服部正也氏著
昭和47年(1972)6月25日初版
題名のとおり、IMFの要請により日銀からルワンダ中央銀行総裁に着任され、6年間働かれた著者の体験記。
経済のことはさっぱり理解できなかった。平価切下げにともなって連鎖的に発生する諸問題、様々な変動を予測し策を打っておられるが、数字に弱いので全然意味が分からない。
しかし、日本男児として、旧植民地支配者の白人と現地アフリカ人の間にたって、公平無私の精神で赴任国ルワンダのために働かれる姿は同じ日本人として誇らしい。
おそらくものすごく優秀な方で、だからこそ出来たのだと思うが、知力・胆力をもって弱小とはいえ一国の経済を立て直していく様は痛快である。
ふと、筒井康隆の「旅のラゴス」という小説を思い出した。SFで文明が衰退した世界で先人の文明の記録を発掘した主人公が、その知識を活用して世界を立てなおそうとする、文化的な英雄譚である。
ルワンダに赴任されたのが、」1965年、大戦が終わって20年。著者は戦時中ラバウルにいたと書いておられるが、ヨーロッパ人やアメリカ人とわだかまりなく卑屈になることもなく堂々と交渉し、向こうもそれに対して、見下したり敵意をもって対してはこなかったようで、意外な感じがした。
むしろ、IMF関係者というサークルの中の仲間意識みたいなものがあって、お互い分かり合っている、ような描写があった。
旧植民地の問題点として、優秀な子弟が少年時代から外国人の立てた寄宿制の学校に囲い込まれ、自国の現実から隔離され、外国の大学に留学して勉強してきた原理や技術を自国に適用するが、なんら自国に対する身についた知識がないため、発展に寄与することがない、と書いておられる。
これは過去から現在の我が国にもあてはまるのではないか。
外国ではこうです、と向こうのやり方を覚えて帰ってきた人たちがテレビや雑誌であれこれいってるが、いつも眉につばをつけたくなるのである。