ストリート・キッズ 山崎隆之vs中川大輔 2009年 第57期王座戦 挑戦者決定戦

2024年06月07日 | 将棋・シリーズもの 中編 長編

 棋聖戦第1局山崎隆之完敗だった。

 無敵を誇る藤井聡太八冠王の一角をだれがくずすかに注目が集まる中、棋聖戦では山崎隆之八段が名乗りをあげた。
 
 伊藤匠七段叡王戦で奮闘するなど、ここからは若手棋士が主役を張るかと思いきや、ここでベテランの復活。
 
 うむ、やはり対戦相手は多様なほうがおもしろいし、なにより私のような関西のファンは、この山ちゃんの躍進に大興奮
 
 よっしゃ、ここは盛り上げるぞと今回も山崎隆之特集。
 
 初戦はやられたが、まだまだ、これからやで!

 ということで、前回は、山ちゃんの三段時代の偏りすぎた成績を紹介したが、今日はプロデビュー後の活躍について。

 難関リーグを5期こそかかったものの卒業し、

 

 「あの大器がついに」

 

 鳴り物入りでのデビューを果たした山崎隆之四段。

 事実、プロになってから山崎は各棋戦で高勝率を上げ、順位戦ではC2こそ6期も足踏みしたものの、C1B22期で順調にクリアしB級1組へ。

 トーナメント戦でも、新人王戦2度優勝(相手は北浜健介六段佐藤紳哉五段)。

 早指し新鋭戦でも、北浜健介六段を破って優勝を飾る。
 
 また、NHK杯では羽生善治名人を破って全棋士参加のビッグトーナメントを制覇し、こちらは敗れたとはいえ(相手はまたも羽生善治)朝日オープンでも決勝に進出。

 そんじょそこらの新人とは、モノがちがうことを見せつけていった。

 ただ正直、見ている方としては、ちょっと物足りないところはあり、それがタイトル戦になかなか出てくれなかったこと。
 
 当時は30年近く続くことになる「羽生世代独裁のただなかだから、そう簡単ではないわけだが、そんな中チャンスがやってきたのが2009年
 
 第57期王座戦で、挑戦者決定戦まで勝ち上がってきたのだ。
 
 決勝で待ち受けるのは、こちらものタイトル戦登場を目指す中川大輔七段
 
 どちらもA級タイトルを張っていてもおかしくない実力なのに、なかなかそのを越えられないというところに共通点があったが、特に山崎には期するものがあったそう。
 
 というのも、このころの中川は理事職に就いており、その「二刀流」で多忙な日々を送っていた。

 会長時代の佐藤康光九段が、研究できるのが「本番の対局だけ」とその多忙さを語っていたが(てか、なんで現役棋士に会長や理事をやらせるんだ?)、中川もまた同じような境遇。

 山崎からすれば、
 
 


 「将棋に専念していられる自分が、理事の仕事に追われている中川先生に負けたら、ふだんなにをやっているのかと、なってしまう」



 
 
 というプライドもあって、相当に気合が入っていたらしいのだ。
 
 そんな2人の戦いは、期待通りの大熱戦になる。
 
 戦型は先手になった山崎が相掛かりから、得意の▲36銀型を選択。
 
 
 
 
 


 図はその銀を棒銀として、ずいっとくり出したところだが、次の手が中川らしいと言われた強い手だった。

 

 

 


 
 

 

 

 △33桂と跳ねるのが、「中川流」の一着。
 
 角道二重に止める形になってしまい、ふつうは筋悪としたものだが、こういうゆがんだ形を苦にしないのが中川将棋だ。
 
 
 
 
 
 

 少し進んで△14歩の局面で、後手のねらいがわかる。
 
 桂跳ねで使えない角は、△13角とこっちから使う。
 
 また△54金と、守りの金を中央にくり出して行くのも、これまたいかにも中川好みの一着。

 空手マスターであり、「登山研」で山も登るという体力派の男に、こうも振りかぶられると相当な圧力である。

 

 

 

 

 

かつて『将棋世界』に掲載された、私の大好きな1枚。
あまりのステキさに、当時作っていた文芸同人誌の表紙に使わせてもらったもの。
友人にも大ウケで、一時期仲間内でこの画像のアイコラや「写真で一言」など「中川先生大喜利」が大流行した。


 
 もちろん、山崎だって負けてない。
 
 銀の速攻は封じられたようだが、それはあくまで「見せ球」。
 
 むしろ、それで相手に悪形を強いることが、ねらいだったりする。

 あとはを転進させ中央で使っていく。このゴチャゴチャした「屈伸戦法」こそが、山崎の持ち味でもあるのだ。

 
 (続く
 
 
 

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