ダイニング・ウィズ・ワイン そむりえ亭

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 樋口誠

シノニムの不思議

2018年07月01日 02時21分41秒 | ワインの事
葡萄品種が地方や国によって呼び名が違うことは多くの方がご存知です。

異呼称=シノニムと言います。


魚でも植物でも、そういうことはあることですから珍しいことではありませんね。


「あ、この品種は初めてだ」と思って飲んでも、他の産地での名前を聞くと「そういえば似ている」となったりします。

多くのシノニムは基になる品種のニュアンスを割と簡単に見つけられるもの。



しかし「え、それとこれが同じ品種」というのもあります。


例えばジュラ地方で有名なサヴァニャン。

「ヴァンジョーヌ」=黄色ワインということで知られていますが、それは熟成中のワインに産膜酵母と呼ばれるカビがワインの表面を覆って何年も置かれるもので、ドライシェリーの様な特殊な香りを持ちます。

ではサヴァニャンにはシノニムがあるか?ということですが「ナチュール」と言われることが知られています。

葡萄そのものの香りは強い訳でなく、造り方によって=後天的に付与される薫りに特徴がある、と言って良いのではないでしょうか?

しかし、このサヴァニャンには3つの亜種?があるようです。

一つは上記のワインを造る白(黄色が勝った葡萄)、一つは少し色づいた=ピンクに近い色のもの(グリ系)、そしてもう一つがピンクがかったもののうち香りが強いもの。

その最後の香りの強いものが実はゲヴルツトラミネールのことを指しているんですね。

「トラミナー系統」と言われています。


昔、シノニムを覚える時に「ゲヴルツトラミネールのシノニムはサヴァニャンロゼ」と覚えたものです。

フランスでは「ジュラの葡萄」といい、「トラミナー」や「トラミネール」の名前のもとになったイタリアの南チロルのトラミンでは「おらが葡萄」といっている、というのは良くある話です。

しかし、ゲヴルツトラミネールを飲んで通常のサヴァニャンは想像できません。(少なくても私には・・・)

その逆も難しいですね。



今月から来月にかけては・・・

1:アルザスのゲヴルツトラミネール

2:ジュラのサヴァニャンの「面白い白」

3:アルザスのこれも異呼称のクレヴネール

4:オーストリアで先述の三タイプのサヴァニャン=トラミナー系をブレンドしたもの

が、リレーのように登場予定です。

3に関しては募集中の7月20日「ジェラールメッツ ワインメーカーズディナー」で登場します。

お試しになりたい方ははエントリーをお願いいたします。



また地中海系の葡萄もスペイン、フランス、イタリアなどで広い範囲で植えられていますが

その一つがグルナッシュでして、原産がスペインでガルナッチャ(イタリアでもそう呼ばれることもあります)、フランスでグルナッシュ、そしてイタリアはサルデーニャ島でカンノウナウ。

或いはやはりスペイン原産のカリニェーナはフランスでカリニャン、イタリアでは先述のサルデーニャでカリニャーノ。

これは呼び名が似ていますので判りますね。


逆に異呼称が他では見つからない、というのもあります。

やはりサルデーニャのトルバート。

元来スペイン原産で、今ではサルデーニャの一社でしか栽培されていないそうですので、ま、仮に異呼称があっても「死語 」と言っても良いわけです。

上記のカンノウナウ、カリニャーノ、トルバートは7月5日の「セッラ エ モスカ ワインメーカーズディナー」で使用します。

キャンセルにて2席ありますので、ご検討ください。(〆切り7月3日16時頃



同じ品種だけれど呼び名が違う。

似ているけど産地によって少し違う。

同じ系統だけど全く違う。



今月からの流れは少し面白いラインナップですね。

お試しいただければ幸いです。


           樋口誠