ドンと女性の裸体を描いた絵は、かなり古い作品と思われる。
この絵もヌードがかなりデフォルメされているが、
現在はもっと形が単純化されて、わたしは“人型”と言っています。
女性の髪は渦を巻き、カールが跳ね上がっている。
武内の描く女性像は、すべてこの髪型をしています。
絵をじっと見つめていると、油絵などで、ソファに寝そべる女性の裸体を描いた構図と似ているなぁ、
と思ったりして、古い日本の洋画の面影を感じたりした。
ただ、決定的に違うのは、頭の中で生まれた人工的な絵だという事。
武内は「私の絵は、観念だから。」とよく言います。
この絵は、その部類に入ると思います。
背景に唐突に描かれた縞模様が、エキゾチックな雰囲気を出しているのが不思議に思う。
よく見ると、☆×◎が羅列してあって、それだけで雰囲気を作っています。
うまくするものだなぁと思いました。
図書館で返却されてすぐの棚を見て、何気に手に取った本がありました。
「ゴシック小説を読む」小池 滋著というもの。
パラパラとめくると、「ウィリアム・ベックフォードの『ヴァテック』という作品から話を始めることにします。」という箇所を見つけてしまい興味を持った。
この『ヴァテック』というタイトルの小説には思い入れがあって、
搭とか、その搭に女性が幽閉される。嵐が起こる。おとぎ話のような中世のロマンイメージを抱いていましたが、この本を読むと、
「欲望に飽きた男が、今度は悪の欲望を完全に満たそうとして、最後には地獄に落ちていくという恐ろしいテーマが中心にきている物語」となっていて、
まるでそのストーリーを覚えていないという・・・、わたし。
わたしにとっては、イメージだけが強烈に残こった小説だと分りました。
時々、バロックとゴシックが頭の中でごちゃごちゃと入り混じり、どう違うのだったけ?となる時もあり、
この本は、頭の中を整理するのにも役立った。
バロック小説の始まりは、1960年誕生 クロード・ロランというフランス生まれのイタリアで活躍した画家の絵から。
どういう絵かと言うと、↓
『海港』油彩
イギリスの画家、ターナーの絵を思わせる絵だと思いながら見ました。
これは、理想郷を描いたものらしい。
『イタリアの海岸風景』油彩
↑もう一枚紹介します。
こういう絵なのですが、この絵も風景の写実ではなく、空想の風景画ということ。
朽ちた中世を思わせる建造物に人と天使がいます。
こういうクロードロランの絵をイギリス人はたいそう好んだらしく、
イギリスにはかなりの数の絵があるそうです。
イギリスのお金持ちは、この絵に登場しそうな奇妙な中世ふうの建物を競って建てたとか。
イギリスのお金持ちの中でも、金持ちの息子で語学、学問、教養の天才教育を受け、
お金のために働くこともない人物が、遊びとして小説を書いた。
ロランの絵と同じく、想像だけで世界を作り人工的な小説が登場した。
それが、ゴシック小説の元祖となっていると、著者が流れを丁寧に分りやすく教えてくれます。
その元祖が、ホレス・ウォポールの「オトラント城」であり、
ウィリアム・ベックフォードの「ヴァテック」だった。
「ヴァテック」は、ヒロク二さんに勧められて読んだ本でしたが、深い印象を残した書物です。
これらの本は当時、意外な人気を呼び、時間の流れで発展していくことになります。
特徴は、“恐怖”で読者の心をとらえ、心理的にハラハラさせること。
それまでの小説は、教訓的なものや道徳的なことを目的とした小説が大半だったせいもあり、
ドキドキ、ハラハラで、現実からちょっと離れることが好まれたということです。
後に、推理小説に発展していく流れも、解説されていて、なるほどと思うのでした。
頭の中で世界を作り上げる人工的な小説は、
女性の小説家が出てきたりするきっかけにもなったようで、
