急がぬ日急ぐ毛虫を見てゐたり 岡田由季
同賞候補作五十句「喚声」より。
路上や壁の上を歩く毛虫は、いつでも凄まじい速度で動いている。
それはそうであろう。
彼らにしてみれば、そこは本来の居場所ではない。
仮に彼らが目の利かぬ生物だとしても、
そこが自分のいるべき場所でないことは、
足の裏から伝わる材質の固さ、
冷たさからすぐに感知するであろう。
彼らは急ぐ。
なぜならば、彼らはその時、
生命の危機に直面しているからである。
体の色や模様は、草木の中に紛れるためのものだ。
枝に巻き付き高所から落下しないように、
体の表皮は敢えて柔らかく出来ている。
彼らは木の上、葉の中に隠れているからこそ安全なのであり、
それ以外の場所にいるということは、
いつ天敵や災難に遭遇するかわからない、
一大難局である。そんな毛虫の恐怖も知らず、
見ているほうは呑気なものだ。
おやおや一体何を急いでいるのだろう、
この毛虫は。
急げば急ぐほど、毛虫の背中は忙しなく脈打つ。
同賞候補作五十句「喚声」より。
路上や壁の上を歩く毛虫は、いつでも凄まじい速度で動いている。
それはそうであろう。
彼らにしてみれば、そこは本来の居場所ではない。
仮に彼らが目の利かぬ生物だとしても、
そこが自分のいるべき場所でないことは、
足の裏から伝わる材質の固さ、
冷たさからすぐに感知するであろう。
彼らは急ぐ。
なぜならば、彼らはその時、
生命の危機に直面しているからである。
体の色や模様は、草木の中に紛れるためのものだ。
枝に巻き付き高所から落下しないように、
体の表皮は敢えて柔らかく出来ている。
彼らは木の上、葉の中に隠れているからこそ安全なのであり、
それ以外の場所にいるということは、
いつ天敵や災難に遭遇するかわからない、
一大難局である。そんな毛虫の恐怖も知らず、
見ているほうは呑気なものだ。
おやおや一体何を急いでいるのだろう、
この毛虫は。
急げば急ぐほど、毛虫の背中は忙しなく脈打つ。
参照https://kakuyomu.jp/works/1177354054880622271/episodes/1177354054880622272