第4章 え?親友ってヤツ。(6)
「あっ、この曲いいね」
みどりが言った。
ラジオから聞こえてくる曲。何という曲なのか、曲名は分からないが良い曲だということは分かる。旋律が、和音が、音色が、それぞれの耳に気持ち良く響いてくる。
「いいですねえ」
皆神がみどりに同意した。
「確かにね」
慎平がちょっとはにかみながら認めた。
「なっ、修!」
「慎話し掛けるなよ。今聴いてるんだから」
「あっうるさかった?」
修は無言。
本気で聴き入っているらしい。
「わかーりましたよう。静かにしてよっと」
慎平は近くにあった椅子に腰掛けた。
ラジオから流れる音楽が部屋の中を流れ、空間を満たす。贅沢な時間が過ぎていった。
そこに居たのは、慎平、修、みどり、将、皆神、あと先生も部屋にいた。
みんな黙って、スピーカーから流れ出す音楽を聴いている。
『さーてみなさんお元気ですかあ~~~ッ!!?? “サンライツ・セッティング”、今日はこれが最後の曲になります。曲はSPIRAL LIFEで、『PHOTOGRAPH』。ではみなさん、さようならあ~~~っ!!!』
落ち着いていた空気を切り裂く甲高い声。騒がしい口調。
「なんだこの女?」
と将。
「この人DJなの?」
みどり。
「うるせー声」
慎平。
「ちょっと待った……この声どこかで聞いたことあるような……」
「修まさかとは思うけど知り合いなのか?」
慎平が修の言葉を咎める。
「いや違う……と思う。よく分かんないや。記憶整理しないと……」
修は頭を抱えている。
ソシテ、『PHOTOGRAPH』。……リードギターによるイントロが流れてきた。
「あっ、これもいいな……」
修が、今悩んでいた事もすっかり忘れて、思わず呟いた。
「わあ……」
みどりが感嘆の声を上げる。
「SPIRAL LIFEって、聞いた事あるよ、俺」
将が博学?の面を垣間見せる。
……
『leave in photograph』
……
『そっとひもとじる 君のフォトグラフ』
……
「いい歌だね」
みどりが口にした。
重厚な演奏に、半透明の歌声。とても美しく、存在感がある。
「神の歌です。これは」
皆神が大袈裟な事を言う。
「確かにいい歌だ。これは」
将が珍しく素直な気持ちを述べた。
「俺はさっき一瞬出てきた、女の子の甲高い声が耳に残って、素直にこの曲を聴けねー」
慎平はこの曲について、今はあまり感じるところはないようだ。
「お前そりゃないよ。こんなに名曲なのに」
修が慎平を諭すが、慎平は素知らぬ顔で、
「これくらいの曲、ちょっと探せばあるんじゃないの?」
と言う。するとみどりが、
「でもね、今日慎平君がここに来て、私たち5人で、あっごめんなさい、先生入れたら6人でしたね……」
先生は、いいよ、続けなさい、とみどりに言う。
「はい……私たちがここにいて、この曲を聴いた。これって……何ていうの?うまく言えないんだけど、運命……とも違う、この場所で、このメンバーでしか出来なかった事っていうか、うまく私の言ってること伝わってるかしら、何ていうか、すごく特別な事なんじゃないかって、思うの」
みどりは言い切った後、ハアハアいっている。
「毎日は特別だし、当たり前でもあるんだよ」
将がサラッと言ってのけた。
「将さん、つまんないまとめ方しないで!」
みどりがグーを将の頭の上に振りかざした。