山崎隆之八段が棋聖戦の挑戦者になった。
たぶん本人も自覚していて(絶対インタビューとかで自虐してるでしょう)、私も山ちゃんのファンだからあえて言っちゃいますが、おどろいた。
まさか、山崎隆之が挑戦者になるとは思わなんだ! めでたいぞ。
めでたいことは、めでたいが、ここにひとつ言っておきたいこともあるのだ。
こんな程度のことじゃあ、オレらは全然満足なんて、できてないやもん!(←何弁でしゃべってるのか)
山崎隆之といえば奨励会時代から、谷川浩司、羽生善治に続くとされていた逸材。
その通り15歳で三段になり「中学生棋士」も期待されたほどで、そこでややもたつくも17歳で四段デビュー。
そこから高勝率を上げ……と語りだす前に、今回ちょっと調べてみておもしろいのが、三段時代の山崎の成績。
これがねえ、なんかすごく変なの。
なもんで本編の前に、いきなりちょっと脱線してしまうが、まず初参加である1995年の第18回リーグ戦。
もちろん、こっちは1期抜けの「中学生棋士」を期待するが、なんと開幕からいきなり7連敗(!)。
そこから2勝1敗と立て直すも、その後が3連敗。
降級点もあるかもというピンチだったが、そこから5連勝して、かろうじてセーフ。
結果は7勝11敗。
続く第19回三段リーグでは、一転3連勝スタート。
これは走るのかと思いきや、そこから4連敗。
なんてこったいと頭をかかえると、そこから8連勝で一気にトップグループをつかまえてしまう。
「来たで山崎!」と身を乗り出したところ、なんとそこから3連敗。
今回は11勝7敗でフィニッシュ。
この期のリーグは大荒れで、トップの近藤正和三段こそ独走で早々と四段昇段を決めたものの、そこからがエグかった。
残すは1枠で、最終日に2局を残して昇段の目が合ったのが5敗の山崎。
まず、ここが自力。
以下、上位6敗の野月浩貴三段、木村一基三段、山本真也三段、伊奈祐介三段くらいまでがキャンセル待ち。
現実的には、木村までが圏内かなという予想だが、ラス前で山崎が敗れ、野月、木村、山本、伊奈は勝利。
自力はここで野月に移ったが、前期に続いて(トップからの最後3連敗で昇段を逃した)大チャンスを生かせず敗退。
次に、針が止まったのが木村。
17歳で三段に上がり、毎年好成績を上げながら、すでに23歳になっている。
苦労人に大きな幸運が舞い込むかと思いきや、なんと木村も敗れてしまった。
運命の羅針盤は目まぐるしく回転し、今度は山本の名前が点滅するも、夕方7時に持将棋(!)が成立。
キャンセル待ち勢からすれば「勘弁してくれ」というところだろうが、こういうこともあるのだ。
指し直し局は山本が敗れ、すでに伊奈、山崎も最終戦に敗れていたため、上がったのは、自力昇段の一番を落としたはずの野月浩貴三段。
11勝7敗の成績で四段という幸運に恵まれた。
こうなると、ヒドイのは山崎の立場。
なんと、最後3連敗だった山崎は結果的に、ひとつでも勝っていれば昇段だったのだ!
当時の記事によれば山崎は、最終日の初戦をポカで落とし、「ムリか……」とガックリきてしまい、最終戦では力を出せなかったと。
結果論的には悔いが残るところで、ここで上がっていれば中学生でこそないが「15歳棋士」として話題になっていたろう。
続く第20回でも、巻き返しを図るはずが開幕4連敗。
またかというところだが、そこから4連勝。そこから4連敗。
1勝1敗の後、3連勝で9勝9敗の指し分けフィニッシュ。
もうおわかりだろうが、とにかく星がかたよっているというか、白黒のほとんどが連勝か連敗なのだ。
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極端すぎや!
まあ、何勝何敗か計算しやすいとは言えるけど、安定感に欠けまくり。
連勝と連敗がハッキリする人は「メンタル」が弱いせいだという、きびしい考察もあったりする。
まあ、山ちゃんの場合はその人間臭さが魅力であるし、その後は安定感もグッと増して1年後に昇段。
それは良かったけど、こういったムラの部分は、ファンのもどかしさを誘発する一因かもしれないとか思ったりしたものでした。
ただ、逆に言えばこの「爆発力」を今、発揮させれば、スゴイことが起こせるやもしれぬ。
歴史が変わる大勝負になるはずの叡王戦が、思わぬ拙戦で盛り上がりに欠けたため、
「八冠王の一角を崩す」
という「神殺し」の偉業はいったんお預けとなった。
これは山ちゃん(渡辺明九段にも)にキャリア「大ボーナスポイント」のチャンスもめぐってきたが、どうでしょう。
展開的にはやっぱ伊藤匠七段が、やり遂げるのがドラマだけどねえ。
最終局に入ったのは残念だけど、もし勝つのなら最高の展開でもある。
などなど、ますます盛り上がりを見せる八冠狂騒曲。
挑戦者諸君、みんなガンバレ!
(やはり大荒れだった第18回三段リーグはこちら)
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