うーん、世界観が拡がらない。
だだっ広く、ただただ埃っぽい荒野が連なる辺境惑星。小ぢんまりとした植民街区を除き、あとは重罪人を収容する監獄と(荒くれ人種が彷徨う)開拓の大地だけ・・・・言わばこの星、宇宙サイズの『18世紀のオーストラリア大陸』って感じ?か。そう言や、なぜか白人しかいないし^^;
ストーリーの前哨部分、雲海上に浮かぶ巨大な軍事指令ステーションで、女性長官殿が優雅に寿司?を食ってる1/4分目くらいまでの映像テンポは悪くなかった。けど、(主演級キャストのひとり=)ソマーヴィル中尉とその娘インディとの関係を丁寧に描いたワリには、中盤以降、ストーリー展開は気ぜわしくなって落ち着かない。
そうこうするうちに、監獄では囚人の反乱が起き、人間由来のモンスター(槍のような舌で突くことにより、他の人間の遺伝子も変異させて同種のモンスターに換えてしまう)がいっきに増殖。植民者らを襲い、惑星をパニックに陥れる。空の上から「高みの見物」をしている長官は植民者を早々に見捨て、いったん地上の生命を「強制抹消」する決断を下す。そうはなるものかと、軍紀に逆らい単身、地上のインディを救出に向かう中尉…。
ちなみに、このソマーヴィル中尉を演じるのは、シェーン・アベス監督の前作『インフィニ』でも主演(カーマイケル役)だったダニエル・マクファーソンだ。そこに、もうひとりの主役級キャスト(=元、地球で看護士だったが「曰く付きの試練」を機に自暴自棄となり、遥か最果ての星に流れ着いた)世捨て人のサイが絡んでくる。
刑務所の反乱から先は、スペースSFと言っても(文明崩壊後の地球を舞台にした)『マッドマックス2』以降さながらのイメージへ…。少しも、銀河のかなたの「よその星」を描いているようには^^;見えない。まさに、オーストラリアの原野じゃんよ、って感じ。まだしも『インフィニ』の方が辺境の異星っぽく描けてたと思う。
委細ネタバレは回避しとくが、エンディングも微妙。
一抹のスッキリ感はおろか、(壮大なる宇宙叙事詩の一端を観た、的な)満腹感の片鱗も残らない。もしかしたら監督は、キリスト教的な原罪の思念やら因果応報の理(ことわり)まで盛り込もうとしたのかも?しれないが、やはり『インフィニ』のときと同様、説得力にバランスを欠き、思いっきり独りよがりな印象は否めない。
あと、まったくの余談だが……①本作の「モンスター」の造形と、②ラストで急に凛々しく強いキャラに転じる「娘」の描きかたが、まるっきり題材の異なるホラー映画『ザ・モンスター(ブライアン・ベルチノ監督|2016年)』とナンたる偶然か激似。これには笑えた。
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