ハリウッド映画にはない“避暑地物”
世界的な音楽家フレッド・バリンジャー(マイケル・ケイン)。80歳を越えた今は引退し、ハリウッドスターや、(マラドーナのような)元サッカー選手ら、セレブが宿泊するアルプスの高級ホテルで優雅なバカンスを楽しんでいる。
親友の映画監督ミック(ハーベー・カイテル)も一緒だが、現役にこだわるミックは若いスタッフと共に新作の構想に没頭している。そんな中、フレッドに英国女王からの演奏会出演依頼が舞い込むが…。
イタリア人監督パオロ・ソレンティーノ作品。ハリウッド映画にはない“避暑地物”の一種で、シニカルでシュールな群像劇だ。片や無感動、片や情熱的という、コインの裏表のようなフレッドとミック。ケインとカイテルが、年輪を感じさせる見事な演技を見せ、老いについて考えさせる。
ニックの過去の作品に出演した女優たちが次々と現れる幻想的なシーンなど、フェリーニを思わせるようなところもある。ジェーン・フォンダがセルフパロディ的な女優役で登場するのもご愛嬌。万人向きの映画ではないが、こういうタイプの映画が好きな人もいるわけで…。