遺す言葉

つぶやき日記

遺す言葉(515) 小説 <青い館>の女(4) 他 雑感四題

2024-09-15 12:20:33 | 小説
              雑感四題(2020~2024年)



 
 1   無意識の世界は
   知識から得られるものではない
   体験から得た事実感覚が基になり
   自ずとその物事に対しての行動を促す
   知識 理論だけでは及ばぬ世界
 
 2     禅の世界は日常 常套を 超え その
   向こう側に有る 
   物事の本質に迫る世界
   理論 理屈 知識では
   到達し得ない

 3      人生は
   未知から未知への旅
   今日という日の運命も
   今という時の一寸先も
   見えないーー偶然は何時でも起こり得る 
   明日という日はなおの事
   総ては未知の世界を歩んで行く旅
   旅が人生 人は時を旅する旅人

 4  古時計 壊れたままに 年老いて
   
   行く時の ツバメの如し 五月雨
   
   思い出の 年毎増えて 今一人
   
   父が居て 母が居て 夢一夜 




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              <青い館>の女(4)



 

 男が消えるとわたしはまたしても落ち着かない気分に捉われた。
 料亭やそれなりに高級なクラブには馴れていても、この店の如何わしさには怖れがあった。
 落ち着かない気持ちのままに煙草が欲しいと思ったが、既に何年も前に止めていた。
 無論、心臓発作への恐怖からだった。
 そうするうちに女性が来た。
 カーテンの入口を塞ぐ様にして立った女性は、薄いピンクの短いネグリジェにも似た透き通る衣装を着けていて下着が透けて見えていた。
 一目で幼さが見て取れた。
「いらっしゃいませぇ」
 小さな化粧バッグを手にした女性は丁寧にお辞儀をして言った。  
「今晩わ」
 わたしは座席から見上げて言ったが、その若さの前ではやはり居心地の悪さを覚えずにはいられなかった。 
 いい歳をした助平親父が・・・・そう思われるに違いない。
 自分が好色で品性の無い人間と思われる事に屈辱感にも似た感情を覚えて居た堪れない気持ちになった。
 少なくともこのいかがわしい店には、一流クラブや高級料亭の様にわたしの自尊心を満たしてくれるものは何も無い。
 惨めさと屈辱的な思いだけが増した。
「お邪魔しますぅ」
 若い女性はだが、屈託がなかった。
 如何にも馴れた口調の商売用といった上品さを気取って明るい声で言うと、そのまますぐにわたしに身体を押し付ける様にして座席に坐った。
 若い女性の柔らかな肉体の感触が直(じか)にわたしの肉体に伝わった。
 瞬時に甦る幾重にも重なり、混じり合った過去に得た感触だった。
 目まぐるしく、走馬灯の様に交錯する様々な感触、体験、若かりし頃の豊かな色彩に彩られた記憶がわたしを過去へと引き戻す。
 だが、そんな過去も今のわたしには枯れ葉の世界に埋もれた遠い日々の記憶でしか無かった。
 あの日々の再び戻る事は無い。
 わたしの心は萎えていた。
 この店のいかがわしさにも係わらずわたしは、女が静かにして居てくれる事を願わずには居られなかった。
「このお店へは初めていらっしゃったんですかぁ」
 女はなお、屈託のない声でわたしを見詰めて言った。
 歳は幾つぐらいになるんだろう ?
 二十歳  ? あるいは、二十一歳か二歳にはなるのだろうか ?
「そう、初めてなんだ。霧に包まれた夜の街があんまり綺麗だったもので、歩いて来たら呼び止められた」
 若い女の屈託の無さに誘われて自ずと柔らかい口調になっていた。
「旅行でいらっしゃったんですかぁ ?」
「そう」 
 わたしは無意識の裡に取り繕っていた。
 こんな所でわたしが誰かを知られては拙い。
<スーパー・マキモト>の存在が頭の中にはあった。
 この事が直接、営業に影響を及ぼす事は無いかも知れないが、もし、噂が広がれば店員達の間でわたしの権威は忽ち失墜してしまうだろう。
 北の小さな漁港街のピンクサロンで遊んでいた会長。
 社員や店員達は蔑みの眼でわたしを見るだろう。
「でも、こんな辺鄙な漁港街へ旅行で来るなんて珍しいですよぉ」
 女は言ったがわたしの言葉を疑う様子は無かった。
「観光客が来る事はないの ?」
 言い訳でもする様にわたしは聞いた。
「仕事なんかで来る人は時々いますけどぉ、観光なんかで来る人はあんまりいないですよぉ。ロシア人達はよく来ますけどぉ」
「ロシア人 ?」 
 わたしは意外な思いで聞いた。
「そうなんですよぉ。漁船に乗ったロシア人達が蟹やお魚を持ってこの港に来るんですよぉ。それでぇ、隣り町まで行ってぇ、日本製の電気製品なんかを買って行ったりするんですよぉ」
 女はそれが当たり前の事の様に言った。
「ああ、そうか」
 わたしは納得する思いだった。
 と同時に早くもわたしは長年の習慣から身に付いた、経営者としての立場からこの事を考えていた。
 息子や店長はこの事を知っているのだろうか ?
 当然、知っているだろう、と思った。
 市場調査の為に息子は何度もこの街に来ているのだ。
 店長はどうだろう ?
 いずれにしても、この街ではロシア人相手の商売が成り立つかも知れない。
 女の言葉はわたしには予期せぬものだったが、それとは別に改めてそんな情報の何一つわたしの耳に入っていなかった事にわたしは、小さな驚きと共に些かの寂しさをも感じ取っていた。
 これが、息子が完全に独り立ちをしたという事なのだろうか ?
 殊更、わたしに反抗的な息子では無かったが、それでもわたしは、北の街での細かな情報の何一つ、わたしの耳に入れる事無く仕事を進める息子に次第に遠くなって行く姿を見る思いがして、一抹の寂しさを覚えずにはいられなかった。
 その後ろにはやはり妻の影がある。
 𠮟咤激励する妻。
「あなたのお祖父さんなら」「あなたのお祖父さんは」
 幼い頃から母親に飼い馴らされて来た一人息子は、漸く母親離れをしたとはいえ、未だにその影響の皆無だとは言い切れないものがあった。
 事に当たっての決断にはわたしより先に母親の意見を求める。
 すると母親は息子の父親であるわたしの意見を聞く事も無く「失敗を恐れるな。兎に角、遣ってみろ。決断は迷わず、損切は早くしろ。迷ったら負けだと思え、それがあなたのお祖父さんの口癖だったのよ」と言う。
 息子はそれで漸く、公園で遊ぶ許可を貰った子供が表へ飛び出して行く様に心を決めて、危ない橋も渡って行く。彼の祖父を思わせる強引さで。
 幸い、今日まで大きな怪我の無かった事が何よりだ。
 だが、彼等、息子も妻も、息子の祖父も、わたしが何時も彼等の歩いた跡を懸命に均して歩いていた、という事実に眼を向ける事は全く無かった。総ての事が当然の事だと思い込んでいる。ーー
 考えて見ればそんな事の総てが、わたしに取っては屈辱以外の何ものでも無かったが、今更、こんな所で悔やんでみても始まらない。今は今という時間の中に自分を埋め尽くして総てを忘れてしまうがいい。
 わたしはそう自分を納得させると初めて、若い女の裸体にも見える衣装を纏った柔らかい肉体に腕を廻わした。
 踏み込んで女の世界に入って行く事は出来ないが、その肉体の甘味な感触だけは楽しむ事が出来る。




