おっちーの鉛筆カミカミ

演劇モノづくり大好きおっちーのブログです
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そのうち、みなさんにお目にかかれたらうれしいです

ラ研投稿作品……性懲りもなくまた掲載します。

2010年04月27日 08時12分50秒 | 小説・短編つれづれ
 第一章を書き終えました。

 今、おっそろしく忙しいです。
 頭の中で、無関係な4つとか5つ以上のマルチタスクが常に回っています。

 本当は投稿する作品をブログで掲載するのはフェアじゃないし、いけないことかなあと思うんですが、なんかフィードバックが返ってこないとモチベーションが続かなそうで……

 ラ研投稿者の皆さま、本当にごめんなさい!
 このままブログ連載をさせてください!

 すみません……
 よろしくおねがいします。

 今回は、第一章を全て掲載します。


      ○


第一章 戦いの前に


 私はハヤ美という名前だ。
 いまは馬車の中――『国立アイグラント学園』という学校へ向かう途中――で薄いクッションにもたれている。
 国立アイグラント学園……そこは、アイグラント帝国の絶大なる武力を支える、優秀な兵士を育成する学校だ。
 アイグラント帝国は、その学園から輩出された兵士たちを使い、今やこの大陸を制圧し尽くそうとしていた。
 はぁ~……これから私、どうなっちゃうんだろ?
 ハヤ美は、流れゆく景色を眺めながら絶望的な気持ちに打ちひしがれていた。
 だいぶ建て物が多い風景になってきた。故郷の山村とは目に入るモノが全く違う。家や畑、工場など、人の手で築かれたものが目立つ。
「あっ」
 白い鳥が飛んできた。かわいい。
 その中の一羽がハヤ美の方にパサパサと音をたてながら向かってくる。
「あれ?」
 ハヤ美が小さく手を掲げると、白い鳥が指にとまった。
「じいちゃんかな?」
 鳥の全身から優しい光がにじみ出す。形がぼやける。
 そのまま鳥の姿は溶けたようになくなり、ハヤ美の手のひらの上に一枚の白い紙切れが残った。
「やっぱじいちゃんからだ」
 紙には文字がつづってある。なになに……

『がんばれ』

 ……それだけかいっ!
 この一言を伝えるためだけにじいちゃんはわざわざ魔法を使ったのか。ハヤ美はあきれながらも、一方で少し心が温かくなるのを感じてもいた。
 じいちゃんらしいや。
 私はひとりじゃない。そう思うと、今自分の置かれた絶望的な状況も少しは楽な気分で受け入れることができそうだった。

 馬車は、アイグラント帝国の首都に着いたようだった。
 アイグラント帝国は、軍隊を率いながら各地を制圧し続け、その度に首都を移してきた。
 ということは……首都がある場所……それはすなわち敵国との戦いの最前線を意味する。
 そう思って城下の町並みを見詰めると、人々の生活から「活気」を感じると共に、「のん気」とは無縁のピリピリとした緊張感が感じ取られるような気もする。
 この町は、いつ戦闘に巻き込まれてもおかしくない場所なのである。

 ……しばらく馬車は城下町の中心部を進む。
 子供が遊んでいた。
 走り回る子達を大人が注意する。
 石造りの建て物の軒先には、洗濯物が干してある。
 飲食店の周りにはテーブルと椅子が並んでいて、そこで食事をカッ込む人、上品にお茶を飲んでいる若い女性、仲間と談笑する人々……いろんな人達が一日の終わりを謳歌している。

 あぁ~……癒される~~~……のんびり……

 している場合じゃない!
 私は自分の置かれている状況をすっかり忘れてのん気にしていた。
 あんたも!あんたも!あんたも!……そしてこの私も!!
 これからどんな危険が身に起こるか分からないんだよ!

