おっちーの鉛筆カミカミ

演劇モノづくり大好きおっちーのブログです
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ラ件投稿用作品。ほんのさわりだけ

2010年04月25日 16時48分19秒 | 小説・短編つれづれ
 ヴァッキーノさんが教えてくださった『ライトノベル作法研究所企画サイト』への投稿作品を書いています。(以下『ラ件』のホームページURL)

http://raken-kikaku.jpn.org/index.html

 僕の作品は……プロローグがあって、その後たぶん10章弱くらいで完結するかと思うんですが、今回はプロローグの後の第一章……その始めの方だけ掲載します。

 何かあったら感想等ください。

 よろしくです。

 ではでは~


      *


 私はハヤ美という名前だ。
 いまは馬車の中――『国立アイグラント学園』という学校へ向かう途中――で薄いクッションにもたれている。
 国立アイグラント学園……そこは、アイグラント帝国の絶大なる武力を支える、優秀な兵士を育成する学校だ。
 アイグラント帝国は、その学園から輩出された兵士たちを使い、今やこの大陸を制圧し尽くそうとしていた。
 はぁ~……これから私、どうなっちゃうんだろ?
 ハヤ美は、流れゆく景色を眺めながら絶望的な気持ちに打ちひしがれていた。
 だいぶ建て物が多い風景になってきた。故郷の山村とは目に入るモノが全く違う。家や、畑、工場など、人工のものが目立つ。
「あっ」
 白い鳥が飛んできた。かわいい。
 その中の一羽がハヤ美の方にパサパサと音をたてながら向かってくる。
「あれ?」
 ハヤ美が小さく手を掲げると、白い鳥が指にとまった。
「じいちゃんかな?」
 鳥の全身から優しい光がにじみ出す。形がぼやける。
 そのまま鳥の姿は溶けたようになくなり、ハヤ美の手のひらの上に一枚の白い紙切れが残った。
「やっぱじいちゃんからだ」
 紙には文字がつづってある。なになに……

『がんばれ』

 ……それだけかいっ!
 この一言を伝えるためだけにじいちゃんはわざわざ魔法を使ったのか。ハヤ美はあきれながらも、一方で少し心が温かくなるのを感じてもいた。
 じいちゃんらしいや。
 私はひとりじゃない。そう思うと、今自分の置かれた絶望的な状況も少しは楽な気分で受け入れることができそうだった。

 馬車は、アイグラント帝国の首都に着いたようだった。
 アイグラント帝国は、軍隊を率いながら各地を制圧し続け、その度に首都を移してきた。
 ということは……首都がある場所……それはすなわち敵国との戦いの最前線を意味する。
 そう思って城下の町並みを見詰めると、人々の生活から「活気」を感じると共に、「のん気」とは無縁のピリピリとした緊張感が感じ取られるような気もする。
 この町は、いつ戦闘に巻き込まれてもおかしくない場所なのである。

 ……しばらく馬車は城下町の中心部を進む。
 子供が遊んでいた。
 走り回る子達を大人が注意する。
 石造りの建て物の軒先には、洗濯物が干してある。
 飲食店の周りにはテーブルと椅子が並んでいて、そこで食事をカッ込む人、上品にお茶を飲んでいる若い女性、仲間と談笑する人々……いろんな人達が一日の終わりを謳歌している。

 あぁ~……癒される~~~……のんびり……

 している場合じゃない!
 私は自分の置かれている状況をすっかり忘れてのん気にしていた。
 あんたも!あんたも!あんたも!……そしてこの私も!!
 これからどんな危険が身に起こるか分からないんだよ!

 ハヤ美は荷物の中から、この馬車に乗り込む際に使ったチケットを取り出した。
 手のひらの上にのっているのは大きさの違う二枚の紙切れ。
 一枚は、アレグラント学園までのチケットの半券。そしてもう一枚は学園から故郷に帰る時に使うチケットだ。
 その時、強い風が吹いた。
 石畳の路上から、砂埃が舞い上がる。
 それがハヤ美の目の中に入った。
「……あいたたたたたた……!!」
 ハヤ美は必死で目をこする。涙を出して埃を目の中から流し出そうとする。

 ………

「えーん……痛かったよう」
 ようやく痛みは落ち着いたようだった。
「ん?」
 私チケットどうしたっけ?
 確かバッグから取り出して、ぼんやり眺めてて、そしたらゴミが目に入って……
 失くした? 風に飛ばされた??
 ハヤ美は慌てて馬車のシートの周りや、後ろの地面なんかを探したが、それらしきベージュ色の紙切れは落ちていなかった。
 ショック!!!

「あの……おでこに何かがついてますよ」
 えっ?
 私は慌てて自分の額に指の先を当てた。
 何度かデコを指先でこすって探す。すると、皮膚とは違う感触を得た。
 ……あっ、なんかくっ付いてる!
 汗で張り付いたそれをはがして目の前に持ってくる。
 ……半券だ。
 帰りの馬車のチケットは!?
 私はどこかにチケットが引っ掛かっていないか全身を探った。
 ……ない。
 どこにも、ない。……私は帰りのチケットを失くしたのだ。
 『恋の片道チケット』……そんなんじゃないが、私は学園に向かうコトしかできないのか。そこから帰るコトはデキないのか。
 私のこれからの運命を暗示しているようで、寒気がした。
 恐い。
 私の、心配のし過ぎであったらどんなにいいだろうか。でもこれはきっと……思い過ごしでは、ない。
 私の運命は、あの城壁の中で私を待ち構えている。
 全然ウキウキは、しない。


