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ふゆざくら息のこんなにさみしいとは 津久井紀代
自分なりに満足して生きてきた。
大切な人たちと知り合い、大切な家族をも授かり、
幸福な人生を歩んできた。それなのに、なぜだろう。
改めて自分の半生を振り返ってみた時、
何とも言えぬ遣り切れない思いのするのは。
充実した人生を生きてきたはずなのに、
何だろうこの焦燥感は。
心にはびこる、茫洋とした虚しさは。
私の息は、なぜこんなにも寂しげなのだろう。
見上げれば、冬の桜が咲いている。
まだ寒い冬の青空に、小さな花弁を幾つも、
懸命に広げている。そうか、あなたも頑張っていたのね。
心のどこかで、
無理をしながら。頷くはずもないのに、
風に煽られた冬の桜は、答えるように上下に揺れていた。
参照 https://kakuyomu.jp/works/1177354054880622271/episodes/1177354054880622272