希望(2011.4.30日作)
東日本大震災に寄せて
「何も無くなってしまった」
静かな微笑みで言う人の佇む大地
そこには 未曾有の大地震 津波がもたらした
瓦礫の山 見渡す限り 視界を遮るものは
何もない 嘗てそこに
一つの 一つの村 一つの町を形作っていたはずの
家々は 散乱する残骸を残すのみで
跡形もなく 僅かに面影を留める
巨大な建造物は 折れた鉄骨
崩れたコンクリートの壁だけの
悲惨な姿を晒している
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平成二十三年 2011年 三月十一日 午後二時四十六分発生
東日本大震災 地震 津波による甚大な被害
テレビの画面には 息を呑むばかりの爪痕 惨状が
映し出される
嘗て経験した事のない 大地の揺れ
何百年に一度とも言われる 巨大な津波
人々に避難の時を与える間もなく
その日一日 二十四時間の中の何十分の一かの
時の経過の中で地震 津波は
幾つものを呑み込み 村を呑み込み 町を呑み込み
膨大な数の人の命を呑み込んで 地上の景色を一変させた
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瞬時に変わる現実 僅か数分前まで
眼の前にあった景色 手を触れ合っていた人の命
それが今 この時すでに この地上に存在しない
何処にもない この
空虚な感覚
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「何も無くなってしまった」
残った人 残された人
過去を失い 未来を失い 夢を奪われ
廃墟の中に佇みながら
「何も無くなってしまった」
と 静かな微笑で言う人の視線の先には
もはや 沈んでゆく場所さえない現実
荒野が広がっている
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「何も無くなってしまった」
決して喚かず
決して嘆かず
決して取り乱す事なく
静かな微笑で言う人々
荒野の現実 虚無の今を見つめながら それでも
その人達の視線は その彼方
荒野の向こうを見つめている事が
静かな微笑み 静かな口調の中に
強い意志 その心となって現れ
透けて見えて来る
希望 その姿が見えて来る
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