高血圧症で腎臓内科の外来に通院している68歳男性は、2か月で11㎏の体重減少があった。さらに1月から少しずつ貧血を呈していた。もともとHb14~15g//dLだったが、1月から漸減して、4月にはHb11.8g/dL(MCV90.6→82.7と小球性側に変化)だった。
貧血以外の血液検査や尿検査は異常を認めなかった。担当医は悪性腫瘍を疑って、胸腹部造影CTを行ったが、腫瘍は指摘できなかった。
さらに上部・下部の内視鏡検査を行うため、消化器科の外来に紹介として予約をとった。(担当は大学病院から来てもらっている先生)
消化器科を受診した日には、CTの放射線科読影レポートが出ていた。検査目的である消化管悪性腫瘍は指摘できないことの他に、「びまん性甲状腺腫」の記載があった。消化器科医が甲状腺機能検査も提出すると、甲状腺機能亢進症だった(TSH<0.01、FT3 15.75、FT4 >5.00)。
内分泌に詳しい先生の外来に回されて、甲状腺のマーカーが提出されて、機能亢進症の治療が開始された。
消化管悪性腫瘍の有無を気にかけてのCTオーダーだったので、自分で見た時はそれ以外は抜けてしまったのだろう。放射線科の読影レポートは遠隔診断なので、数日遅れて出る。さすがに放射線科医は、検査目的以外のところも、撮影された範囲は全部確認するのだった。
この年齢の男性だと甲状腺機能亢進症は想起しにくいかもしれない。この場合(甲状腺機能亢進症)の体重減少は、「食欲旺盛(少なくとも普通)なのに代謝亢進で体重が減少する」、ということになる。