竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
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急がぬ日急ぐ毛虫を見てゐたり 岡田由季

2018-08-07 | 今日の季語
急がぬ日急ぐ毛虫を見てゐたり 岡田由季





 同賞候補作五十句「喚声」より。
路上や壁の上を歩く毛虫は、いつでも凄まじい速度で動いている。
それはそうであろう。
彼らにしてみれば、そこは本来の居場所ではない。
仮に彼らが目の利かぬ生物だとしても、
そこが自分のいるべき場所でないことは、
足の裏から伝わる材質の固さ、
冷たさからすぐに感知するであろう。
彼らは急ぐ。
なぜならば、彼らはその時、
生命の危機に直面しているからである。
体の色や模様は、草木の中に紛れるためのものだ。
枝に巻き付き高所から落下しないように、
体の表皮は敢えて柔らかく出来ている。
彼らは木の上、葉の中に隠れているからこそ安全なのであり、
それ以外の場所にいるということは、
いつ天敵や災難に遭遇するかわからない、
一大難局である。そんな毛虫の恐怖も知らず、
見ているほうは呑気なものだ。
おやおや一体何を急いでいるのだろう、
この毛虫は。
急げば急ぐほど、毛虫の背中は忙しなく脈打つ。


参照https://kakuyomu.jp/works/1177354054880622271/episodes/1177354054880622272
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