竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
自得の100句が生涯目標です

尖塔になほ空のあり揚雲雀  長嶺千晶

2020-03-22 | 今日の季語

尖塔になほ空のあり揚雲雀  長嶺千晶

作者のポルトガルでの作だというが
句意は平明で、説明は不要だろう
どこまでもどこまでも高く飛んでゆき
雲雀の姿を追う作者までが景に確かだ
(小林たけし)


この尖塔にはポルトガル行六句の前書きがある。牧歌的な農村に広がっているのは麦畑だろうか。そんな畑中にひとかたまりの村落があり、各村落ごとに教区を割り当てられた教会がある。その古びた教会の尖塔の上にはなお高く空が広がっている。その尖塔により強調された空の高みへ雲雀が囀り上ってゆく。そんな高みの中に命の讃歌をさんざんに唄いあげて、やがて雲雀は急転直下落ちて行く。受け止める大地と麦畑がそれを待っている。他に<木犀の香りや不意に話したき><騎馬少女黄葉かつ散る時の中><白鳥といふ凍りつく白さかな>などあり。『つめた貝』(2008)所収。(藤嶋 務)

【雲雀】 ひばり
◇「揚雲雀」(あげひばり) ◇「落雲雀」 ◇「初雲雀」 ◇「朝雲雀」 ◇「夕雲雀」 ◇「雲雀籠」 ◇「叫天子」(きょうてんし)
ヒバリ科の小鳥。春の野に最も親しまれている鳥。雀よりやや大きく、背面は黄褐色の地に黒褐色の斑がある。腹部は白い。日本各地の畑地・草原などに巣をつくり、空中高くのぼってさえずる。初雲雀。揚雲雀。落雲雀。夕雲雀。雲雀野。

例句 作者

揚雲雀妹背山相凭りて 永方裕子
円墳の天より落つる雲雀かな 岩田一止
山かげの夜明けをのぼる雲雀かな 几菫
くもることわすれし空のひばりかな 久保田万太郎
雲雀野に古墳乳房のごと並ぶ 宗像夕野火
真上なるもの昼月と鳴く雲雀 加藤燕雨
雲雀野やこゝに広がる多摩河原 高浜虚子
巻向の野にゐて雨の揚雲雀 藤田あけ烏
雲雀落ち天に金粉残りけり 平井照敏
空すでに明日の雲溜め夕雲雀 田中太朗