 ハヤ美は荷物の中から、この馬車に乗り込む際に使ったチケットを取り出した。
 手のひらの上にのっているのは大きさの違う二枚の紙切れ。
 一枚は、アレグラント学園までのチケットの半券。そしてもう一枚は学園から故郷に帰る時に使うチケットだ。
 その時、強い風が吹いた。
 石畳の路上から、砂ボコリが舞い上がる。
 それがハヤ美の目の中に入った。
「……あいたたたたたた……!!」
 ハヤ美は必死で目をこする。涙を出してホコリを目の中から流し出そうとする。

 ………

「えーん……痛かったよう」
 ようやく痛みは落ち着いたようだった。
「ん?」
 私チケットどうしたっけ?
 確かバッグから取り出して、ぼんやり眺めてて、そしたらゴミが目に入って……
 失くした? 風に飛ばされた??
 ハヤ美は慌てて馬車のシートの周りや、後ろの地面なんかを探したが、それらしきベージュ色の紙切れは落ちていなかった。
 ショック!!!

「あの……おでこに何かがついてますよ」
 えっ?
 私は慌てて自分の額に指の先を当てた。
 何度かデコを指先でこすって探す。すると、皮膚とは違う感触を得た。
 ……あっ、なんかくっ付いてる!
 よかったあ。
 汗で張り付いたそれをはがして目の前に持ってくる。
 ……半券だ。
 帰りの馬車のチケットは!?
 私はどこかにチケットが引っ掛かっていないか全身を探った。
 ……ない。
 どこにも、ない。……私は帰りのチケットを失くしたのだ。
 『恋の片道チケット』……そんなんじゃないが、私は故郷からアレグラント学園まで行くコトしかできないのか。そこから帰るコトはデキないのか。
 私のこれからの運命を暗示しているようで、寒気がした。
 恐い。
 私の、心配のし過ぎであったらどんなにいいだろうか。でもこれはきっと……思い過ごしでは、ない。
 私の運命は、あの城壁の中で私を待ち構えている。
 全然ウキウキは、しない。

      *

 馬車が去ってゆく……
 本当は私を故郷まで乗せて行って欲しい。
 おウチに帰りたい。

「……まっ、やるっきゃないか!?」
 じいちゃんの顔が頭に浮かんで、ハヤ美は早足で巨大な門をくぐった。

 ――国立アイグラント学園特殊部隊養成学校――

 それが……この学校の正式名称。
 門の横の壁に、大きな活字で刻まれていたこの学校の名前。
 ハヤ美の足は早くも震えていた。
 これからどんなことが私を待ち受けているんだろう? 私はこの『任務』を成し遂げることができるのだろうか?
 ……そして私はもう一度、ふるさとの土を踏むことができるのか!?

 壁の厚さだけの短いトンネルを抜ける直前に、視界が大きく開けた。
 そこはまるで庭園のようだった。
 緑の芝生、並んでいる樹木、それらといい色の加減で通っている土色のみち……ところどころに木製のベンチも配置されている。
 これは国立学校ってゆうより国立公園だな……
 ハヤ美は辺りを見回した。
 『庭園』を取り囲んで、石造りの建物がたっている。
 あそこが……私の入る学生寮かな?
 あっちは……戦闘理論や戦術を学ぶ教室棟かな?
 そういえば、実戦を行うコロシアムがあるとも聞いている……
 ……ハヤ美はキョロキョロして……
 ……それはどこだろう?

