遺す言葉

つぶやき日記

遺す言葉(375) 小説 岬また不条理(4) 他 運命とは ほか 二題 

2021-12-12 12:16:15 | つぶやき
          運命とは(2021.12.5~7日作)


 運命には 逆らい得ない
 運命とは
 時と場所と存在ーー人によって
 構成される
 人と時と場所 その
 三要素が偶然 絡み合った時
 その場所で その瞬間
 一つの運命が
 生まれ 決定される

          自然の力

 世の中には
 自然の力 という
 眼には見えない力が 常に
 働いている その
 自然の力と
 人間の意志が一つに重なり
 出会った時 人はより
 大きな仕事が出来る
 人に 備わった実力があったにしても
 自然の力の その
 働き掛けのない時には 得てして
 物事の失敗に終わる事が多い いわゆる
 時の 運 不運 がもたらす
 幸 不幸

          意識

 世界は一人の人間の
 意識の中にしか
 存在しない
 意識されないものは
 無



          ---------------



          岬
            または
                不条理(4)



 男はエスカレーターに身を任せたまま、軽く上方を見上げていた。三津田が立っている場所は、男の視線の中には入っていなかった。
 三津田はそんな男の姿を確認すると、急かれる気持ちで東京駅の混雑する人混みの中に紛れ込んだ。
 男は五十歳前後の、額の禿げ上がった、なんとなく重厚さを感じさせる雰囲気を身に付けていた。最初、眼にした時には、そんな雰囲気など微塵も感じなかったのだが、改めて眼にする男の落ち着いた雰囲気を認識すると三津田は、今、自分が直面しているこの事態は単なる、嫌がれせや気紛れ的なものではないのではないか、という深い懸念に捉われた。いったい、男の目的はなんなのか ?
 だが、三津田にはやはり、今朝のこの出会いが単なる偶然なのか、男が三津田の行動の総てを読み取り、綿密に計算した上での行動であったのかは判断出来なかった。ただ、男の姿を身近に見ていたというその事実だけが重く心に圧し掛かって来た。
 三津田は東京駅の構内を抜けて日本橋方面へ向かう改札口を出る時、もう一度振り返って男の姿を確認した。
 男の姿は三津田の視線に入って来る事はなかった。

 その日、三津田は通勤電車の中で眼にした男から、何かの電話が掛かって来るのではないかという思いで、一日中、落ち着かない気分で過ごした。昼食時には何時も外出するのが習慣になっていたが、その日は、売店の菓子パンと缶コーヒーだけで済ましていた。
 帰宅時にもむろん、細心の注意を怠らなかった。
 それでも、その日、三津田の身の上に普段の日々と格別に変わった事は起らなかった。只一つ気になったのが駅からの十七、八分の帰り道の途中、住宅街に入った時、ふと、背後に聞いた微かな人の足音だった。
 静かな住宅街の家々はことごとく鎧戸を降ろしていた。普段、三津田は夜も十時半を過ぎたこんな時刻に帰る時にも、格別、他人の足音を気にする事はなかった。それが、その夜に限って何故か、その足音を聞いた途端に全身に冷や汗の出るような緊張感を覚えていた。そのまま無関心ではいられない気持ちのざわめきを覚えて、心が揺れた。朝、通勤電車の中で眼にした男の姿が影響していたに違いなかった。
 三津田はそれでもその時、暫くは緊張感に耐えたまま、何も変わらぬように足を運んでいた。
 足音はその間も続いていた。そして、それがやはり執拗に自分の後を付けて来るような気がして来て三津田は、ふと、その足音の人物の正体を確かめてみたいという反発心のような、強い思いに捉われた。思わず足を止めると、そこに立ち止まり、そのまま、夜の中に耳を澄ました。
 背後に聞こえる足音はだが、その間も確実に刻まれていて、三津田に近付いて来るのが分かった。
 三津田はそれを意識すると今度は反対に、自分の行動が何か、相手に奇異な感じを与えるのではないかと気になって、慌て上着のポケットのあちこちを探って煙草を探す振りをした。
 煙草はむろん、すぐに分かるポケットに入れてある。それでも、ようやくそれを探り当てたというようにして煙草を取り出すと1本、抜き取り、唇に挟んで今度はライターを探す振りをした。
 その間、背後に響く足音は、確実に三津田に近付いて来た。三津田はそれを確認しながら、相手が近付くのと共に、今度は自分が酔っているかのように装って身体を小さく不安定に揺らしていた。
 近付いて来る存在はしかし、そんな三津田には無関心なようだった。立ち止まって、要らぬ演技をしている三津田などには眼もくれず傍を通り抜けて行った。三津田がちらっと窺った眼の中に入って来たのは、三十代かと思われる年頃の男だった。

