尖塔になほ空のあり揚雲雀 長嶺千晶
作者のポルトガルでの作だというが
句意は平明で、説明は不要だろう
どこまでもどこまでも高く飛んでゆき
雲雀の姿を追う作者までが景に確かだ
(小林たけし)
この尖塔にはポルトガル行六句の前書きがある。牧歌的な農村に広がっているのは麦畑だろうか。そんな畑中にひとかたまりの村落があり、各村落ごとに教区を割り当てられた教会がある。その古びた教会の尖塔の上にはなお高く空が広がっている。その尖塔により強調された空の高みへ雲雀が囀り上ってゆく。そんな高みの中に命の讃歌をさんざんに唄いあげて、やがて雲雀は急転直下落ちて行く。受け止める大地と麦畑がそれを待っている。他に<木犀の香りや不意に話したき><騎馬少女黄葉かつ散る時の中><白鳥といふ凍りつく白さかな>などあり。『つめた貝』(2008)所収。(藤嶋 務)
【雲雀】 ひばり
◇「揚雲雀」(あげひばり) ◇「落雲雀」 ◇「初雲雀」 ◇「朝雲雀」 ◇「夕雲雀」 ◇「雲雀籠」 ◇「叫天子」(きょうてんし)
ヒバリ科の小鳥。春の野に最も親しまれている鳥。雀よりやや大きく、背面は黄褐色の地に黒褐色の斑がある。腹部は白い。日本各地の畑地・草原などに巣をつくり、空中高くのぼってさえずる。初雲雀。揚雲雀。落雲雀。夕雲雀。雲雀野。
例句 作者
揚雲雀妹背山相凭りて 永方裕子
円墳の天より落つる雲雀かな 岩田一止
山かげの夜明けをのぼる雲雀かな 几菫
くもることわすれし空のひばりかな 久保田万太郎
雲雀野に古墳乳房のごと並ぶ 宗像夕野火
真上なるもの昼月と鳴く雲雀 加藤燕雨
雲雀野やこゝに広がる多摩河原 高浜虚子
巻向の野にゐて雨の揚雲雀 藤田あけ烏
雲雀落ち天に金粉残りけり 平井照敏
空すでに明日の雲溜め夕雲雀 田中太朗
揚雲雀妹背山相凭りて 永方裕子
円墳の天より落つる雲雀かな 岩田一止
山かげの夜明けをのぼる雲雀かな 几菫
くもることわすれし空のひばりかな 久保田万太郎
雲雀野に古墳乳房のごと並ぶ 宗像夕野火
真上なるもの昼月と鳴く雲雀 加藤燕雨
雲雀野やこゝに広がる多摩河原 高浜虚子
巻向の野にゐて雨の揚雲雀 藤田あけ烏
雲雀落ち天に金粉残りけり 平井照敏
空すでに明日の雲溜め夕雲雀 田中太朗