 おのぼりさんのようにウロチョロキョロキョロしているハヤ美の背後から、声を掛けてくる者があった。
『お前は誰だ!?』
 大きな声量でいきなりそう訊かれた。
 ハヤ美は本気で20センチほど跳び上がって驚き、そのあと恐れおののきながらゆっくりと振り向いた。
「見ない顔だな。聞いていない。お前は誰だ」
「……あなたは……?」
 堂々と言葉を続ける自分と同じ年頃の娘に向かって、ハヤ美はおずおずと弱気に訊き返した。
「ん?……ワタシはこのアイグラント学園特殊部隊養成学校――生徒副隊長の野間だ」
「私はハヤ美です」
「ハヤ美?……ああそういえばそんな新入りが来ると教官から聞いていたか」
 野間は、重そうな甲冑を軽々と着こなしている。そして左腕に、やはり重そうな兜を抱えていた。
「スゴイですね、女性なのに副隊長」
 すると野間は全く心外といった表情をした。
「なにを言ってるんだ……貴様、何も知らないようだな……」
「えっ?」
「お前、死ぬぞ。早くここから出ろ」
 切れ長の目からハヤ美に注がれる、哀れむような目線。ハヤ美は背筋がぞゾゾゾーッとした。それが野間の言葉に対する恐怖だったのか、野間の美しさ、強さに対する感動だったのかは判別ができなかった。

 野間はハヤ美の方を振り返るような迷いを一度も見せることなく、後姿のままでハヤ美のいるその場所から見えなくなった。

      *

 ハヤ美はボーっとしていた。
 私は知らないことが多すぎる。何の為にここに来たのか分からなくなってきた。
 『庭園』のベンチに座って、しばらく空を眺めた。
 恨めしいくらいの青空。いわゆる快晴。神様は私の気持ちとは同調してくれないらしい。

 そんな時、空中をケーキとティーカップが飛んでいた。

 ………

 はっ!?
 そんなわけないじゃん。
 でも確かに視界の中を、ケーキとティーカップ――おやつのティータイムセットが二組――通り過ぎようとしていた。

 よいしょっ☆

 ハヤ美はそのティータイムセットを全てキレイに受け留めた。ついでにティーポットもあったが、それもきちんと中身をこぼすことなく、受け取った。

『……イタイイタイイタイイタイ!……止まらな~い!』

 授業棟の方にあった、広くて長い階段の方向から女の子の悲鳴が聞こえた。
 そっちを見ると、長いヒラヒラのスカートをはいた女の子が、階段を縦になり横になり転がり落ちてくる。
「誰か助けて~」
 悲鳴は弱々しくなってきた。
 ハヤ美はお盆にのったおやつセットを持っている。
「どうしよう!?……あっ、あそこに!!」
 ハヤ美は手に持ったおやつセットを近くのベンチの上に丁寧に置いた。
……それから、長い階段を転がり落ち終えて倒れている女の子に、丁寧に声を掛ける。
「大丈夫ですか?」
「だいじょうぶじゃな~い!……ですぅ……あいたたた……」
「だいじょぶですか?」
「痛い!……痛いようぅ~~」
 なんとか立ち上がる女の子。
 ちっちゃい!
 ……私より20センチ以上低いぞ!
「あなた……初めて見る顔ねえ」
「ハヤ美といいます」
「私はグララン……あれっ、ケーキとお紅茶は?」
「あそこに置いときましたけど」
「あら奇跡的! こぼれてすらいないわ!」
 私のおカゲでしょう。ハヤ美は思う。
「ハヤ美さん……でよかったかしら? ありがとう」
「いえいえ」
「これでラフさんと3時のお茶が無事に飲めるわ~♪……おっと!」
 けっつまづき、ケーキ一個と紅茶一杯を落っことす。
「あらら~~」
「……」
「まあいいわ、ラフさんと半分コしよう(はぁとまぁく)」
 ハヤ美は思った……あれだけ丁寧に扱った私の努力って一体……

 ハヤ美は無事寮を見付け、自分の部屋に入った。……狭いな。まあ一人部屋だからしょうがない。
 着替えることもなく、ハヤ美はベッドにドサッと横になる。
 疲れた……
 そのままハヤ美は、明日のことを考える余裕もないままに深い眠りに落ちていった……


      ○


 以上で第一章終わりです。
 これで4千字くらい。だいたい1/4ってところでしょうか。
 本当はこれからもっとエピソード入れないと1万字まで届かないかと思ってたんですが、これで4千ですからね、メインに考えていたお話だけで1万字は軽く超えそうなことが分かりました。
 頑張ります。
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