図書館で借りた本。
粗筋というか設定は知っていた。
とある貧しい海辺の集落では嵐の夜、船を難破させて積み荷を自分たちの物にするために、浜辺で火を灯して暗礁へと船を呼び寄せる風習があった。しかし、ある時彼らは思いもよらぬ事態におちいったのである、みたいな話で、悪い風習に染まった集落の人々の悪行と、それがあばかれ罰せられるところが描かれているのだろうと想像していた。
しかし、ちょっと違った。
誰も悪い人がいない。
主人公の少年はもちろん、その母親も、周りの漁師も、村長も、相談役も誰も悪くない。
あまりにも住んでいる環境が厳しすぎて、あまりにも貧しいため、ただ日々生き抜くだけで精一杯で、年に一度あるかないかの「お船様」のおかげで細々とかろうじて生きながらえている村なのである。
だから村人は破船の乗組員を容赦なく皆殺しにするが、その略奪対象を「お船様」と呼ぶ。
そのあと、彼らが災厄に襲い掛かられてからは案外淡々としていて、やや、尻切れトンボのような気がした。
あと、新潮文庫のカバーが小野具定さんという方の絵だが、中々良いと思った。
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