遺す言葉

つぶやき日記

遺す言葉 180 希望 東日本大震災に寄せて

2018-03-11 11:28:06 | 日記

          希望(2011.4.30日作)

            東日本大震災に寄せて

 

  「何も無くなってしまった」

   静かな微笑みで言う人の佇む大地

   そこには 未曾有の大地震 津波がもたらした

   瓦礫の山 見渡す限り 視界を遮るものは 

   何もない 嘗てそこに

   一つの 一つの村 一つの町を形作っていたはずの

   家々は 散乱する残骸を残すのみで 

   跡形もなく 僅かに面影を留める

   巨大な建造物は 折れた鉄骨

   崩れたコンクリートの壁だけの

   悲惨な姿を晒している

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   平成二十三年 2011年 三月十一日 午後二時四十六分発生

   東日本大震災 地震 津波による甚大な被害

   テレビの画面には 息を呑むばかりの爪痕 惨状が

   映し出される

   嘗て経験した事のない 大地の揺れ

   何百年に一度とも言われる 巨大な津波

   人々に避難の時を与える間もなく

   その日一日 二十四時間の中の何十分の一かの

   時の経過の中で地震 津波は

   幾つものを呑み込み 村を呑み込み 町を呑み込み

   膨大な数の人の命を呑み込んで 地上の景色を一変させた

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   瞬時に変わる現実 僅か数分前まで

   眼の前にあった景色 手を触れ合っていた人の命

   それが今 この時すでに この地上に存在しない

   何処にもない この

   空虚な感覚

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  「何も無くなってしまった」

   残った人 残された人

   過去を失い 未来を失い 夢を奪われ

   廃墟の中に佇みながら

  「何も無くなってしまった」

   と 静かな微笑で言う人の視線の先には

   もはや 沈んでゆく場所さえない現実

   荒野が広がっている

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  「何も無くなってしまった」

   決して喚かず

   決して嘆かず

   決して取り乱す事なく

   静かな微笑で言う人々 

   荒野の現実 虚無の今を見つめながら それでも

   その人達の視線は その彼方

   荒野の向こうを見つめている事が

   静かな微笑み 静かな口調の中に

   強い意志 その心となって現れ

   透けて見えて来る

   希望 その姿が見えて来る

   

   

   

   

   



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