普通の主婦が、恐怖小説を書いていたり、残虐な物語を書くということもあり、
それを想像するといい時代で、何か楽しそう。
「フランケンシュタイン」は、メアリー・シェリーという女性が書いたもの。
これは、意外だった。
男性が書いたと思い込んでいたから。
(付け足すと、「フランケンシュタイン」というのは、スイスの科学者の名前で“怪物”という意味ではないらしい)
この小説は、SF小説の走りということです。人造人間という発想が凄い。
この小説も、たいくつでしょうがないから物語を作る競い合いをしましょう!という遊びから生まれたそうです。
新しい分野の幕開けです。
また、推理小説を完璧に作ったのは、エドガー・アラン・ポーというのを知る。
奇抜な摩訶不思議なことが起るのではなく、起りうることが可能なことでまとめ上げた。
そして、恐怖。推理小説の1つの手本を作った。
やっぱり、内容や、描写を芸術的ともいえる高尚さに持っていく力は、男性の方が凄い。
そんなことをヒロク二さんに話していたら、
さっそくゴシックロマンと書かれた段ボール箱を台所に持って来た。
「いやあ、君がゴシックロマンについて語るなんて、いいね。」
「もっと、話をして!」と。
そして、続けていうには、
「アッシャー家の崩壊の始まりのシーンで妹の亡霊が現れるシーンがあるだろ、
やっぱり現れる時は、足を踏み外してドコドコドッカンってなったらいかんよねぇ~。
そう思わない?」
困惑顔のわたし。
わたしはふり向き、「ねえ、元々そんなふうに無邪気におかしなことを思いつく人だったの?
それとも、性格変わったの?教えて。」と言った。
自分の言ったことに受けていて、返事が返ってこなかったのでした。
ゴシック小説が流行りだしたのは、18世紀から。
イギリスって国も面白い。
本気で遊ぶ精神を感じます。
今日は、創造を頭の中だけで作りあげたヌードと、
観念小説であり人工的な世界のゴシックについて書きました。
本の内容をかいつまんで抜粋していますが、
乱暴な紹介の仕方なので、意味が通じている不安だ。
最後に、代表的なゴシック小説を紹介します。
ああ、こういうのがゴシックか!と思うと思います。
◆吸血鬼ドラキュラ ブラム・ストーカー著
◆フランケンシュタイン 上記にあり メアリー・シェリー著
◆嵐が丘 エミリー・ブロンテ著
◆アッシャー家の崩壊 上記にあり エドガー・アラン・ポー著
◆オペラ座の怪人 ガストン・ルルー著
◆領主館の花嫁たち クリスチアナ・ブランド著
嵐が丘が、ゴシック小説と思って読んでいなかったので、意外でした。
吹き付ける風が、ヒースの暮らす家に・・・。
そして、風が死んだキャサリンの声をのせて「ヒース!」って叫ぶのです。
このシーンが印象に残っています。
こんなことが現実に起ったら、怖い・・・と思いませんか?
今日の庭。夕日を浴びているジニア。
↑白い花とオレンジ系の花でまとめているせいか、夕日によく映えます。
↑ゴシック小説にちなんで、荒れた庭ふうに撮ってみました。
手前にネギが見えていて、これが台無しにしている。
今、ネギは重宝しているのですが、こういう食べる植物はロマンがない。
荒れた庭に咲き誇るバラとか、退廃の美がゴシック小説には似合いそう。
今日は、2人で盛り上がってしまったゴシック小説について書きました。
イギリス人の絵画嗜好、また趣味から生まれた文化と思うと面白い。
この時代、イギリスは戦争もなく平和が続いた時だそうで、国民も豊かになり
多くの人、特に女性が字を読めるようになったこともあって、
こういう小説が流行る素地が出来ていたそうです。
武内の絵にも通じるものがあると思いました。
偏狭な内容ですが、最後まで読まれた方、ありがとうございます。