「プラモがボロボロに壊れる設定は、ヒドかったよなあ」
先日、LINEにそんなメッセージを送ってきたのは、友人テンマ君であった。
プラモが壊れる設定とは、前回まで読んでいただいた方にはわかっていただけるであろう(→こちらなど)、『プラモ狂四郎』のおはなし。
プラモシミュレーションなる、自作のプラモをバーチャル空間で戦わせるという、今でいうEスポーツのはしりというか、そういうゲーム。
プラモシミュレーションを3年(!)で開発した、模型ショップ「クラフトマン」の店長、倉田太氏。
そんな、モデラーやメカ好き、また格闘ゲームマニアなども泣いて喜びそうな機械が登場するわけだが、これにちょっと変な機能がついているのである。
それが、
「シミュレーションの中で受けたのと同じように、プラモデルもダメージを受ける」
劇中で、ガンダムの右腕がザクのバズーカで吹っ飛ばされれば、その通りにプラモも手が取れている。
アッガイがビームサーベルで手首を切られたら、プラモのそれも一刀両断。
その他、マゼラアタックがティーガー戦車に木っ端みじんにされたり、コアブースターに破壊されたリックドムとブラウ・ブロがバラバラになったりと、勝っても負けても、容赦なくプラモはぶっ壊れるのだ。
この丁寧に、マーキングまでほどこされたザクが……。
こうなります。
遊園地のイベントで飾られるほどのガンキャノンが……。
こんな風にボッコボコに。
なんでも、プラモをセットしたカプセルに装備されたレーザー光線や、マジックハンドで破壊活動を行うとか。
マスターによれば、
ということらしいが、なんでわざわざ、そこまで手間かけて、プラモを壊すのか意味不明である。
せっかく丹精込めて作った作品を、こんなところでスクラップにされては、やる気も失せるというものだ。
なぜ、「マスター」こと倉田太氏は、こんなヤバい機能を搭載させたのか。
『狂四郎』を愛読していた、当時の子供たちはアレコレ頭をひねったわけだが、まず考えられるのが、
「マスターのゆがんだ性的指向」
プラモが壊れれば、子供は悲しいものである。
マンガに出てくるモデラーたちは、それでもガッツで立ち上がり、なんなら燃えないゴミ同然になったキットを1から修理して、再戦を挑んだりもするが、まあ現実は、なかなかそうもいくまい。
まあ、ふつうは泣きます。ワンワン泣きます。
そら、必死でお小遣いをためて、あるいは親に泣きついて、なんとか買ってもらったプラモ。
それも、当時のガンプラブームは一種異常で、「ガンダム」「Gアーマー」「60分の1ドム」のような人気キットなど手に入るはずもなく、買えても「ゾック」みたいな不人気作。
または、
「ザク強行偵察型」
みたいなマイナーメカと、抱き合わせで金を払わされたりする(当時のおもちゃ屋は全員強制労働キャンプ送りでいいと思う)。
そこまでして手に入れた血のキットを、組み立てて、色塗って、パーティングラインも消して、なんなら細かい改造までして、シミュレーションでドッカンバラバラ。
ようそんな、ヒドイことするな! 鬼か、アンタらは!
となれば、答えはひとつであり、倉田氏はそれを「楽しんでいる」
少年好きでSの氏は、子供が無残に愛機を破壊され、身も世もないと泣き崩れる姿に、性的な興奮を感じているのだ。
たしかに、そう考えれば、無駄な作業を増やすことになる破壊用の「レーザー光線」や「マジックハンド」を付与する、高いモチベーションになるだろう。
その視点で見れば、上図の、
「土曜日の夕方、ここにおいでよ」
というセリフも、なにか違ったニュアンスにも取れるではないか。
プラモシミュレーション開発の裏には、こんなねらいがあった。
「クラフトマン」店主の倉田太、要注意人物と言えよう。
(続く)