アラビア語は激ムズである。
なにげなく手をつけてみて、いきなりアラビア文字が暗記できないという、「先頭打者ホームラン」を喰らってしまった私。
将棋で言えば、
「駒の動きがおぼえられなくて挫折」
みたいなもので、情けないことこのうえないが、年齢を重ねると記憶力が落ちるのでこうなるのだ(私だけ?)。
これを頭にぶっこまないと、一歩も先へ進めません。
こうして挫折を味わったとき、われわれがやるべきことは、気合を入れ直すことでもなく、再び立ち上がることでもない。
同じ苦戦&挫折組のグチや言い訳を聞くことである。
だからお前はダメなんだという声は春風のようにスルーし、
「アラビア語 むずかしい」
「アラビア語 挫折」
「アラビア語 もうわけがわからなくてトッピンパラリのプー」
などで検索してみると、やはり苦戦している人は多いよう。
そこを、うまくまとめてくれているのが元奨励会三段で、大阪大学でアラビア語を専攻していたという石川泰さん。
石川さんによると、アラビア語のむずかしいところは4つあって、
1・動詞の活用が多すぎる。
動詞の活用は言語学習の基本のキ。
私も学生時代には、
「イッヒビン、ドゥービスト、エアイスト……」
なんて呪文のように唱えたものだけど、これが複雑だったり不規則(つまりひたすら丸暗記が必要)だとゼーゼー言うことになる。
それがアラビア語の場合は、同じく活用が多いフランス語が英語の3倍むずかしいとしたら(石川さんはフランス語も話せる)、さらにその10倍(!)大変だと。
英語の30倍。
英語が下手で悩んでいる日本人には、なかなかに絶望的な数字である。
もちろん、これは活用の「数」だけの話でそれだけで「アラビア語はむずかしい」とは言えないだろうが、初心者をビビらせるには充分であろう。
2・母音が書かれていない。
アラビア語というのは子音だけで形成されるタイプの言語で、そこがおもしろいところでもある。
だが、それだと一見しただけでは意味がわかりにくく、たとえば「MJ」と書かれていたら、
「マジ」
かもしれないし、
「マイケル・ジャクソン」
かもしれないし、もっと別の「メシの時間」「魔法の呪文」「迷子のじいさん」とかかもしれない。
そんなもん、どうやって読むのかと言えば、まあ文脈とかでわかるわけで、
「それ、MJで言ってるの?」
「MJの『スリラー』は名曲だよね」
「ゆびゆびたてたら、MJ」
とかなれば、なんとなく推測できて、
「そろそろ12時だからか、まにょまにょ時限爆弾か」
みたいな誤読は減るということだ。
ただ、それにしたって文脈を読むなど初心者には至難で、それに関連して、
3・辞書を引けない。
外国語学習と辞書は切っても切り離せないが、これを封じられるのはしんどい。
つまりは、「MJ」を調べようとしても、それが「マジ」か「マイケル・ジャクソン」か「マッサージ嬢」かわからないから、どの角度から辞書を開けばいいのか見当もつかない。
外国語をやっていて、単語や語法を辞書で調べられないというのは致命的なハンディ。
こういった諸々のことを見てみると、アラビア語と言うが言語が一筋縄ではいかないことが、わかっていただけるだろう。