昨日はAST(抗菌薬適正使用支援チーム)の検討で63歳男性のことが話題に出た。といっても抗菌薬使用の問題ではなく、細菌検査室の技師さんから、喀痰塗抹標本で肺炎球菌(グラム陽性双球菌)が単独で多数出ていたという内容だった。
名前に見覚えがあった。数年前に気管支喘息発作で数回時間外受診した患者さんだった。当時は内科医院に通院していたが、現在は当院の呼吸器外来(大学病院からの出張医師担当)に来ている。通院が不規則で発作時だけ受診するような方だったので、きちんと通院しているのはいいことだ。
喀痰培養を提出したのは外科医で、外科にも通院していたのだった。どうしたのかとカルテを確認すると、昨年倦怠感で救急外来を受診して、甲状腺機能亢進症と判明した。担当した外科医(今年4月に他院へ転勤)は甲状腺外科も診ているので、そのまま主治医となって入院にしていた。本来は甲状腺腫瘍の治療が専門だが、バセドウ病や橋本病も外科の甲状腺外来で診ている。
甲状腺自己抗体検査では、抗TSH受容体抗体は陰性で、抗サイログロブリン抗体と抗TPO抗体が陽性で、橋本病(慢性甲状腺炎)だった。甲状腺エコーではびまん性甲状腺腫。炎症反応が上昇している(白血球数増加、CRP上昇)。甲状腺の疼痛は訴えていない。
橋本病の急性増悪だった。治療は最初にメルカゾールが処方されたが、抗体検査の結果をみて中止になった。ステロイドをプレドニン20mg/日から開始して症状・検査結果は改善している。現在は甲状腺機能低下症でチラーヂンSが処方されている。これは無痛性甲状腺炎と同じことだと思うが、教科書には別々に記載されている。
肺炎は右肺に軽度の陰影があり、炎症反応の上昇も軽度だった。抗菌薬はアベロックスが処方されて、呼吸器科外来を受診予約になっていた。検査結果が全部わかっているので、「パセトシン(ABPC)1500mg分3くらいでいいんじゃない」とは思うが、後からは何とでも言えるから。