田中雄二の「映画の王様」

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『デーヴ』

2016-04-05 08:29:58 | All About おすすめ映画

『デーヴ』(93

現代によみがえった政治コメディ



 この映画の主人公は、小さな職業斡旋所を営む好人物のデーヴ(ケビン・クライン)。米大統領とそっくりな彼が“パートタイム”で大統領の“影武者”に雇われます。そんな折、大統領が愛人との秘密の情事の最中に意識不明の重体に。側近たちは急場をしのぐためにデーヴに“常勤”を申し出ます。

 ところが、一般市民のデーヴの目から見ると政治の世界はおかしなことばかり。彼は普通の考え方で政策を見直していきます。やがて周囲の人々や大統領夫人(シガーニー・ウィーバー)もデーヴの不思議な魅力に引かれていき…。

 クラインが、お人好しのデーヴと憎々しい大統領の二役を見事に演じています。また、珍しくチャーミングなウィーバーのほか、ベン・キングスレー(副大統領)、フランク・ランジェラ(大統領補佐官)、ヴィング・レイムス(護衛官)、ケヴィン・ダン(報道官)、チャールズ・グローディン(会計士) ら、デーヴを取り巻く脇役たちの活躍も見逃せません。

 この映画には、政治とはかくあるべき、政治家にはこうあってほしいという願望が込められています。それはアメリカの理想主義を描いたフランク・キャプラ監督の名作『スミス都へ行く』(39)『群衆』(41)にも通じるテーマです。アイバン・ライトマン監督はそうした精神を、政治コメディとして現代によみがえらせたのです。

 

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