竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
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凍蝶の模様の揺れてをりにけり  宮本佳世乃

2018-08-16 | 今日の季語


凍蝶の模様の揺れてをりにけり  宮本佳世乃

 木々の枝に、辛うじて落ちずに残っている数枚の枯葉。
その葉裏に、縋り付くようにぶら下がっている一匹の蝶。
花も緑もない、全体が枯色に支配されてしまった世界の中で、
蝶のみが唯一の色彩あるものとして華やいで見える
しかしその蝶の体にもすでに生命力はなく、
凍えるような寒さの中で、
ひっそりと終焉を迎えようとしているかのようだ。
だが、たとえ蝶の生命の灯火が今にも消えそうになろうとも、
蝶の本能は自身が蝶であることを忘れようとはしない。
すでに自ら翼を動かし空へ羽ばたく体力を失っていたとしても
蝶は枯れた木の葉裏につかまり、
風に揺られる枝の運動に身を任せて、
その体を上へ下へと揺り動かしている。それはまるで
向かい風に揉まれながら、
風圧に抗って舞う蝶の本来の姿そのもののようだ。
蝶の体は凍てて動かない。
しかし蝶の翼の模様だけは、
蝶の鼓動と同じように必死に動き続けている。
蝶は、最後まで蝶であることをやめようとはしないのだ。
美しい蝶の意地を、作者は見た。


参照 https://kakuyomu.jp/works/1177354054880622271/episodes/1177354054880622272
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