      *


 以上でブログでの発表は終わりになります。
 プロローグ及びこの続きは『ラ研』の企画ページ上で、よろしかったらご覧ください。
 よろしくお願い致します。

 ではでは~

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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
上手だったよ (Sαkuramirai)
2010-04-26 18:16:48
スゴイスゴイ
おっちーさんの文章力に感動しました
特に細かい情景描写…複雑なようだけど、分かりやすく文章に出来ているところが上手ですパチパチ
物語の内容もワクワクさせられておもしろいです
ゴールデンウィークにまた遊ぼうね
返信する
完成、楽しみです (つとむュー)
2010-04-26 21:40:45
お久しぶりです。

出ましたね、『片道チケット』!
ラ研のGW企画での作品の完成が楽しみです。
でも、これではおっちーさんの作品がどれだか分かっちゃうので、コメントが書きづらくなってしまうかもしれません(コメントを書くときに点数をつけなくてはいけないので)。おっちーさんの作品へのコメントは、最後に書こうと思います。気長にお待ち下さい。

今日、新たにお題小説をやっているサイトを見つけましたので、ヴァッキーさんのところに書き込んでおきました。時間がありましたら見て下さいな。こちらのお題もすごいですよ・・・
返信する
早速 参上しましたよ~ん!! (いかわ)
2010-04-27 02:33:58
""ぱっ”と情景が浮かぶんですよ! で、 ”すすっ”と、読み進める事ができる。 この先どんな展開をされるのか、全くわからないのですが、なぜか「ハヤ美」のこれからが気になります
だいたい、いつもごてごての「形容詞」のめっちゃ多い僕には、なかなかマネのできない、「スパッ」とした持って行き方が、ホント羨ましい・・・・

僕にとっておっちーさんの「小説」については「ONE EYES」のイメージが強烈すぎて、まったく違ったタッチがすごい新鮮です。

今回はショート・コメで、シンプルにお邪魔しましたが(笑)、後日、「ごってり・コメ」でまた遊びに参りますね~

執筆、がんばってくださ~い
返信する
さんきゅー(はーと) Sαkuramiraiさんへ (おっちー)
2010-04-27 05:52:55
 ども、どもです

 そんな褒めるなよぉ~
 恥ずいじゃん

 まあ頑張ってますよ

 Sαkuramiraiさんもテキトに頑張れっ!
返信する
はい、気長に待ちます(笑 つとむューさんへ (おっちー)
2010-04-27 06:05:40
 お久し振りですっ!
 でもなんかつとさんってすごく安心感を与えてくださる方な気がして、連絡がなくても(まーつとさんのポータルページは時々チェックしてますが)たぶん元気にやってるんだろうなー、ってあんまり心配してなかったんですよね。

 そしてその予想通り、ガンガン文章活動されてるようで、僕も嬉しいし、励まされます。

 う~ん、また新しい「文章塾」見付けられましたか……(苦笑)
 僕はこのゴールデンウィーク中に「ラ研」「路上演劇祭」「お墓の見学」「都緒king物語」そしていちおう付け加えると「でーと」(これはもちろんすっげー楽しみですが)を全てなんとかしなければならないという荒行を遂行することになっているので、手が回り切らないかも……
 でもブックマークはしておきますね。(ラ研の時も似たようなこと言ってたなあ……笑)
返信する
ありがとござますッ! いかわさんへ (おっちー)
2010-04-27 06:13:16
 ほんとありがたいですねえ~
 いかわさんのような方がいてくれるんだなって思うと、それだけでやる気になりますよ。

 なんか、過去の記事も読んでいただいてるみたいで、結構気持ちを入れて読んでいただけてるみたいで……ありがとですっ! 恐縮ですっ!

 あぁ、そうですかぁ、ONE EYESとは違く感じられますかあ。
 それはそんなに狙ってはいないんですが、自然にそうなってるのかな、「ライトノベル」を書かなきゃ、って思って書いているのでそれが出ているんですかね。

 はい、ごってり・コメ、お待ちしてますっ!!

 ほんと、ありがとうございますっ!
返信する
おっちーさんへ (矢菱虎犇)
2010-04-29 09:15:00
ありゃま~!ちょっと油断している間に、
ラノベ始めたんですね!
今から順番に読んで
コメント入れちゃおう!

僕も少しラノベに興味をもってナントカならんかと図書館に行ってみたんですが、ナントカなりませんでした。

白い鳥が手紙に変わっちゃうところが
イメージが豊かで好きだなぁ!
そのあとの『がんばれ』でギャフン!ってのも
含めて・・・。
図書館の本の受け売りですけど、『ラノベってキャラが立っている!』ってのがとても大切みたいですよね~。
僕のショートってストーリーが主役だから、キャラ立て、苦手なんですよね~
おっちーさんは、出だしだけでもう十分クリアです!!
返信する
いやいやいやいや…… 矢菱虎犇さんへ (おっちー)
2010-04-29 17:08:43
 ありがとうございます!
 励ましのお言葉ですね! ありがとうです!

 やっぱり人ですからそれぞれ得手不得手ありますよね、当然。
 僕って昔からキャラ中心に考えて物書きをしていたところがあるので、ラノベは向いてるのかもしれません。

 とかいってもうカテゴリー変えちゃったあとですが……戻そうかしら……(もちろん冗談です)

 狙ったトコ褒めていただけて恐縮ですm(uou)m

 でもこの若人を狙った軽いマンガ的な感じが一般には通用しなくなりそうなので、これで封印とします。

 でもありがとうございます!

 矢菱さんのお言葉、糧にしますね!
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