持ち歩くよう心得ていただきたい。

 再びこのようなことがあるまいことを、忘れぬよう祈念するのみじゃのう。

 敬具、

 〇〇より


 

 なんだか、あんまし怒られている気がしなくなるから不思議だ。

 


 おいおい先週の会議でのお前の遅刻、俺たちを待たせることになったぜ。

 なんだ、遊びに夢中になって時間を見失ったか?

 それとも、ハニーとデートに出かけたついでにタイムマシンでも発明しちまったか?

 俺たちが待たされることで、誰かが飲み物をこぼしてしまって、Tシャツが汚れたんだぜ。

 それに、プールに入るのを諦めたやつもいたぜ。ま、全部ジョークだけどな!

 とにかく、今回は許してやる。しかし、次回はもう一回考えて行動しろよ。


 

 急にチャラい感じで、たしかにこれだとヘコむような感じにはならない。

 そんな中、タイジョウ先輩から来たものが、

 


 ヤッホー! 最近の私たちの関係ってちょっとムードがないと感じていたんだけど、もう限界かも!

 やっぱウチ、これ以上一緒にいても幸せになれない気がしてきちゃったのよね〜。

 だから、ちょっと実家に帰らせてもらうことにしたの!

 まあ、これは長い時間をかけてじっくり考えた結果だし、ウチらにとっては必要なことだと思うんだわ。

 そうすれば、お互いに気持ちを落ち着かせて改善できるって信じてるから!

 また会えたらいいね! バイ!


 

 先輩、話くらいは聞くんで、とりあえず一回連絡ください……。

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マリカ様が攻めてる 中村真梨花vs上田初美 2012年 女流名人戦A級リーグ

2023年04月03日 | 女流棋士

 アベマの「女流ABEMAトーナメント2023」は大変おもしろかった。

 団体戦というのは、以前の森内俊之九段近藤誠也七段のような大車輪の活躍を見せる人もいれば、に乗れないまま終わってしまう人もいて、そのあたりのアヤも勝敗にからんでくる。

 今大会で、なかなか爆発できなかったのが「チーム加藤」の中村真梨花女流三段

 手が震えて駒の持ち方が不器用に見えたところなどから、相当に緊張していることがうかがえた。

 私としては、ここで彼女の攻めの強さを期待していたもので、その名も「マリカ攻め

 腕力ある振り飛車に定評があり、あの森内俊之九段や、郷田真隆九段からも「期待している」と言われるほどの逸材。
 
 チャンスはありながら、タイトル獲得こそ逃しているものの、その臆することない将棋への姿勢と、研究熱心さから、もっと活躍していい棋士の一人だ。

 そんな彼女が得意とする「マリカ攻め」については、実例を見ていただくのが早いだろう。


 2012年女流名人戦A級リーグ

 上田初美女王と、中村真梨花女流二段の一戦。

 この期は上田も中村も星が伸びず、共に4勝で、残留が決まってないどころか、中村は負ければ、ほぼ即落ちという崖っぷち。

 タイトル保持者と、これからトップをねらおうかという若手がこれとは、少々さびしいが、ここで中村はそんな雰囲気を払拭する迫力を見せる。

 


 図は中村得意の振り飛車から、飛車交換になり、上田が自陣飛車を打って局面をおさめているところ。

 後手は飛車を持っているが、先手陣に打ちこみのスキがない。

 手がなさそうに見えるが、ここから中村がすごい突貫で先手陣を破壊してしまうのだ。

 

 

 

 


 まず△69角と打つのが、「マリカ攻め」の序章。

 これがボンヤリした手に見えて、おそろしいねらいを内包している。

 なんか工夫すれば、うまく取れそうだけどなーと、とりあえず△14角成を防いで▲25歩とでもすると、すでに術中にハマっている。

 『将棋世界』でこの将棋を取り上げた青野照市九段によると、すかさず△78角成と切って、▲同玉△26歩で後手有利に。

 


 放っておけば△27金で飛車が死ぬが、▲同飛には△35金

 ▲38金と受けても、△27金とカチこんで、▲同金△同歩成▲同飛△58飛王手銀取りで突破される。

 そこで上田は、飛車道を通したまま▲16歩と突く。

 

 △14角成には▲15歩から圧迫していく意図だが、すでに臨戦態勢の中村真梨花は、そんな場所は見ていないのだった。

 

 

 

 


 △95歩と、ここから手をつけるのがマリカ流。

 普通はどう見ても、居飛車側から▲95歩と端攻めするのがセオリーだが、そこを掟破りの逆パンチ。

 ともかくも▲同歩と取るが、すかさず△98歩とタタいて、▲同香△78角成▲同玉△99金(!)。

 


 すごいところから手を作るもので、こんな強引な突破がプロに通じるのかと言えば、これが案外とうるさいというのだから、中村の腕力はすさまじい。

 平凡な▲88玉は、△98金▲同玉△78飛で、△96香がきびしく後手指せる。

 ▲97香と逃げても、△98金と引いて、次に△99飛で受けにくい。

 これでペースをつかんだ中村は、最後の寄せに入る。

 

 

 


 私ならなにも考えずに△69飛と打ち、▲78玉▲79金△49飛成としてしまいたくなるが、それは▲59金で様子がおかしい。

 

 

 

 

 こういう、勝てそうなところで、自然な手だと案外寄らないというのはよくあることで、才能が試されるともいえるが、中村はここから、うまく仕上げてしまう。

 

 

 

 △68飛、と打つのが決め手。

 なんだか気の利かない手に見えるが、これが青野も、

 


 「打つ場所を間違えたか、手がすべったのではないかと思ったのだが、これが妙手だった」



 
 
 先手が▲78金と受ければ、そこで△69飛成とし、▲79金打2枚を使わせれば、そこで悠々△49竜と取ればいい。

 また、▲59金とこちらから受けるのも、△78角▲79玉△67角成とすれば、△62が働いて寄る。

 

 

 

 そこで上田は▲79金と受けるが△98角が、すばらしい切れ味。

 

 

 


 ▲同玉は、△95香▲89玉△77桂不成でピッタリ詰み

 本譜の▲99玉にも、△95香で受けなし。

 いかがであろうか、この「マリカ攻め」。

 そりゃ、こんなすごい手をバシバシ見せられたら、そりゃ森内や郷田というトップ棋士も目を付けますわ。

 こんなに強いのに、中村にまだタイトルがないというのが、不思議で仕方がない。

 2012年の第34期女流王将戦では、里見香奈相手に先勝しながら、逆転されてしまったのは残念だった。

 これだけの魅力的な攻めは、もっともっと語られてほしいので、ぜひとも中村女流三段には、もう一度タイトル戦の大舞台に登場してほしいものだ。

 


(女流棋士の将棋についてはこちら

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