起きて生きて冬の朝日の横なぐり 金子兜太
目が覚めると、夜はようやく明けたところであった。
山越しに姿を現したばかりの太陽は赤い。
寝具から抜け出すと、一夜の内に部屋に満ちた冷気が、
たちまち作者の体を覆う。寒いと感じる。
しかし作者は、そこであえて窓ガラスを開けた。
東の空低く燃える太陽は、
作者の頬をぴしゃりと平手で打つように照らしつける。
一層厳しい外の冷気に肌を晒しながら、
作者は日差しの暖かさを僅かに感じる。
冷たいこと、温かいこと。
それは即ち、自分が今生きているということだ。
生を授かり、生かされているということだ。
ならばその命を、大切に輝かさなくてはならない。
粗末にすることはできない。
作者は冬の朝日に、笑顔を以て答えたであろう。
今日も精一杯生きるよ、と。
参照
https://kakuyomu.jp/works/1177354054880622271/episodes/1177354054880622272