来月の医師会講演会は、肝性浮腫に対するサムスカの治療がテーマの予定だ。入院中のC型肝硬変の80歳代女性でサムスカを使っている。ただ、総合病院の肝臓専門医が使い始めて、そのまま継続になっていただけで、自分で処方を開始したわけではない。幸いに難治性の肝性浮腫の患者さんはほかにいないので、使用例はこの1症例だけだった。数年前に、アルコール性肝硬変の60歳代男性が腹水のコントロールがつかず、結局肝不全で死亡した。一時禁酒して軽快していたが、再度飲み始めて、はち切れそうな腹を抱えて再入院してきた。通常の利尿剤には反応しなかった。その時サムスカがあれば、使っていただろう。
うっ血性心不全では、昨日転院してきた慢性閉塞性肺疾患の79歳男性がサムスカを内服していた。右心不全で浮腫が進行して危険な状態になったが、サムスカで著明に改善したと紹介状に記載されていた。今日は肺癌で入院している80歳代男性に使用を開始した。もともと心房細動・心不全があり、肺癌の進行とともに、低ナトリウム血症と浮腫が続いていた。利尿剤の効果はあまりなかった。純粋な?心不全ではない使用例ということになる。
循環器科でもサムスカに使用は入院で慎重に使い始めていたが、最近は慣れたようだ。非代償性肝硬変の浮腫・腹水はあまり診たくないが、治療の選択肢が増えたのはありがたい。消化器科病棟に肝炎・肝硬変の患者さんがゴロゴロ入院していた研修医のころと比べれば、夢の薬といっていい。