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              takeziisan様

       
                彼岸花 もうそんな季節になりましたか  
               それにしてもこの猛暑 彼岸花の実感が湧きません
               田圃などの畦道に一面に咲く彼岸花 あの爽やかな秋の気配が懐かしさの中に
               偲ばれます
                朝五時台の出動 お元気な証拠ですね
               わたくしは五時前後に一度眼を覚まし 六時半の起床に向って
               また一寝入りです   
               幸い 寝付きは良く ぐっすり眠れもします
               お陰様で健康体で老人介護保険料など少しはキックバックしてくれ と
               ボヤキたくもなります
               クスリを呑む事も無く保険料の厄介になるのは    
               毎年の健康診断料のみです
               奥様の薬の分別 母親を思い出しました
                チャップリン 街の灯 良いですね
               ドタバタの中に込められたヒューマニズム
               他の喜劇には無い優れた要素です 天才が偲ばれます
                川柳入選作 それなりに状況を読んでいるとは思いますが
               これは・・・と言った身を乗り出す様な秀作はない気がします            
               鋭い皮肉の利いた作品が欲しいですね
                この暑さ 何時まで続くことやら
               運動 身体を動かす事 歳を重ねれば重ねる程
               必要になって来ると思います どうぞ これからもウォーキング 水泳 続けて下さい
               何か一つの趣味を持つ事も大切ですね
               川柳も頑張って下さい
                有難う御座いました

 
   




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