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携帯電話は悲しき玩具春の虹 守屋明俊
「悲しき玩具」は啄木が短歌を称した言葉
携帯電話、スマートフォン、タブレットを多用する人の模様
利用するツールがいつのまないか支配者の側に位置している
春の虹 が唐突でかえって効いているように感じる
(小林たけし)
電車で通勤する毎日、対面の七人掛けの席を見るとスマートフォンをのぞく人ばかりで本を読んだり、新聞を読んだりする人はほとんどいない。かくいう私もタブレットと二つ折りの携帯電話を持ち歩き四角い画面と向き合っているわけで、考えれば携帯電話やパソコンのなかった時代と生活実態が全く違っている。SNSで日々やりとりをする時間は限りなく短縮され、ためいきや愚痴に過ぎないものがとめどなく流されてゆく。春の虹は夢のようにはかなく淡い存在、歌のいろいろを「悲しき玩具」と言った啄木と似た心持ちが携帯電話を握り占める心にはあるのかもしれない。『守屋明俊句集』(2014)所収。(三宅やよい)
【春の虹】 はるのにじ
◇「春虹」 ◇「初虹」
虹は多く夏に見かける現象であるが、春半ばを過ぎると初虹が現れる。春の虹は優婉な趣が深い。
例句 作者
青苔や膝の上まで春の虹 一茶
洗はれしみんなみの戸や春の虹 木津柳芽
春の虹そのあと昏し足洗ふ 野澤節子
初虹や岳陽楼に登る人 尾崎紅葉
春の虹消ゆまでを子と並び立つ 大野林火
武蔵野の森より森へ春の虹 鈴木花蓑
野の虹と春田の虹と空に合ふ 水原秋櫻子
春の虹旅を夢見る子と仰ぐ 堀口星眠
青苔や膝の上まで春の虹 一茶
洗はれしみんなみの戸や春の虹 木津柳芽
春の虹そのあと昏し足洗ふ 野澤節子
初虹や岳陽楼に登る人 尾崎紅葉
春の虹消ゆまでを子と並び立つ 大野林火
武蔵野の森より森へ春の虹 鈴木花蓑
野の虹と春田の虹と空に合ふ 水原秋櫻子
春の虹旅を夢見る子と仰ぐ 堀口星眠