2011・9月23日~11月3日 香雪美術館(阪急御影下車すぐ)
夜来の雨もあがり小晴日和の一日。
神戸・御影にある香雪美術館で催されている『細川護熙―陶と書―』展を見に行ってきました。
細川護熙(ほそかわ・もりひろ)さんといえば、ご存知のはず。60歳で政界から退いた元首相。
母方の祖父母が昭和の初めに神奈川県・湯河原の別荘を、還暦からの住家に定めて小さな畑をひらいたのが1998年。
しばらくして、ろくろ場や窯場はおろか茶室までしつらえた。
自らが理想とする『晴耕雨読』の暮らしのなかから生まれた焼き物、書などおよそ80点が展示されてました。
たとえば細川さんの筆による『明日は御座なく候』がある。
この蓮如の“ことば”が、細川さんの座右の銘だとか。
「気持ちの赴くまま、焼き物をつくったり、筆をもったり、畑仕事をしたり、『明日これをしよう』ではなくて、できるだけその日のことだけを考えてますね」
一日一日を大切に心がけることこそ大事だという、信念が“書"から見てとれる。
ところで湯河原のご自宅を「不東庵」と名づけ、窯を築いてもう10余年。
「不東庵」は、中国・唐の玄奬が「もう、東には戻らない」と固い決意で西のインドに向かった、という故事にちなんだものらしい。
わたしもぜひ見習うべきだ。「もう、東(←東京)へは行かない」と。(笑)
きくところによると、細川さんの一日は5時起床。庭の掃除ではじまる。
食事は二食だけ。「腹六分目」を心がけている。
たいてい夜9時には床につく。夜の外出は厳禁だそうだ。
"晴耕雨読”だの”悠々自適”な暮らし向きは、われわれ凡人には理想郷にひとしい。
むしろ四字熟語ではないが、"貧乏ヒマなし”のほうがピタリと符号が合致する。
毎日、毎日なんだかんだと世俗的なことに追いまくられてるのが「現実」なんです。
「赤楽茶碗」(=2003年)
「絵唐渓茶碗」(=2006)
今回出展されているものから、わたしのお気に入りの2点です。
ほかに漆絵『さくらんぼ』にも注目しました。1個だけが描かれた「さくらんぼ」がとても愛らしく、そして温かさがありました。
額装のデザインも自ら手がけたという。
「つくりたいものがどんどん増えてくるんです」
油彩画も2年ほど前から試みはじめたそうだ。
土や書といった無垢な素朴との対話を通じて、細川さんの心が宿った静かな世界に浸った一日であった。
香雪美術館は広大な敷地のなかにある。
元は朝日新聞を創刊した村山龍平氏の邸宅だった。
邸内には「玄庵」と「香雪」の茶室が2席ある。
茶室棟の玄関(←編笠門=画像)は、まるでどこかの山寺にたどりついたような錯覚さえおぼえます。
緋毛氈の野外席(←画像)で、野鳥のさえずりをききながら薄茶を楽しめる。
薄茶 和菓子で一席 650円
編笠門
その日、「HARBS」で昼食したあと、阪急御影駅へ。
閑静な住宅街を通りぬけて、御影石の塀がめぐらされた国指定登録文化財の「香雪美術館」へは徒歩で5~6分。
美術館の前はクスの木が鬱蒼と茂った弓絃羽神社がある。このあたりは散策してみるのもイチオシのところだと思います。
阪急・御影には有名なケーキ店「高杉」の本店、洒落たレストラン「セセシオン」など、グルメ探訪にも素敵なエリアです。
「細川護熙展」は11月3日(祝日)まで。 興味のある方はぜひ!!
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