なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

前立腺肥大症の治療

2023年04月07日 | Weblog

 「ねころんで読める排尿障害」高橋悟著(メディカ出版)は、排尿障害をわかりやすく解説している。前立腺肥大症の治療をまとめた。泌尿器科医の処方の考え方がよくわかる。

ねころんで読める排尿障害: 下部尿路機能障害のやさしい入門書

 

 前立腺肥大症の治療

 α1遮断薬PDE5阻害薬5α還元酵素阻害薬が推奨グレードA。

 

1. α1遮断薬

 第一選択薬はα1遮断薬。交感神経のα受容体にはα1受容体・α2受容体があり、α1受容体にはα1A・α1B・α1Dという3つのサブタイプがある。前立腺に多く分布しているのはα1Aとα1Dで、α1Bは血管に多く分布している(α遮断薬で降圧)。

 前立腺肥大症用のα1遮断薬は、タムスロシン(ハルナール)、ナフトピジル(フリバス)、シロドシン(ユリーフ)の3種類。

 タムスロシン(ハルナール) α1Aとα1Dに対して親和性が高く、α1Bへの親和性は抑えてある。血圧があまり下がらないため、高齢者も安心して使用できる。

 ナフトピジル(フリバス) α1Dの選択性が高い。α1D受容体は尿道と膀胱にも分布。膀胱にあるα1D受容体を遮断することで膀胱の過剰な収縮を抑える=過活動性の膀胱にも効果がある。

 シロドシン(ユリーフ) α1Aの選択性を特に高めた薬。尿の出が悪くて困っている人、例えば尿閉になってしまった人や管を入れて出したことがあるような人に対して大きな効果。尿閉の解除率や残尿の減少率は3種類の中で一番

 α1遮断薬で7~8割の人は排尿がスムーズになる。頻尿も少し和らぐが、半分くらいの人は頻尿が残る。前立腺肥大症では約半数が過活動性膀胱を合併している。それに対してはβ3作動薬を併用する。(あるいは排尿障害を確認しながら抗コリン薬を併用)

 副作用のひとつは血圧低下。血管のα1B受容体に影響。血管拡張から血圧低下する。立ちくらみ、めまい、起立性低血圧、日中の眠気など。

 もうひとつの副作用は射精障害。α1遮断薬は前立腺そのものの平滑筋も緩めるため、精液が前立腺の中から尿道に出てくる射出がなくなる。射精障害の程度はシロドシン>タムスロシン>ナフトピジル。

 

2. PDE5阻害薬

 PDE5阻害薬はNOによる平滑筋の弛緩作用を増強する。(PDE:phosphodiesterase type 5 inhibitor)PDE5阻害薬は、陰茎の海綿体を充血させて勃起させる。シルデナフィル(バイアグラ)、バルデナフィル(レビトラ)、タダラフィル(シアリス)がある。このうちタダラフィルは半減期17.5時間で1~2日効き、前立腺肥大症の治療に用いられる。

 タダラフィル(ザルティア) 前立腺肥大症の症状や頻尿の症状もよくなる、膀胱や尿道の血流がよくなり機能がある程度回復する。タダラフィルはα1遮断薬と少なくとも同等の効果がある。前立腺肥大症の第一選択射精障害がない。(EDにも効果。性的にまだアクティブな人で選択。)

 

3. 5α還元酵素阻害薬

 前立腺が30~40ml以上の大きな前立腺肥大症が対象。5α還元酵素阻害薬は、男性ホルモンのテストステロンが活性の高いジヒドロテストステロンへの変換を抑える。

 5α阻害薬を半年以上使用すると、前立腺の体積が平均30%小さくなる。前立腺肥大症の程度大きくて、排尿障害が強い人には、α1遮断薬やPDE5阻害薬と併用する。

 α1遮断薬+5α還元酵素阻害薬は、α1遮断薬だけ、5α還元酵素阻害薬だけに比べて、尿閉または手術が必要になった患者数が3分の1に。

 副作用 5α還元酵素阻害薬は男性ホルモンの働きを抑え、性欲低下・ED・射出障害などになる。5α還元酵素阻害薬にPDE5阻害薬を併用するとその分をカバーしてくれる。比較的若く、性生活がまだある人には、PDE5阻害薬+5α還元酵素阻害薬。性機能は問わない、尿閉になりたくない、手術したくない人には、α1遮断薬+5α還元酵素阻害薬。

 デュタステリド(アボルブ) 若年型男性型脱毛症の治療薬に5α還元酵素阻害薬が使用される。そのうちのデュタステリ度は前立腺肥大症の治療薬として使用される。(デュタステリドは、前立腺肥大症での商品名はアボルブ、男性脱毛症での商品名はザガーロ)髪の毛が生えてくるといううれしい副作用?がある。

 

 もともと用いられてきた漢方薬や生薬として 八味地黄丸、エビプロスタット、セルニルトン、ノコギリヤシ(日本では保険承認なし)などがある。ずっと以前からセルニルトンが処方されている高齢者が1名いるが、今後これらの処方されることはもうないだろう。

 

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