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冬麗やシーツかわけば風はらむ 小川軽舟
日差しの強い夏場とは違い、
冬は洗濯したものがなかなか乾かない。
作者はある週末、
朝の内から洗濯や物干しに忙しそうに働く妻の姿を、
暖かな家の中から窓ガラス越しに眺めていたのだろう。
ベランダに干されたベッドのシーツは
物干竿に掛けられても、
水分を含んだ自身の重さのために、だらりと下へ垂れている。
風が吹いても日が差しても、
シーツは乾くどころか、
いよいよ冷えて却って凍ったように微動だにしない。
ところがそれから時が過ぎ、
日も傾き始めた頃改めてベランダを見てみれば、
さっきまでびっしょりに濡れていたシーツはあらかた乾き、
尖った音を立てて吹く冷たい風に、ひらひらと煽られている。
そう言えば、あれ以来妻が静かだ。
買い物にでも出掛けたのだろうか、
それとも昼寝でもしているのか。
風にはためく真っ白なシーツが、
作者家族の生活の平穏と幸福を物語る。
参照 https://kakuyomu.jp/works/1177354054880622271/episodes/1177354054880622272