田中雄二の「映画の王様」

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『三人のあらくれ者』

2016-04-28 08:00:12 | 映画いろいろ

三人のあらくれ者による三すくみの葛藤劇



 40数年ぶりに再見。従って細部は見事に忘れていたのだが、妙な西部劇だなと思った当時の記憶がよみがえってきた。

 原題は「Three Violent People」という。その三人とは、南北戦争帰りで激情型の牧場主コルト(チャールトン・ヘストン)、酒場女の素性を隠して彼の妻となったローナ(アン・バクスター)、幼い頃に事故で片腕を失い兄のコルトに反発するシンチ(トム・トライオン)のこと。

 この映画は、牧場の権利やそれぞれの過去をめぐって、三人による三すくみの葛藤を中心に描いている。昔の自分は、多分そのあたりに西部劇としては“妙なもの”という印象を抱いたのだろう。

 監督はポーランド出身でヨーロッパで撮影監督として名を成し、後にハリウッドで監督に転じたルドルフ・マテ。画面構成は美しいが、西部劇の監督としてはいかがなものかという印象を持った。



 ヒロイン役のバクスターはきつい感じが逆にセクシーな印象を与える女優で、結構好みのタイプだ。有名な建築家フランク・ロイド・ライトの孫にあたる。

 『彼女は二挺拳銃』(50)のような明るい役も演じたが、『イヴの総て』(50)で、ベティ・デイビス演じる大女優をだましてのし上がっていく新進女優を演じて強烈な印象を残し、以後は天使と悪魔のどちらにもなれる小悪魔的な役柄を得意とした。そういえば『十戒』(56)でも、モーゼ役のヘストンを惑わす悪女を演じていたなあ。

 この映画では、バクスターに色違いのドレスを何着も着せて、カラー映像の中で目立つように撮っており、そこが一つの見どころになっている。

 とは言え、この映画の一番の儲け役はメキシコ人の牧童頭を演じたギルバート・ローランド。その息子役で、後に個性派俳優として活躍しながら、妻殺しの疑いで逮捕されたロバート・ブレイクの姿も見える。

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