竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
自得の100句が生涯目標です

雪解くる雨だれ落ちつ雪降れる  小西鷹王

2020-03-19 | 今日の季語


雪解くる雨だれ落ちつ雪降れる  小西鷹王

一読、ちょっと気色の変わった表現の作風だ
題材があまりにも多くて初心者が詠めば
指導者に注意されるに相違ないが
春に近い景と春を待つ作者
時の果断ないうつりようを感じるではないか
(小林たけし)


季語は「雪解(ゆきげ・ゆきどけ)」で春。春先にしばしば見かける情景だが、このようにきちんと詠んだ句は珍しい。屋根に積った雪が解けて「雨だれ」となって滴り落ちている上に、また春の雪がちらちらと降ってきているのだ。「雪解」「雨だれ」そして「雪」と道具立てがややこしいので、短い俳句ではなかなか読み難いところを、苦もなく詠んでいるように写る。こうした技術をコロンブスの卵と言うのだろうが、私は大いに感心させられた。技術だけではなく、全体に春近しの情感がよく滲み出ていて、内容的にも十分である。このような日に、私はときどき窓を開けて外の様子を眺める。雨だれに淡く白い雪が降りかかり、降りかかってはすぐに解けてしまう。そんな情景を眺めながら、寒い冬が嫌いなわりには、どこかで冬に惜別の情を感じるような気がするのだから、勝手と言えば勝手なものだ。しかし、掲句で降っている雪は、「雪降れる」の語調からして、もう少し雪らしい雪のようにも思える。となれば、また冬への逆戻りか。いや、もうここまで来ればそんなことはないだろう。などと、作者の内面には冬を惜しむ気持ちはさしてなく、やはり春待つ心に満ちていると言えそうだ。なお、この句が収められている『小西鷹王句集』(2006)は、生前に一冊の句集も持たなかった作者のために、ご子息である小西真佐夫・昭夫氏が三回忌を前にまとめられたものである。(清水哲男)

【雪解】 ゆきげ
◇「雪消」(ゆきげ) ◇「雪解く」 ◇「雪解道」 ◇「雪解川」 ◇「雪消水」(ゆきげみず) ◇「雪解田」 ◇「雪解野」 ◇「雪解風」 ◇「雪解雫」 ◇「雪滴」 ◇「雪解」(ゆきどけ)
雪国で冬の間に積もった雪が、春暖により解けること。また、その時。

例句 作者

月光の休まず照らす雪解川 飯田龍太
念佛のさまよひおつる雪解川 中山純子
雪解川烏賊を喰ふとき目にあふれ 細見綾子
音たてていのちのいろの雪解川 加古宗也
にぎはしき雪解雫の伽藍かな 阿波野青畝
石獣の口に虫棲み融雪期 加藤憲曠
夜も軒の音をゆたかに雪解村 橋本栄治
恃むものいま己れのみ雪解川 松島不二夫
雪解けの湯気の立ちけり父の墓 若井新一
犬橇かへる雪解の道の夕凝りに 山口誓子