田中雄二の「映画の王様」

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『フェノミナン』

2016-04-20 09:22:20 | All About おすすめ映画

『フェノミナン』(97)

少しだけ世界を変えた男の話



 “現象”を表すタイトルのちょっと不思議な味わいを持った映画。アメリカの片田舎で平凡な暮らしを営むジョージ(ジョン・トラボルタ)は、37歳の誕生日の夜に、謎の閃光を目撃したことで不思議な力と天才的な頭脳を得ます。

 ジョージはこの奇跡を人々のために生かそうと考え、実行します。ところが、初めはジョージが起こす数々の奇跡に拍手を送っていた隣人たちが、彼の行動に疑問や恐怖を抱くようになり、彼を疎外し始めるのです。

 そして、四面楚歌の中でとうとうジョージは引きこもり状態に…。そんなジョージのもとを、恋人のレイス(カイラ・セジウィック)が訪れます。

 その時、ジョージの顔をおおった無精ひげをレイスがきれいにそってあげるシーンは、この映画のテーマである“再生”を的確に表現し、忘れ難いものになっています。やがてジョージの身に起きた奇跡は病のためだと分かり、レイスとの別れが訪れます。

 そしてラストシーン、エリック・クラプトンが歌う「チェンジ・ザ・ワールド」をバックに、“主人公のいない誕生パーティ”を見せながら、ジョージがまいたさまざまな種が結実した様子を見せて映画は終わります。

 そうですジョージは少しだけ世界を良い方向に変えたのです。このように、実際にはあり得ない話を、見ている間はそう感じさずに見せ切るのがアメリカ映画伝統の力技です。

 監督は『クール・ランニング』(93)『あなたが寝てる間に…』(95)を撮ったジョン・タートルトーブ。この映画も、心温まる反面、人生の厳しさや皮肉も感じさせ、本当に幸福な人生とは何なのかを問い掛けてきます。

 トラボルタとセジウィックに加えて、ジョージの親友役のフォレスト・ウィテカー、後見人的な町医者役のロバート・デュバルも実にいい味を出しています。

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