 三津田はその日に起った事の一切は、妻の時子には話さなかった。要らぬ心配をかけたくないという思いも多分にあったが、それ程にまでに神経質になっている自分の弱さを知られたくない、という思いもまた、心の何処かにはあった。
 翌日、三津田は通勤の電車に乗る時には、車窓の外から隈なく車内の様子を窺ってから、車輌に足を踏み入れた。男の姿を確かめる為だった。
 その日、男の姿を車内に見る事はなかった。
 翌日もまた、同様だった。
 そのような日々が何日か続くと、またしても三津田は、あれは単なる偶然だったのか、という楽観的な思いにも捉われ始めていた。何時もの事だった。
 三津田の心の中では、楽観的思いと悲観的思いの両方がその日その日の出来事によって、慌しく交錯していた。何が真実なのか、三津田自身にも判断が付きかねた。
 そんな三津田の下へ無言電話が掛かって来たのは、十月二十九日だった。
「はい、総務課の三津田です」
 直接、電話を取った三津田が答えると電話は少しの間を置いてそのまま切れた。
 間違い電話はよくある事だった。三津田は気にしなかった。
 暫くするとまた、掛かって来た。
 三津田が同じように答えると、やはり、先程と同じように切れた。
" いったい、何やってんだよ。バカスケが ! "
 三津田は腹立ち紛れに呟くと再び受話器を置いた。
 その日はそれだけだった。
 三津田は何も疑っていなかった。
 最近、通勤電車の中で例の男に出会う事もなかった。
 三津田は再び三たび訪れた平穏な日々の中で、以前と同じように気持ちの平穏をもまた、取り戻しつつあった。
 そんな三津田が思わぬ事故に巻き込まれそうになったのは、十一月の半ばを過ぎた日だった。その日、三津田が取引先の銀行を出て、流しのタクシーを捕まえ乗ろうとして、歩道からタクシーの止まった場所に近付いた時、突然、一台の車がハンドル操作を誤ったかのように車道に下りた三津田目がけて突っ込んで来た。三津田は危うく跳ねられそうになって慌てて身を交わしたが、そのまま路上に倒れ込んでいた。
 三津田が起き上がる間も置かずに、急ブレーキを掛けて停まった黒塗りの車は走り去っていた。
 車内後部席には、二人の中年と思われる男の姿があったが、男達は三津田の安否を気遣う様子もなく、平然とした様子で後ろを振り返って見る事もしなかった。
 三津田がやっと身体を起こしてタクシーに乗り込むと運転手は、
「なんともありませんでしたか。全く、滅茶苦茶な運転をする人間がいて、困ったもんですねえ」
 と言った。
「なんて奴なんだろうね、ほとに。大丈夫ですかの一言ぐらいは、言ってもいいだろうが」
 三津田も腹立ち紛れに言ったが、車が走り出して幾分、気分が落ち着いて来ると、ふと、小さな疑念と不安に、またしても苛まれていた。
 もしかして・・・?
 何時だったかの無言電話と今の出来事が訳もなく、三津田の胸の中で結び付いていた。そして三津田はこの時始めて、警察に相談してみようか、と考えていた。





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           KYUKOTOKKYU様

           有難う御座います
           拙文にお眼をお通し戴き 御礼申し上げます
            何時もこのブログに来る度 ディスクジョッキー
           拝見しています 滅茶苦茶感 なんだかよく
           分かりませんが そのテンポの良さと滅茶苦茶感に
           吹き出します 何処から このような発想が   
           生まれて来るのか 軽快 言葉のリズム感 
           面白く拝見させて戴いております
            このディスクジョッキー これからも
           長く続きますように
            有難う御座いました



           takeziisan様

           有難う御座います
           何時の事ながら 美しい写真の数々
           堪能しました 夕焼け 見事ですね 美しい
           カシワバアジサイ 始めて知りました
            それにしても感性 お若いです
           わたくしはビートルズにはあまり馴染めません
           以前にも書きましたが プレスリーまでです
            トキ色シャコバ 以前 持っていましたが
           今はありません
            川柳 メモ無し買い物無理 御同感
           相変わらず 楽しく拝見させて戴きました
            二度寝 気持ち分かります
           若い頃の瞬発力がなくなり 飛び起きる
           この行為が無理になりました 
           ぐずぐずもたもた
            トレンブラン 前回 日本の方が
           と書きましたが 改めて見詰めると やはり
           美しいですね 秋の紅葉の美しさ 一つの
           楽しみですが 後に控える冬を思うと・・・
            クリスマス イブ 雰囲気がよく出ています
            いいですね
             何時も いろいろ 有難う御座います
           
           
           
            桂蓮様

           有難う御座います
           御当地はもう 氷の季節との事 寒さが
           厳しいのですね こちらも十二月 さすがに
           寒くなって来ましたが まだ氷が張るほどでは
           ありません それにしても 温暖化 確かに
           表れているようです 水道管の凍る事も
           なくなりました 
            腰を痛めたとの事 どうぞ お大事に
           桂蓮様のさまざまな御文章を拝見していますと
           何か 一途といいますか 懸命にそれに向かって
           努力する人のイメージ浮かんで来ます 生真面目な  
           お方のようです でも 何事も 過ぎたるは及ばず     
           の言葉通り 無理をなさらずに楽しんで下さい
            修行と稽古 再読させて戴きました
           冒頭の写真の通り 一歩一歩 階段を上ってゆく
           修行も稽古も一緒ですね 何事も一気に跳ぶ事は
           出来ないものです 1パーセントでも可能性があれば
           努力する 良い言葉です 何も無いのに願うのは
           夢想にしか過ぎませんものね
            歌謡詞 歌謡のための詞は曲を付ける
           その事を前提にするため 一節二節三節 総ての
           節の行の言葉数が揃っていなければなりません
           その為 リズム感がよくお思いになられるのではと
           思います
            今朝のニュースで(12月12日)アメリカを襲った
           竜巻の模様を放送していました 大変大きな
           竜巻だったそうですが お住まいの地方には
           関係のない事だったのでしょうか なにしろ 
           アメリカは広い国ですので
            何時も有難う御座います
            くれぐれも 御無理をなさならぬ様に
            人生 気楽に しかし 気を緩めずに
           ゆきましょう 有難う御座いました            
        
            






 
 
 
 
 

 

 
 
 
 

 
 
 


1 コメント

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Unknown (桂蓮アップルバウム)
2021-12-15 17:16:26
腰は生体医院何回か通ってポギポギやってもらいました。
痛くてもレッスン受けてたら
気がつかないうちに激痛は消えて
痛みが減りましたね。

来週もまた予約しておきましたよ。
首とかもポギポギやって
大分つまり感が取れました。

土曜は3回目のワクチン打ってもらったので、調子狂って休んでました。
腕に力が入らないほど痛くて
でももう良くなりました。

土曜に通っているバレエスクールの発表会があって
夫と一緒に行きました。
ワクチン打って、その足で直行して、
発表会は近所の教会のホールを借りて
親たちと関係者若干だけ集めた親子会みたいでしたが、
生徒の中で呼ばれたのは私と夫だけでした。
他のクラスメートは呼ばれていなくて、
なんでかなーと思ったら
見て分かりましたね。

とにかく、パンデミックの中で
バレエをやめずにやっている子供達は
健気な感じでしたね。

みんなマスクだから、実際どんな顔なんだか分からないのですが、
緊張していることは感じ取れましたね。


一途
本当に嬉しいことばを頂きありがとうございます。
気に入りのことばです。
一途な人と結構言われました。
真面目だと嫌ほど言われたので、
うんざりしてましたが、
たまささまから言われると
嬉しいですねー

自分では努力するつもりはないのですが、
みんな私が努力家だと、そう言ってますね。
それも言われたくないのですが、
たまささまからは嫌味が感じられないから不思議かなー


ところで、本題のストリー、話が変わっていく気配がしますね。
ストッカーに人が心理的に破壊されていくのですかね。
とにかく、次回が楽しみです。

竜巻とは遠いところでしたが、
この前の竜巻で庭の木の枝がぽっかり切れて
処理するのに苦労しましたよ。
雪も降って、溶けました。

寒くなっていきますね。
体調など気をつけて風邪など引かないようになさってください。
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